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マスタリングEQのタメになるTips10選

マスタリングEQのタメになるTips10選

WAVESウェブサイトに投稿されていた記事の中から、マスタリングのコツを取り扱ったものを日本語化しました。先日の「マスタリングにおけるリミッティング。6つのTips」と合わせて、魔法のようなマスタリングを実現するための参考にしてください。

2020.01.01

10 Tips for Effective EQ during Mastering

マスタリングは、ストリーミングや物理メディアでリリースされる前に音楽が通過する最終工程ですが、聴衆に対してアピールするためのプロフェッショナルな仕上げを行うための最後のチャンスでもあります。実際に、効果的なマスタリングは、技術、経験、そして適切なツールを選択することによって全て決まると言っても過言ではありません。イコライゼーションはマスタリングの工程で最も優先的に使用される武器のひとつであり、暖かさ、空気感、およびトーンバランスを追加することができます。またEQは、一部の周波数成分が大きすぎて他の帯域をマスキングしてしまうような問題の修正にも使用されます。

では、マスタリングにおける効果的なEQの使い方トップ10を順番に見ていきましょう。

1. 音響的に調整の取れた部屋で、正確なモニタリングシステムを使用する

正確でないモニタリング環境のマスタリングは、煤や汚れで覆われた暗いサングラスをかけた状態で絵を描こうとするようなものです。あなたのスピーカーが低域の弱い性質の場合、自然に低音域を強調してしまうため、マスタリング後のサウンドを他のシステムで聴くと低音が強すぎる結果となってしまいます。 逆に、リスニングルームに固有の共振周波数(対策を施していない部屋でよく発生する低音の共振)が存在する場合は、その帯域を抑えるよう補正しますので、結果として薄くてパンチに欠けるマスタリングとなってしまいます。予算内でできるだけニュートラルな性質のスピーカーを導入し、少なくとも基本的な音響的な対策(ベーストラップ、ディフューザーなど)を部屋に実施してください。

2. 基本を理解する

全てのEQプラグインには、ほぼ同じコントローラーが設置されています。

複数のバンドを使用でき、各バンドは異なる周波数に設定できます。各帯域内で、選択した周波数領域のゲインを調整することで、その成分をブーストまたはカットすることが可能です。一番上と一番下の帯域は通常はシェルビングに使用され、ローパスフィルタまたはハイパスフィルタとして機能します。シェルビングバンドではスロープを用いて、ゲインの傾きを調性可能です。さらに、ほとんどのEQプラグインはパラメトリックEQです。つまり、影響を受ける周波数領域の幅を変化させることのできる「Q」コントロールを使用可能です。

3. EQを適切な場所で使用する

多くのマスタリングセッションでは、1つではなく複数のプラグイン(さらに場合によってはアナログ信号プロセッサも)を使用する必要があります。厳密なルールはありませんが、DAW内でマスタリングを完結させるなら、EQプラグインは一般的に、チェインの早い段階で、コンプレッサーの前または後で使用されます。(Waves L2 UltramaximizerやL3 Multimaximizerのようなリミッタープラグインは、基本的に全体的なラウドネスを追加する目的で使用されるため、ほとんどの場合、チェインの最後で使用されます)

しかし、すべてのプロセスは他のすべてのプロセスと相互的に作用するので、EQの調整中にも使用する全てのプラグインを挿入してアクティブにしておくことをお勧めします。そうすれば、EQの調整が及ぼす変化を流れの中で捉えることが可能となります。

4. ブーストせずに、カットする

ある周波数帯のボリュームを下げること、すなわち引き算的なEQの使い方は、一般的にブーストよりも良い結果を生むことが多いと言えます。実際、ある特定の周波数領域を目立たせることが目標の場合は、代わりにその帯域の周り、あるいは上下の周波数をカット(減衰)する方が効果的な場合があります。低域を下げると、中音域や高音を上げたように聞こえます。 逆に高域成分を減らすようにミックスすると、ローエンド成分が目立つようになることがあります。

5. 控えめ、が大事

マスタリングで大事なのは「微妙さ」です。プロのマスタリングエンジニアは、周波数領域を1.5dB以上カットまたはブーストすることはめったにありません。彼らはわずかな変更でさえ、結果として得られるオーディオに大きな影響を与える可能性があることを理解しています。みんな同じ原則に従ってマスタリングすべきです。0.5 dB以下の単位で作業してください(0.25dBが理想的です)。場合によっては全体のサウンドに大きな影響を及ぼします。ミキシング/マスタリング・エンジニアのYoad Nevo(Sia、Pet Shop Boys)は、「2-3 dB以上のEQが必要な場合は、おそらくミキシング段階で何か間違いを犯してしまっている。その場合、問題のある周波数をリミックスする必要があると認識しなければならない。」とコメントしています。

