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ローエンド強化のプラグイン4つの適切な選び方

ローエンド強化のプラグイン4つの適切な選び方

太くタイトなローエンドを得ることはミキシングにおける非常に重要な課題ですが、その秘訣は正しいツールを選択することにあります。4種類の異なるベース/サブ・プラグイン(Submarine, LoAir, R-BassとMaxxBass)を比較し、常に完璧なローエンドを得る方法を紹介します。
By Charles Hoffman

2020.01.01

はじめに

音楽制作やミックスでローエンドを向上させるにはどうしたら良いでしょうか?完璧な結果を得るには、問題とゴールの両方を定義することが重要です。

これらの質問に答えて初めて、作業のための正しいツールを選ぶことができるのです。

WavesにはSubmarine, LoAir, Renaissance Bass (R-Bass) そして MaxxBassのようなローエンドを加工し向上させるプラグインがあり、正しい状況で使用することで、それぞれに特有の効果を生み出すことができます。ここでは、あなたのニーズに対して適切な選択を行う方法をお教えします。

まずRenaissance Bass (R-Bass)とMaxxBassですが、これらは本質的にはハーモニック・エンハンサーで、本当の超低域を音源に足す訳ではありません。

これらのプラグインは、リッチでディープな低音の認識を作り出すために、基音に基づく音響心理学のテクニックを利用しており、特にイヤフォンや低域の周波数を再生することができない一般のスピーカーで効果を発揮します。

 

これらの2つのプラグインの違いの殆どは、内部の機能と加工の強度の違いです。MaxxBassは入力信号に対して多くのコントロールを行うことができます。それに対しR-Bassは、コントロールできる箇所は少ないですが、素早く結果を得ることができます。

次にSubmarineとLoAirですが、これらは音源から本物の低域とサブハーモニックを生み出します。Submarineは新しいプラグインで、WavesのOrganic ReSynthesis (ORS) 技術を搭載し、音源の最大2オクターブ下までクリーンな超低域を生み出します。LoAirは音源の1オクターブ下にローフリーケンシー・エフェクト(LFE)を作り出します。モノ、ステレオそして5.0チャンネルの音源にも使用できるため、多くの場合サウンドデザインやポストプロダクションで理想的な選択となります。

以下のベースギターがミックスされているオーディオサンプルを使って、紹介した各プラグインを比較していきます。このガイドでは、スタジオヘッドフォンもしくは適切にセットアップされたサブウーファーを備えたスピーカーのセットでオーディオを試聴することが重要です。そうでなければ、プロセッシングの効果を完全に聞き取ることは出来ないでしょう。

オリジナルの素材 - ベースのミックス例 - 加工無し


1. Submarine

では、まずWavesのプラグインファミリーに新たに加わったSubmarineから見ていきましょう。このプラグインは、WavesのOrganic ReSynthesis (ORS)技術を使用し、入力信号の1〜2オクターブ下の超低域成分を生成します。その後、超低域は周波数レンジセレクターを使って高精度に成形され、入力信号とミックスされた後にミックスバスもしくはLFEバスに直接送られます。

submarine

肝心なことは、ORSは入力信号をそのコアな要素(ピッチ、フォルマント、キャリアとエンベロープ)にまで分解し個別に加工し、ピッチと音源のタイミングを維持した新たな超低域を作り出すためにシグナルを再構成するということです。その結果、クリーンで音楽的かつ音源に自然に馴染むディープなサブハーモニックが生成されるのです。他の似たようなプラグインでは、フォルマント・シフティングとリサンプリングに頼ることで人工的な音になってしまったり、ローエンドがSubmarineが生み出す超低域ほどナチュラルでクリアでない、といったことが往々にしてあります。

サブウーファーを備えた大きなサウンドシステムで鳴らすためのキックにインパクトを足す、といったようなはっきりと分かるSubmarineの使用法以外で最も効果的な使い方の1つは、複雑なダブステップのシンセパターンの下にクリーンなサブベースを生成するという使い方です。ダブステップ・グロウルを作る時、シンセのサブオシレーターをオンにするか、サブベース用の別トラックを用意するのが一般的です。この両方の方法で問題になるのが、サブベースを動かし、レイヤーされている高い周波数の要素と一緒にモジュレートするのが難しいという点です。SubmarineのORSテクノロジーで元々の音源と完全に混ざるサブベースを生成することで、この問題を解決することができます。

