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テープサウンドについて、今一度学んでみよう。MPX White Paper

テープサウンドについて、今一度学んでみよう。MPX White Paper

じっくり読んで楽しい読み物を1つ。テープ・レコーディングの「音楽的な副作用」についてお届けします。

2020.01.01

楽器でも機材でもなんでもそうだと思いますが、深く知ることはうまく使いこなすことにつながります。「適当にいじってたらイイ音が作れた」もアリだと思いますが、「ここでアレを使ったらこうなるんじゃないかな?」と頭の中でイメージできれば、より自分らしいサウンドを生み出せるようになるのではないでしょうか(ある方はこれを「頭の中でパッチングする」と仰っていました)。素晴らしい曲、サウンドを創りだす方をたくさん見てきましたが、そういった方々はたいていご自身の物を深く追求されている方々ばかりでした。

というわけで本日は「テープサウンド」について。Wavesは先日、伝説に残るエンジニア、エディ・クレイマー氏が所有するAmpexの真空管テープレコーダーをモデリングした『Kramer Master Tape(Kramer MPX)』。この奇跡的なレコーダーをモデリングするにあたり、実機がもつ特性をどのように再現したのかという文章がありましたので、翻訳記事をお届けいたします。

基本的にはWAVES Kramer Master Tape(MPX)に即したものですが、お持ちでない方にもきっと興味深く読んでいただけると思います。機材の歴史について興味のある方、お時間のあるときにどうぞ。

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テープ系のプラグインにあるパラメータ(”15ips”だの”7.5ips”だの、”バイアス”だの)はそもそもどういう状態をいうのか。この数値が変われば、サウンドにどんな変化が起こるのか。いくらテープ系のプラグインと言っても、むやみに過大入力を起こしたサウンドが果たしてイイ効果ばかりを産むのか。

Wavesがエディ・クレイマーとともにハードウェア・モデリングのプロジェクトをスタートさせたとき、そこには大きな目標がありました。エディ・クレイマーがレッド・ツェッペリン、 ローリング・ストーンズ、ジミ・ヘンドリックスなどの偉大なアーティスト達のアルバムのレコーディングを行った、ロンドンのオリンピック・スタジオ、そのスタジオで実際に使用されたオリジナルの”レコーディング・チェイン”を再現することです。
(編注:後述のエディ・クレイマー所有ビンテージコンプ”Pye”をモデリングしたKramer PIE Compressorと、チャンネルストリップである”HLS”をモデリングしたKramer HLS Channelを含む3種)

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Heliosミキシングコンソールをモデリングするのは困難でしたが、結果的にWaves Kramer HLS Channelとして製品化され、有名なPyeビンテージコンプレッサーもWaves Kramer PIE Compressorとしてリリースすることができました。

しかしながら、先の”レコーディング・チェイン”の要ともいえる、Ampexという真空管テープレコーダー無くして、伝説のスタジオを再現したと言えないことは、火を見るより明らかでした。
市場にある多くの類似製品を見ても、モデリングは困難な道のりになることはわかっていました。Wavesは最も正しいと信じる機材を入手し、そこからモデリング開発を開始しました。
しかし実際にプロジェクトをスタートさせると、モデリングする為の課題は開発者達をひるませ、その試みは無残にも初期プラグインテストの段階で失敗に終わりました。”レコーデイング・チェイン”の3番目に位置するAmpexのモデリングは以前の2つのプラグインに比べ、最も困難になることがはっきりしたわけです。

さらに、Wavesの開発チームは、モデリングに必要な様々な事柄を見落としており、しかもそれら1つ1つが本当に複雑だったのです。全ての課題・問題を考慮すると、プロジェクトが果てしないチャレンジの連続になることは目に見えていました。
先が見えないと思われたプロジェクトでしたが、共同開発者であるBob OlhssonやJohn Haenyのおかげで、プロジェクトの先行きは本当に明るくなりました。フロリダ在住のEric Shilling氏がモデリング対象となるAmpexの実機を所有していることをBobが突き止め、しかも彼はそのユニットを快く初期テスト用として貸しだしてくれることを了承してくれたのです。

そしてBobとJohnは最初の試みで見逃していた(そして再現出来なかった)実機の音を確かめることができました。

 

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ところで、Ampex 350/351テープレコーダーがアメリカ製という事に関して1つの矛盾点をはっきりとさせておきましょう。