6. 音量バランスを修正する

全てのマスタリングセッションにおいて最初のステップは、聴くことです。目を閉じて、ただ聴いてください。全体的な周波数スペクトルに集中した状態で開始します。低音域(ベース、バスドラム)、中音域(ボーカル、ギター、キーボード)、高音域(ハイハット、シンバル、パーカッション)の間に相対的なバランス関係はあるか?ミックスは濃すぎて濁っていないか、逆に薄すぎないか?低域や高域が強すぎないか?各楽器は分離して聴き取れるか?すなわち、ギター、キーボード、ボーカルを明確に区別できるか?これらは、全てマスタリングで対処可能な問題です。

ミックスが濁っている、ボケている、またははっきりとしない場合:

ディレイやリバーブを含むミックスの要素の殆どはミッドレンジでさまよいます。(キックドラムの一部の成分ですら高音域に入ります)サウンドの濁りは、通常、その領域のエネルギーが過剰な場合に発生します。対策として、まずは150-350 Hzの範囲の低域を減衰させてみてください。これは、より多くの中高域成分が通過できるようにするための隙間を開けるためのトリックです。引き算的なEQの正しい使い方です。1つの周波数領域をカットすることで、隣接する領域がよく聞こえるようになります。

薄く聞こえる場合:

これは、高域と低域に比べてミッドレンジの成分が不足している場合に発生します。これを解決するには、500 Hzの領域を穏やかにブーストします。あくまでも穏やかにブーストすることがポイントです。やりすぎると籠ったり人工的なサウンドになってしまいます。サウンドの薄さを解消するための他の方法には、古典的なアナログEQ(または実機をモデリングしたプラグイン)、Kramer Master Tapeなどのテープエミュレータ、またはMaxxBassのような低音強化用のプラグインを使用することです。

低音成分が強すぎる場合:

約100-150 Hzの成分を少し下げます。

高音成分が強すぎる場合:

3-8 kHzでEQカットを試してください。もう1つのアプローチは、ローエンドをわずかに上げることです。実際には高域成分は少なくなっていないにもかかわらず、ハイエンドを少し鈍らせる心理的な効果があります。

サウンドがぼんやりしている場合:

トップエンド(10-15kHz以上の領域)のシェルビングをブーストをほんの少し加えることで、トラックに空気感を与える効果がもたらされます。可能性として危険なのは、シンバルやハイハットのレベルが、その他のドラムキットと比較して上がりすぎてしまうことです。サウンドの鈍さを解消するための別の方法は、Aphex Vintage Aural ExciterやVitamin Sonic Enhancerのような高域強化用プラグインを使用することです。以下のビデオでは、エンジニアのMiles Walker(Beyonce, Sia)がVitaminを用いたミキシングとマスタリングについてのデモをしています。

高域成分が不足している場合:

リードボーカルまたはギターソロが出てこない場合は、3-5 kHzの領域で少しずつブーストを試してください。この操作によって、他の周波数成分との大きさに差が生じる可能性があることにご注意ください。もちろん、同じ周波数領域を減衰させると、その逆の効果が得られます。伝説的なマスタリング・エンジニアのBob Ludwigは、あるセッションで彼がリード・ボーカルを0.5 dBほど下げるよう指示されたことを述懐しました。「Waves Linear Phase EQを使用したので、ミックスの残りの部分のサウンドには影響はありませんでした」

上記のEQの変更はすべてイコライザープラグインで行うことができますが、Ludwig氏が触れたリニアフェーズEQプラグインを使用することにはメリットがあります。従来のEQではカットまたはブーストされる帯域で微小なディレイが発生することにより、不鮮明なサウンドを生じてしまう恐れがあるのに対して、リニアフェーズEQでは全ての体域の信号が同じ速度で通過させることができ、透明感のあるサウンドとゼロフェーズ問題の解決を可能とします。

7. 問題のある周波数を特定して修正する

アコースティックギターのレゾナンスや、不適切なレコーディングあるいは状態の悪い楽器によって特定の周波数成分に問題が生じている場合は、次の手順で問題のある周波数を特定してください。

  1. (a)イコライザープラグインのおおよその周波数帯域を選択し、狭い幅(Q)に設定します。
  2. (b)そのバンドを5-10 dBブーストします。(これは一時的なものですので、心配しないでください)
  3. (c)聴きながら周波数を上下に移動させます。
  4. (d)問題の周波数が目立つようになったら、Qをもう少し狭め、音が最大になる箇所を探します。