01-1 - Submarineを使用する前のダブステップ

01-2 - Submarineを使用した後のダブステップ

複数の異なるシンセパッチを使用している場合、それらをまとまりのある音として聞かせるのが難しい場合があります。そういった時には、それぞれのシンセパッチのサブオシレーターをオフにし、Submarineをシンセグループに足すのがお勧めです。サブベース用に作成したトラックが生み出してしまう不快な効果を避け、Submarineの生成する生き生きとしたサブベースを加えることができます。最初の例に戻り、Submarineを加えた後にベースギターのサウンドがどう変化するかを聞いてみましょう。

01-3 - Submarineを使用した例

聞いて分かる通り、サブベースが非常にクリアに生成されています。音数の多いミックスにおいては、Submarineが生み出す明瞭さは極めて好都合です。つまり、ロック・ソリッドな基礎を固めつつも、他の要素が呼吸するスペースを作ることができるのです。ループ全体でも個々のサンプルでも自然な効果を生み出すことができるSubmarineは、ヒップホップ、EDMの音楽制作やミキシングなど、クリーンでパンチの効いた低域が必要とされている場合のサブベース問題を完璧に解消します。


2. LoAir

私の特徴のひとつに、ある曲で使ったのと同じセットやサウンドの組み合わせを他で使わないというものがあります。それぞれのトラックでは、いつでも新しい音の組み合わせをゼロから作っています。こうすることで、とりあえずのものを見つけるのではなく、より曲に反応して作ることができます。それぞれのレコードの個性を出すことにもなるしね。

loair

LoAirはサウンドデザインとポストプロダクションなど、LFEをモノ、ステレオ、5.0チャンネルの音源から生成する際によく使用されます。5.1チャンネルの音源に既に存在しているLFEを拡張、向上させることもできます。Submarineと同じくLoAirもサブハーモニックを生成しますが、SubmarineがORSテクノロジーを使用し入力信号の1-2オクターブ下のサブベースを生成するのとは全く違い、LoAirは入力信号を1オクターブ下げフィルタリングすることでサブベースを生成します。

以下の例では、LoAirがローエンドをうまく肉付けできていることを確認できます。サウンドに足されたサブハーモニック成分が、元々の音源とタイトにまとまっています。

02 - LoAirを使用した例

しかしLoAirでの加工後、ベースがキックとぶつかってしまっています。LoAirの利点を活かしつつこれを解消するためのオプションとしては、WavesのC6 Multiband Compressorなどのツールを使ってわずかにサイドチェインコンプをかけ、キックのためのスペースを空ける方法があります。このコンプレッサーでは、フリーケンシー・バンドでベースギターのローエンドを選択的に狙い、キックが鳴っている時にぶつかっている周波数にだけ、コンプをかけることができます。

シンプルに、音源の低域のレスポンスを強化しつつサブベースと元々の音源がクリアに分離されている状態を避けたい場合、LoAirは素晴らしいツールになります。LoAirによって生み出される超低域がSubmarineが生み出すものと同じくらい自然なサウンドだとは思いませんが、これは必ずしも悪いことではありません。選択肢があり、プロジェクトに最適なものを選択できるということが重要なのです。Submarineの機能はかなり音楽プロデューサー向けに作られていますが、独特なFeedセクションを含むLoAirの機能は、5.1チャンネル音源用の分離を可能にし、サウンドデザイナーとポストプロダクションのエンジニアにとって効率的です。


3. MaxxBass

MaxxBassは、低域の信号に倍音を足すことでローエンドに厚みを持たせます。より上の倍音成分を含ませることで、音を再生しているデバイスのアウトプットには含まれていないかもしれない低域を、リスナーの脳に認識させることができるのです。この「ミッシング・ファンダメンタル」と呼ばれる音響心理学の現象については、以前に別のWavesのブログ(blog article)で説明をしています。