エディ・クレイマーがロンドンのオリンピック・スタジオで働いていたとき、スタジオとそのクライアントはAmpexをマスターレコーダーとして使用していました。

Ampexは当時の音楽業界において大黒柱的な存在で(特にアメリカ内において)20年以上もの間、1000枚以上のヒットアルバム、シングルの収録に活躍していました。
例えば1954年。当時無名のトラック運転手だったエルビス・プレスリーの歴史的なファースト・シングル、”ザッツ・オール・ライト”がレコーディングされました。これはメンフィスのサン・スタジオで初期のAmpexを用いて録音されたものです。

Ampexは初期のマルチトラックレコーダーとしても重要な側面をもっていました。1957年、世界初のAmpex8トラックレコーダーは当時10,000ドルでかのレス・ポール氏が購入しました。これは彼の為に特別にカスタムされたもので、彼のホーム・スタジオに設置されたそうです。このAmpexは通称「オクトパス」(8トラックから来てるのでしょう)として知られるところとなりました。
1958年初期、3番目に製作されたAmpex 8トラックレコーダーはトム・ダウドの要望でアトランティック・レコードが購入することになりました。アトランティック・レコードは初めてマルチトラックレコーダーを普段の業務に取り入れたレコード会社です。

少し立ち止まって考えてみると、アトランティック・レコード所有のスタジオで録音されたアルバムは素晴らしいものばかりです。もし、ロックの殿堂に何かテープレコーダーを展示するとしたら、間違いなく真空管のAmpexしかないでしょう。

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話を戻しましょう。

WavesによるAmpexのモデリング・プロジェクトは続行可能な状況に復帰しましたが、録音カーブ、テープスピード、感光の度合い、厚さ、磁束(フラックス)、録音レベル、さらにバイアスの設定までが、結果に大きく影響することも分かってきました。

テープの選択やアライメント調整について、BobとJohnと共に途方も無いディスカッションとテストを重ね、Wavesとしてモデリングの最終的な方針を決定することができました。

膨大な試行錯誤の末に作成された録音サンプルは、プロジェクトの確かな方向性を確立しており、全員が納得するクオリティを備えていました。この録音サンプルはAmpexモデリングの個々の機能が正しく働いているか、詳細を比較していく上でその後も活用されることになります。

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また、Ampex実機を用いた膨大な数のテスト。例えば、15ips/30ips等の主なテープスピード、フラックスとテープバイアスのセッティング、アライメント調整やテープの感光性等。これらはEric Shillingの同意と協力がなければ達成できないものがほとんどでした。

モデリングの試験結果が整った頃、Wavesにはプラグインソフトウェアとして動作するモデルを作成するという、極限まで複雑なタスクが課されました。様々なアナログテープの録音状況を再現するだけでなく、それに伴うバイアスやフラックス(テープ・サチュレーション)、そしてテープスピードのセッティングの変化なども含まれていたのです。

プラグイン開発初期のアルファバージョンでは、Ampexの実機を用いて録音されたオリジナルの音源との比較、開発・技術チームによるフィードバックを参考に念入りな主観的分析を求められました。

 

結果、このモデルはだんだんと磨き上げられていったのです。

 

Kramer Master Tapeの開発には1つのプラットフォームに絞って開発していくことがベストだとWavesは考え、開発最終段階にもMacが使用されました。当初、BobはPCを使用していましたが、彼が開発の第一線から退き、替わってJohnがほぼフルタイムで共同開発に携わることになりました。

 

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● Kramer Master Tapeのモデルとは? GUIやその動作にどのような影響をもたらしたか?

Ampexと最高の相性だったのが3M Scotch 207テープです。Wavesはこのテープをモデルとして採用しています。3M Scotch 111テープが初期Ampexで使用されていたことも影響としてありました。
3M Scotchテープでは、初期の201/202/203も有名でしょう。これらはモータウンで主に好んで使われました。しかしながら、必要な数量の確保と耐久性の問題でこのプロジェクトに使用することができませんでした。

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ほかにも、3M Scotch 131というテープあり、数自体は問題なかったのですが、クオリティとKramer Master Tapeのモデリング処理における耐久性の問題で採用されませんでした。

