コンプで「潰さずに」音量コントロール
スタッフHです。先日、とあるエンジニアさんの所へお邪魔したときに、現在作業中のすばらしいアコースティックギターのテイクを聞かせていただく事ができました。曲のすばらしさはもちろんですが、強弱のコントロールが絶妙で、ある時は弦に触れるか触れないかほどの繊細なピッキングでボディを響かせ、またある時はフルボリュームのマーシャルを三段積みにしたギターよりも迫力を感じるテイクでした。
2020.01.01
強弱のあるプレイの音量コントロールには、コンプレッサーを使用しますね。音量の大きなところ(=スレッショルド値を超えたもの)を潰し、全体を持ち上げる。こうする事で音量の低いところの音量をあげる事ができ、全体が聞きやすくなります。
でも音量の大きいところは「潰している」わけですから、プレイヤーが演奏に込めたニュアンスも同時に失われていく事も確かです。低いところの音量は良くなったけど、強いところはベタッと潰れてしまったり、のっぺり表情のない音になってしまったりします。
もちろん一級のエンジニアさんたちは、こうならないようなテクニックを持っています。コンプと同時にフェーダーコントロール(手コンプ)を緻密に行う方や、弱い所と強いところのオーディオリージョンを切り分けて、それぞれ個別に処理して繋げる方、誰にも言えない秘密のテクニックや機材で仕上げる方など。エンジニアさんの数だけ、さまざまなテクニックがあるでしょう。アコースティックギターに限らず、ボーカル、ギター、ドラム、なんでも当てはまります。
つまり「音量の低いところだけにコンプ(&ゲインアップ)がかかり、音量の高いところには何も処理をしない」というツールがあれば、問題は解決です。ドラムの波形で表現すると、こんな感じ。
青で指しているところはハイハットの部分。全体的には非常にいいバランスで鳴ってくれているドラムなのですが、ほんの少しだけハイハットの音量を上げたいのです。反対に、キックやスネアは十分にいい鳴りをしてますし、これ以上のコンプ感は必要ありません。
そういう時に繊細な処理をしてくれるのが、Waves MV2です。このMV2、操作は非常に簡単で、左端のスライダーが「Low Level」、真ん中のスライダーが「High Level」です。
Low Levelスライダーを上げていくと、音量の低いところだけが持ち上がります。これが、他にはない魔法のスライダーです。High Levelスライダーは一般的なマキシマイザーのように動作します。こちらは、下げれば下げるほど音圧が上がっていく、という動作です。
例えばソースがボーカルなら、同じくWavesのVocal Riderなど、手コンプを自動でやってしまうという脅威のツールがありますが、Vocal Riderに入れる前にMV2を軽くインサートしておくと、Vocal Riderの掛かりがより滑らかになり、いい効果を発揮してくれます。
例えばギターやベースなら「いかにもコンプを掛けました」というサウンドを避け、繊細なピッキングニュアンスを潰す事なく、弱いところだけを持ち上げてくれます。
MV2、Wavesの中では地味めなツールながら、非常にパワフルなプラグインなのです。MV2が含まれたバンドルについては製品ページでチェックしてみてくださいね。また、MaxxVolume(MV2の兄貴分ともいえる製品、MV2により詳細なパラメーターを充実させたもの)もおすすめです。
プロモーション
人気記事
ギターとドラムのミックスを秒で解決するWAVESシグネチャーシリーズ【CLA & Eddie Kramer編】
スタッフEbです。ロックの楽曲をミックスするとき、熱いギターサウンドとパワフルなドラムを表現するために、プラグインをいろいろと試行錯誤しています。「ロックギターやドラムに特化された専用のプラグインがあれ
トップエンジニアからの金言。ミキシングのTips
今日は世界一級のエンジニアが送るミキシングのTipsですが、具体的なTips(例えば、EQやコンプをこんな風にセッティングするとか)は1つもありません。しかし、ミックスをするにあたりとても大事なことが数多く含ま
DiGiGrid DLS導入レポート – 鈴木Daichi秀行
2013年のNAMMショーで発表され、ネットワークで自由にI/Oを拡張でき、Wavesプラグインが超低レイテンシーで使えるソリューションとして注目を集めてきたDiGiGrid製品ですが、2014年10月、ここ日本でもPro Tools向け
DiGiGridで制作の全てが変わった:OM Factoryセミナー(その3)
前回、前々回に引き続き、OMFACTORY大島su-kei氏によるプレミアムなDiGiGridセミナーを映像化したものをお届け。話題は多くのユーザーが気にするべき、CPUネイティブ環境・最大の欠点からスタートする。
リズム隊のミックスTips! – Vol 2 キック処理編
オフィスオーガスタ佐藤洋介さんによる「リズム隊のミックスTips」。今回はキック編のご紹介です。
リズム隊のミックスTips! – Vol.8 トラックダウン編
おかげさまで好評連載中の「リズム隊のミックスTips」。ここまでドラム、ベース、ギターと各楽器を処理する手順をご紹介して参りましたが、今回はいよいよファイナルとなる「ミックスダウン編」です。
人気製品
Abbey Road RS124 Compressor
まさにアビー・ロード・スタジオで行われた、ビートルズの全てのレコーディングで聴けるトーンを。2つの異なる「フレーバー」を選択できるこのクラシックな真空管コンプレッサープラグインは、アビー・ロード・スタ
Aphex Vintage Aural Exciter
Aphex Vintage Aural Exciterプラグインは、ジャクソン・ブラウン、リンダ・ロンシュタット、ジェイムス・テイラーを初めとする多くのアルバムを手がけ、オリジナルのAural Exciterを知り尽くしたエンジニア、Val Ga
API 560
ブースト/カット量でQ幅を自動調整するAPI独自のプロポーショナルEQを搭載、精密な処理とアナログ感を兼ね備えたグラフィックEQ
Brauer Motion
いくつものグラミー賞を重ねてきたミキシング・エンジニア、マイケル・ブラウアーほど、ミックスにエモーショナルな動きを加えることに長けた人物は多くありません。コールド・プレイ、ジョンメイヤー、ジェイムス・
C6 Multiband Compressor
何年にもわたり、Waves C4は世界中のスタジオエンジニアのお気に入りプラグインでした。今や、ライブサウンドの現場においても必須となっています。
BSS DPR-402
12のモードを組み合わせて多彩なダイナミクス処理が可能 BSS® DPR-402ダイナミクス・プロセッサーは、そのパンチ感と多様な用途に対応する万能さから、長きにわたりスタジオ、ライブ、ブロードキャストの現場でエン
CLA-76
CLA-76 Blacky / Bluey は、60年代半ばに発売されたクラスAラインレベルリミッターアンプの異なる2つのバージョンにインスパイアされています。"Blacky"と"Bluey"の両バージョンも、オリジナル機と同様にスタジ
L3-16 Multimaximizer
Wavesが最初に作り上げたマキシマイザL1 Ultramaximizerは世界中のミキシングとマスタリングに革命をもたらしました。続くL2 Ultramaximizerがもたらしたサウンドは、いまでも世界中のヒットレコードやメジャーな映