この音響心理学現象は、脳に錯覚を起こさせ、「ミッシング・ファンダメンタル(失われた基音)」をイメージするように仕向けます。脳は、トーンの基音の周波数からだけではなく、トーンの上部の倍音の関係からもピッチを認識します。例えば、200 Hzと400 Hzがスピーカーから再生されている場合、失われた100 Hzの基音はスピーカーからは出ていませんが、脳は音が存在する、と解釈します。SubmarineとLoAirが実際の低域周波数を生成するのに対し、MaxxBassは高域周波数を生成し、そこに低域周波数があるように思わせるのです。

maxxbass

MaxxBassの最も効果的な使用法の1つは、一般向けのスモールスピーカーやイヤフォンでローエンドを聞こえるようにすることです。ベースラインや808の音がスマートフォンやラップトップのスピーカーではっきりと聞こえない場合、MaxxBassを使ってそれら一般向けのデバイスが再生できる範囲の倍音情報を生成することができます。高域の周波数と基音との関係上、このプラグインが低域のレスポンスを拡張できるのは、最大1.5オクターブの範囲になります。

03 - MaxxBassを使用した例

MaxxBassのオーディオの例とLoAirのオーディオの例を交互に聞いてみると、LoAirはよりディープな、唸るようなトーンであることがはっきりと分かります。別の相違点として、MaxxBassのキックがLoAirの例よりもクリアである点に気が付いたかもしれません。これはローエンドでマスキングがあまり発生していないからです。そこにローエンドがある、とリスナーの脳を錯覚させることで、位相関連の問題も避けることができます。


4. Renaissance Bass

Renaissance Bass (R-Bass)では、MaxxBassのために開発されたものと同じプロセッシング・テクノロジーを使用しています。しかし、より効率的な形を取り、インターフェイスは削ぎ落とされ、素早く簡単に作業を行うことができるようになっています。同じ音響心理学のテクニックを利用しているため、MaxxBassとR-Bassの差異は僅かです。しかし、違いは存在します。Renaissance Bassのほうがよりモダンで磨き上げられたサウンドだと感じます。この違いは、プラグインが生成する倍音成分の強度の違いによるものである可能性が高いです。

renaissance-bass

MaxxBassとRenaissance Bass (R-Bass)の主要な差異はコントロール部分です。MaxxBassはより自由度が高く、アップワード・コンプレッション、フィルターのカットオフ・フリーケンシーのスロープの変更や、生成した倍音をソロにし、低域周波数成分とは独立してさらに加工するといったことができます。

Renaissance Bassは「セットしたらおしまい」という考え方で作られており、手っ取り早く結果を得たいエンジニアやプロデューサーにとって理想的なツールです。Renaissance Bassで良いサウンドを得るのに多くの作業は必要ありません。Freq. (Hz)スライダーから始め、続いて生成された倍音のintensityを調整するのがお気に入りです。

04 - Renaissance Bassを使用した例

プロセッサーの設定をゼロに合わせたMaxxBassとRenaissance Bass (R-Bass)にサイン波を通すと、フリーケンシー・アナライザーに表示される結果は非常に似通ったものになることに気が付くと思います。Renaissance BassはMaxxBassより多く倍音を生成する傾向にありますが、しかしMaxxBassを調整することで似た結果を得ることができない訳ではありません。これらのプラグインの主な違いは間違いなくユーザーインターフェイスなのです。

Renaissance Bass (R-Bass)に関してもう1つ触れておかなければならないのが、このプラグインはマスタリングにも使用できるということです。曲の中でベースラインが聞き取りづらい場合、EQは最も効果のある解決方法にはならないでしょう。トラックのローエンドをブーストすると、そのターゲット・フリーケンシー・レンジにあるもの全てをブーストしてしまいます。Renaissance Bassは、選択した基音に音楽的に関連性を持った倍音を生成することができるので、ミックスが崩れるのを最小限に抑え、EQよりも好ましい結果を生み出すことができます。

 
 

まとめ

音楽制作やミックス、マスタリングに向き合う場合、「ニーズを満たす」という観点から作業することが非常に重要です。つまり、どんな問題があるのかということを見極めることが必要不可欠なのです。そうすれば、最も効果的な解決策を選択することが可能になります。

とはいえ、自分自身でこれらのプラグインをチェックし、比較するのが一番良い方法です!

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