Wavesの開発チームに定評があった、3M Scotch 206(1.5ミリベース)と3M Scotch 207(1ミリベース)ですが、結果的に207が選ばれた背景には若干薄いということ、プリントスルー(スプールに巻き付くテープの磁区が次の層に影響する現象)が大きいということを条件として(プラグインには関係ありませんが)207がより造詣の深いレコーディングをできることや、またプレイバックヘッドの接地の度合い(テープ・ラップ)といった要素が更に高域特性を高めてくれる点を評価して採用しています。

 

運良く、John Haenyが十分な量の3M Scotch 207を所持していたので、これをオーストラリアからフロリダに輸送することができました。

 

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Ampex 350のトランスポートは2種類のテープスピード(15ips/7.5ips)に対応しています。

15ipsは業界のスタンダードでノイズを最低限に抑えつつ、高域特性を保つことができるものでした。15ipsには16kHz付近にロールオフがあります。

7.5ipsはプロフェッショナルな使用を目的として許容できる最低限のスピードであり、家庭用として広く使われています。

 

しかしながら、7.5ipsには致命的な高周波数のロス、8kHz近辺から始まるロールオフが発生します。しかし逆に、低域の特性に関しては15ipsより優れているため、ソリッドなボトムエンドを求められた60~70年代のロックのレコーディングに幅広く使用された経緯があります。

2つのスピードを比較すると、15ipsでは7.5ipsと比べ洗練された高域特性とタイトなボトムエンドを有しています。さらに15ipsではTHD(トータルハーモニックディストーション/高調波歪み)のロスが7.5ipsよりも少なくて済む利点もあります。

 

周波数ノイズも7.5ipsと15ipsの間で1オクターブ程のズレが生まれます。15ipsで発生したノイズは7.5ipsで発生するものより1オクターブ高いものになるわけです。その違いの重要性についてはよく議論が交わされることが多く、好みの問題と言っていいかもしれません。

しかし時代を追って、15ipsで発生していたノイズをさらにオクターブ上にシフトできる30ipsが主流になりました。これらのノイズは音楽自体の基本周波数帯より遥かに上で発生するので、音楽の邪魔をしなくなったわけです。

 

テープスピード、ノイズ、そして周波数特性、これらは実際に検証して、自分にとって最も適切な設定を作り上げてください。

 

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Ampex 351が有名だった時代、世界中で様々なアナログレコーディングの規格が存在していました。
アナログテープによるレコーディングにはそもそも限界があったため、大抵の場合、レコーディングの段階で高域にEQ(プリエンファシス)が施されました。さらに、プレイバック時にも高域の周波数(ポストエンファシス)が補うように掛けられるのです。

 

こうした処理によって、高域特性を維持でき、さらにテープノイズを減退させるという利点もあります。

プリエンファシス手法は後に正式に規格化され、これらのうちCCIRはヨーロッパにおける主要規格でした。アメリカではNAB(ナショナル・アソシエーション・ブロードキャスターズ)規格が使われ、Ampex自体はAME (Ampexマスターイコライゼーション)という、短命ではありましたが独自の規格を使用していました。

 

なかでもNAB規格はAmpexという伝説的機材の音響特性を最も正確に引き出せるため、WavesでもNABをKramer Master Tapeに採用しました。

 

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バイアスは、40kHzから150kHzという高音域の信号で、テープに録音する際、音声信号に沿ってレコードヘッドに掛けられます。バイアス信号によってアナログ・レコーディングの際に生じる致命的な問題が解決されます。

オーディオ信号の振幅がX軸に対してゼロ電圧点を通り過ぎる際、レコードヘッドによって生じる磁界は、テープの磁性粒子に対して極性を与えるまでには至りません。そのため、元々のオーディオ信号の歪みが録音されてしまうのです。

こうした歪みを極力抑えるために、バイアス電流を用いてその抵抗をなくし、分極させることで、オーディオ信号をより正確に、低レベルの歪みによる効果を含まずに録音することがえきます。

 

適用するバイアスの電流量は周波数特性に対してデリケートなもので、それ自体が歪みの特性にもなりうるのです。

Kramer Master Tapeにおいて、Wavesは2つのバイアス設定を搭載しました。

 

”ノミナル・バイアス”(Ampex351のマニュアルにも記載され、Ampexが推奨する設定です。)

”ノミナル・バイアス”は、 歪みを極力抑え、最大限の周波数特性を活かしたレコーディングを行う上で、初期モデルのAmpex生産時に勧められていた設定です。

特にノイズを抑え(ピークの-60dB)、適度な高域歪みと2~3dB程度の高域ロスに収めることができます。

 