問題のある周波数を特定したら、小さなノッチのようにその部分だけを低減してみて下さい。全体的なサウンドに影響を与えずに、レゾナンスが十分に低減されるまで、このカットを少しずつ増やして(0.5 dB以下ずつ)いきます。EQによる悪影響をミックスに与えないために、特に重要なポイントです。あくまでも問題のある周波数成分を助けることが目的なのであって、他の成分の妨げになるようでは本末転倒です。

問題の周波数が曲全体でなく、ある特定のセクションでのみ発生する場合は、F6のようなダイナミックEQの使用を検討すると良いでしょう。これらの種類のプラグインでは、特定の周波数領域を減らすために適用するコンプの量を調節し、音量レベルが指定したスレッショルドを超えた場合にのみコンプを起動させ、その周波数成分に対してどのタイミングでどの程度減衰させるかを完全に制御することが可能です。

8. 低域ノイズの除去

多くのマスタリング・エンジニアが採用している手順のひとつに、イコライザーの最低帯域(シェルビング・バンド)で30-40 Hz以下の周波数をロールオフすることによって、ハイパス・フィルターとして機能させることが挙げられます。ミックスが大量に低音域の要素を含んでいる場合(サブウーファーがない環境では検出できない可能性がある)の対策として、あるいはベースを強化する作業用ヘッドルームを確保するための予防手段として機能します。この方法ではバスドラムのインパクトを失うことがあるので、注意して行う必要があります(また、EDMなどのベースのジャンルの音楽ではこの方法は使用されません)。

9. 1つのEQよりも2つのEQを使用した方が良い場合

上記のヒント#6で説明したように、昔ながらの(ノンリニアな)イコライザは、特に複数のバンドがカットまたはブーストされているときに、「スミアリング」と呼ばれる位相異常現象を発生させてしまう危険性があります。しかし、実際にそのサウンドが必要な場合もあるでしょう。結局のところ、今日も崇拝されているヴィンテージのアナログEQは、位相を不鮮明にします。でも時として、アナログの暖かさがあなたのミックスに必要なカラーを足してくれるかも知れません。

このような理由から、チェインに2つめのEQプラグインを追加したい場合があります。このプラグインは、主にミックスにキャラクター追加することを目的としています。「PuigTec EQP-1Aは、エミュレートした実機のハードウェアとよく似ていますが、オーディオを通過させるだけで、暖かさと高域成分を加えることができます」とレッド・ホット・チリ・ペッパーズ作品のマスタリングを手がけるドリュー・ラヴィーン氏は述べています。(PuigTec EQsのドリューのカスタマイズされたマスタリングプリセットはここでダウンロードできます)。アナログEQエミュレーションを提供するWavesプラグインには、H-EQ Hybrid EqualizerとV-SeriesのEQもあります。

他の方法を採りたければ、Linear Phase EQと標準的なEQの両方を併用することで良い結果が得られる場合があります。たとえば、標準のEQプラグインを使用してローエンドとローミッドに色付けを施した後で、リニアフェーズEQを使用してミッドレンジとハイエンドを調整することが可能です。

10. MSイコライゼーションのパワーを使う

ミックスの特定の要素を前面に引き出したい場合は、F6 Floating-Band Dynamic EQやH-EQ Hybrid Equalizerのような、ミッド/サイド(MS)処理を提供するEQプラグインを使用してみてください。これらの強力なツールを使用することで、左右の端までパンされた成分(リードボーカル、キックドラム、スネアドラム、おそらくは1つまたは2つの他のコンポーネント)をその他の成分と分離することができます。たとえば、センターチャンネルの中域の比較的小さな領域を単純にブーストするだけで、ボーカルのレベルを効果的に上げることができます。

以下のビデオでは、ミックス&マスタリングエンジニアYoad Nevo(Sia)がMSモードを使用してバスドラムのレベルを制御する方法を示しています。

Nevoは、「ローミッドをセンター・チャンネルでブーストすることで、バスドラムの基本周波数周辺のエネルギーが増すんだ。それと約2.5 kHzの帯域をカットすることで、 ビートのクリック感を減らすことができる。それからサイドチャンネルに行き、同じ帯域の周りを補強してやる。近い周波数成分であるにも関わらずバスドラムには全く影響を及ぼさずに、シンセパッドを持ち上げたり、全体的に少し広げてより荘厳な感じにすることもできる。」と言っています。

サイドチャネルのイコライゼーションを使用すれば、以下のようなことも実現可能です。

これらのヒントを活用することで、マスタリングにおけるEQのパワーがより発揮されるでしょう。より良いトラック制作に是非ご活用下さい!

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