60年代、上記のようなテープを何年にもわたって使用してきた多くのエンジニアやテクニシャンが、ほんの少しバイアスを上げることでノイズを抑え、高周波数特性を改善できることを発見しました。

これが”オーバー・バイアス”といわれるもので、テープの種類に応じて、スタジオやエンジニアそれぞれの好む音響特性を、バイアスの設定によって得る試みが行われていたのです。

 

Kramer Master Tapeでは-3dBのオーバー・バイアスをモデリングし、歪みを抑え、最適な高周波数特性を得られるポイントを設定しました。この設定は多くのエンジニアにも支持され、3M Scotch 207に対してもベストのS/N比を維持できるものでした。

じつは、15ipsで-0.7dB@700Hzという”ギリギリ”の設定も候補にあがりましたが、正確性を求めた結果、上記-3dB@15kHz設定に落ち着きました。初めにノミナル・バイアスをピークに合わせ、更にピークを超えた後レベルが落ち始めるところまで、好みの値に調節します。これが、オーバー・バイアスといわれる所以です。

 

7.5ipsのバイアスの調整は、オクターブ下の350Hz/7,500Hz、-20dBが高周波数の過度の飽和を防ぐコツです。

”ノミナル・バイアス”から”オーバー・バイアス”へ調整を試みると、ノイズが減衰して高域の鮮明度が増し、そしてわずかに全体のダイナミックレンジも増加するのが分かるでしょう。(明らかなTHDの減衰による結果だということをここで繰り返し述べておきます)

 

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磁束(フラックス)とはテープに録音された磁束密度を表しています。テープの磁力を図る単位はnWb/mと表されます。

 

テープ動作時の磁束レベルについて

基本的に、動作時のレベルが高いほど、ノイズフロアから開放されますが、歪みのポイントに近づきます。この挙動自体は、実際のテープに由る所が大きくなります。フラックスとはテープの磁力密度です。

フラックスレベルが高ければ、テープへのレコーディング・レベルも高くすることができます。

高いレベルをレコーディング時に求めるならば、そのテープが高いフラックスレベルに耐えうるかどうかを知る必要があります。(近年の多くのテープは非常に高いレベルを維持でき、歪みやノイズ(テープ・ヒス)を最低限に抑えてレコーディングできます)。
”Ampex 0”もしくはAmpexスタンダードオペレーティングレベルと呼ばれる、Ampexがもともと定めたレコーディングレベルがあります。これは1950年にAmpexで収録されたレコーディング全てに採用されました。

 

このときのフラックス設定は185nWb/mで録音され、初期のテープ設定は全て、Ampex 0もしくは185nWb/mで、それが全てのレコーディングにおいてスタンダードとなっていました。
テープ自体が徐々に進化してより多くのフラックス(レコーディング・レベル)を許容できるようになり、オーディオ産業においては、Ampexスタンダードオペレーションレベルを元にして、テープの磁束レベルのレーティングが行われています。

例えば、250 nWb/mで録音されるテープには (185 nWb/m、Ampex 0を規準とした場合)+3dBでレコーディングされます。

 

Kramer Master TapeのFluxコントロールはnWb/mで測定しており、参考までに下記が簡単な比較ガイドになります。

 

-2 dB = 150 nWb/m

0 dB = 185 nWb/m (Ampex 0)

+3 dB = 250 nWb/m

+5 dB = 320 nWb/m

+6 dB = 370 nWb/m

+9 dB = 520 nWb/m

 

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科学の話は別にしても、初期のテープ・レコーディングでは、フラックス・レベルを必要以上に上げることで、特にロック・ミュージックにとって、非常に音楽的な副作用が得られることがある、ということを、多くのエンジニアが発見していました。

テープにはとてもサチュレーションやオーバーロードへの独特な”至り方”というものがあります。対して、デジタルは基本的にピークを”超えるか超えないか”、それによってクリッピングが生じるわけです。

アナログテープのレベルを上げるに従って、複数の問題が同時にそして徐々に増えていきます。THDやIM(インターモジュレーション・ディストーション)がその例です。

また、モジュレーションノイズや様々な予期しない異常による歪みの形成など、他にも未だ多くが解明されていないのが事実です。他にも、過大入力によってアナログテープ特有の一種のコンプレッサーのようなサチュレーション効果も生み出せます。

多くの、しかもデジタル世代のエンジニアでさえ、ある楽器に限ってはアナログで録音することを好むのです。(特にロックのドラムなど)上記のサチュレーションともコンプレッションとも言えない効果は、決して通常のやり方では生み出せないことを彼らは知っており、さらに活用しているのです。

今回のプロジェクトにおいてテープ・フラックスによる幅広い音響特性の変化をモデリングすることは、Wavesにとっても1つの大きなチャレンジだったと言えます。

 

結果的に、開発チームの努力によって、Kramer Master Tapeプラグインでは-2dB Ampex 0 を超える、連続的なフラックス調整を可能にしています。これにより様々な、しかも本当に他ではあり得ない幅広い特別な効果を再現します。

3M Scotch207は185nWb/mか250nWb/mでの使用が定められていましたが(実際、他にも何が207に合うのかという主観的な意見が多かったのですが、Wavesは保守的に185nWb/mという設定をKramer Master Tapeのデフォルトにしました)、確かなフラックス・コントロールを再現するため、幅広く磁束をモデリングしました。その為、推奨されているレベルを超えてとても繊細に設定できることがおわかりいただけるでしょう。

フラックスを上げるほど、低域、高域が歪み、ノイズレベルが下がります。もうひとつ言えば、さらに別の歪みの層もついてきます。入力レベルの増加によって、真空管のインプットとアウトプットにも負荷がかかり、”真空管歪み”が付加されるのです。

 

Kramer Master Tapeは、連続的に変化するフラックスのコントロールを可能にした初めてのテープモデリング・プラグインです。

ユーザーのみなさんが、実際に様々なレコーディングの音響的変化を体験・理解できるものです。更には、真空管テープマシンの実機を利用して開発された、業界でも奇抜なただひとつのプラグインとなりました。

付加価値的な機能として、インプットオンリーモードを使うことによって、アナログ録音のサウンドをマイナスし、真空管を通したインプット・アウトプット両端のサウンド特性だけを利用することもできます。

録音レベルを上げると同時に再生レベルも下がりますが(ユニティゲインは維持されます)、インプット・アウトプット共に真空管サチュレーションが増加します。これはフラックスとは別の、独自の作用です(フラックスはテープサチュレーションのみに反応するためです)。
上記のような効果は、しばしばテープサチュレーションのサウンドと共に組み合わせて用いることも、テープサチュレーションは使わず、Ampexの真空管アンプのサチュレーションのみを加えることもできます。

独立したフラックス・コントロールや録音・再生レベルコントロールにより、思うがままのテープサチュレーションと真空管サチュレーションのコントロールを可能にします。しかも、Kramer Master Tapeをインサートしたトラックのレベルを維持し、ミックスを邪魔することもありません(録音・再生コントロールの”リンク”という機能をお使いください)。

 

Kramer Master Tapeのフラックス・コントロールを簡潔に説明すると、”テープ・ドライブ”もしくは”サチュレーション・コントロール”と捉えることができます。フラックスのレベルを上げても、ゲインを上げない限りKramer Master Tapeのアウトプットレベルはユニティ・ゲインを維持します。

 

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デフォルトでKramer Master Tapeのノイズコントロールはオフとなっていますが、ぜひ音にした状態でKramer Master Tapeを通したトラックに、耳を澄まし集中して聴いてみてください。Ampex351を用いたアナログ録音でしか生まれ得ないテープヒスと、それに重なるチューブの熱ノイズ、この2つが合わさることで、かつて体験したことのない、とても柔らかなノイズであることをお分かりいただけるでしょう。

 

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アナログにおけるワウ(FM)は、回転スピードのズレで起こります。

フラッター効果(AM)は録音ヘッドのアライメント変化により発生します。トランスポートやその他様々な機械的摩擦を介したテープのスリップや滑りで起こりうるものなのです。アナログ録音でワウやフラッターが発生しない世界はただの理想に過ぎません。

当時、多くの人々はワウやフラッターを、レコード盤のノイズと同じように防ぎようがないものと捉えていました。単に当時の最高水準の技術における若干のネガティブ要素でしかなかったのです。しかし、ノイズと同じく、これらの欠点も含めて再現がされなければ、完璧なモデリングとは呼べないのも事実です。

 

こうした要求にも応えるべく、Wavesはワウのコントロールを手動で行えるようにKramer Master TapeのGUIに組み込みました。試験機にデフォルトで搭載されていたワウとフラッターを再現しています。
上記のエフェクトは更に効くようにも設定できますが、あくまでもアナログテープにおける僅かな効果を再現する程度に抑えています(一目瞭然にわかるくらいですと機械が壊れているということですから)。

ワウを切ることで更にあなたの、テープの欠点とは無縁の理想的な世界を得ることもできるでしょう。ワウやフラッター、ノイズの有無は、先に述べたアナログテープにしか無いうまみやノイズとはまた別の要素です。ゆえに、それを使うか使わないかはあなた次第なのです。「Ampexテープサウンド」の効果こそが、このプラグインの真髄ですから。

 

Kramer Master Tapeを更に良くする為、ディレイコントロール(0ms-500ms)も加えました。これはテープの再生音からKramer Master Tapeのインプットに信号をルートし、ディレイ効果を生み出します。ベーシックなフィードバック・テープディレイをオーディオ信号全体に渡って作り出すわけです(ダイレクト音はKramer Master Tapeのミックスに含まれていますが)。

もし、気に入らない高域がそのディレイにあったら、ローパスフィルターでカットすることもできます。

上記の機能は基本的なディレイのみに限定され、そのため細かく設定することはできませんが、Kramer Master Tapeの魅力を更に引き出すものになると思います。うまく使えば、素晴らしいテープディレイを生み出す可能性を秘めています。

 

もう一つ、留意して頂きたいのが、ディレイ自体はディレイタイム(Delay Time)コントロールに左右されます。トランスポートのテープスピードが影響するということはありません。なぜ、Wavesがわざわざ上記の機能を付加するのでしょうか?

答えは当然、そうできるからです、そして何よりユーザーが楽しんでくれるという確信があったからなのです。

 

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デフォルト・セットアップ

Kramer Master Tapeのデフォルトセットアップをご紹介します。

 

3M Scotch 207@15ips、-3dB、15kHzオーバーバイアスのNABスタンダードカーブ、フラックスは185 nWb/m。アナログ録音の最高潮の時代、最高峰の業界標準セットアップです。他に考慮することがあるとすれば、テープノイズや真空管ノイズのオン・オフ選択とどれくらいそれを付加するかといった程度でしょう。

もちろん、バイアスやワウ、テープスピードなども一つのオプションですしフラックスも、クラシックなAmpex 0を無視して、やりすぎなくらいの設定でテープサチュレーションを掛けまくることもできます。

 

メータートランスファー・スイッチ

メーターのインターフェイスにはスイッチがあり、Kramer Master Tapeの入出力を切り替えて表示できます。サウンドには影響しません。

 

モードスイッチ

昔の現場では機材の黄色やオレンジ色のランプが点灯しているのを見たことがあると思います。この状態はリプロデュース(Repro)はというデフォルト・モードを表しています。Kramer Master Tapeのアウトプットは録音されたテープの信号を再現、出力します(リプロデュース・モードではレコードヘッドで録音された信号を、プレイバックヘッドで再生している音を聞いているのです)。

インプットモードでは真空管のインプットと回路のみを通過した音が出力されます(テープをバイパスしたサウンドになります)。このモードは純粋なバイパスと言えるものではないですが、他にも用途があるのです。

モニターモードの切り替えや、Reproライトだけでなく、トランスポートのリールが回転することで、テープに録された信号をモニターできているか、つまりリプロデュースモードが有効になっているか確認することができるでしょう。テープリールの動作をモデリングしたくなければスイッチ一つで止めることも可能です。

 

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アナログに馴染みのないデジタル世代には、テープ録音されたサウンドが新鮮に映る響くことでしょう。アナログ録音における目標はデジタルのものと変わりなく、透明感と色付けのない状態で音声を保存することでした。

その点においてAmpex 351はある成功を収めたといえるでしょう。しかしながら当時のオーディオ技術の省みると、未だ多くの限界があったのも事実です。テープサチュレーション、テープノイズ、ハーモニックディストーション、モジュレーションノイズ、フェイズシフト等周波数特性に影響を与えるテープ特有の現象は少なくありません。

 

多くの人達がアナログは信号の質が良くなると考えがちですが、今日の標準と測定値はまったく逆を示しているのです。

つまり、実際に測定してみると信号の解像度を失うという結果だったのです。

つまり、アナログのS/N比は現在の規準には及ばないのです。

アナログは高低の周波数を正確に再現することに長けていません。アナログのTHD測定値は今日の規準と比べて劣ります。(1%THD以上)ですが、そのサウンドがいまだリスナーに好まれているのも事実です。

 

ではなぜ、そのサウンドに人々は惹かれるのでしょう? 様々な理由が考えられますが、まず1つに、音響的な測定値や高周波数特性の喪失といった理論的な欠点に反して、ノンリニアなNAB規格のカーブ特性、アナログ録音のプロセス途中で発生するサード・ハーモニックディストーション、そして根本的な主観。これらの要素によって、高域の解像度や量感がわずかに増加するのです。

デジタルレコーディングの時代が到来したときも、後知恵では何とでもいえるのですが、多くの人々はアナログの限界を考慮した上で、そのサウンドを望むようになったのです。よくデジタルは簡素で冷たい音がするものだと批判を受けることが少なくありません。逆にアナログはやたらに暖かみがありクリアで音楽的だと喧伝されることがあります。そこには、Kramer Master Tapeプラグインを通して聴かねばわからない大きな差があるのです。

 

Kramer Master Tapeの設定を自由に試してみれば(そうすることを強くお薦めします)、今までにない素晴らしいテープサチュレーションやノイズなどを生かすことができます。

また、デフォルトの設定では、単なるアナログテープレコーディングの質感を正確に再現するだけでなく、Ampex 350トランスポート、351レコーダー、そして各種回路を含めた最高品質の真空管アナログテープ・レコーディングを再現することができるでしょう。

 

Kramer Master Tapeのサウンドを説明すると、誰もが暖かみ、柔らかさ、クリアさを感じ得ることができます。

デフォルトの設定からKramer Master Tapeを楽しんで頂き、それでも物足りない方はご自身でKramer Master Tapeの秘められた可能性を引き出して頂くことも可能です。その上で、ユーザーの皆様自身の音楽スタイルや好みに合わせてお使いください。

 

Kramer Master Tapeのような奥深さ、細かさそして柔軟性を兼ねあわせ、かつリソースの消費を低く抑える(CPUパワーが比較的軽い)モデルを作ることは不可能に近いでしょう。Kramer Master Tapeを実際に走らせてみるとおわかりになりますが、それなりのリソースを消費します。

Kramer Master Tapeをそれぞれのトラックに掛けたい場合、是非、試してみてください。アートにルールなどないのですから。ですが、おすすめとしてはドラム、パーカッション、ストリング、ギター、ボーカルなどの、アナログ的な暖かみとクリアさが求められるサブミックスセクションにインサートするのが賢いやりかたです。

 

さらに、サンプラーやシンセなどのデジタル素材に使用して頂いても良い効果が得られることもお忘れなく。

また、マスタリングのステージにおいて、ミックス全体に適用すれば、このプラグインの持つ本当の価値に気づいていただけるでしょう。

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Kramer Master Tapeはおよそ2年間に及ぶ失敗と苦労を繰り返し、開発に携わった全ての人達の心と魂の結晶です。

Wavesの心からの願いは、ユーザーの皆様にKramer Master Tapeを楽しんで使って頂き、音楽制作にとって欠かせないツールとなることです。Kramer Master Tape(MPX)はKramer HLS ChannelとKramer PIE Compressor、Kramerシリーズ最後のピースです。

ついに、マジックといわれるほどのオリンピックスタジオのレコーディング・チェインの完全なモデリング、Tape, Tubes & Transistorsが完成されました。

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音楽の創造は1990年代にアナログからデジタルへ、ハードウェアからソフトウェアへ、2000年代にはコンピューターのパワーの上昇によりインザボックスでの制作、ミキシング、マスタリングは一般的なものになりました。

Platinum
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モチベーションも高く制作を進め、ミックスも基本のプロセッシングからキャラクターを生かしバランスを取った作業ができた。数曲をトラックダウンして、作品として発表するところまでもう少しという段階。ここまでく

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VU Meter
VU Meter

VU Meterにより、DAWでのミックスに、業界の定番となっているメータリング・メソッドを導入することが可能になります。VU Meterを使用することで、より最適なレベル、十分なヘッドルーム、そしてクリアなミックスを

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JJP Vocals
JJP Vocals

Jack Joseph PuigによるJJP Vocalsについてのコメント: “ボーカルをミックスする時に気を付けているのは、直感と本能だ。どのディレイをとか、EQをどうするかとか、コンプレッサーの設定とか、そんな技術的な話では

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