読むだけでミックスがうまくなる?オートメーション活用 7つのヒント
今や、DAWに搭載されたオートメーション機能はとてもパワフルになりました。
ご存知の通り、すべてのミキサーとプラグインのエフェクトパラメータを自動化することができ、人の手だけでは、実現不可能だったコントロールも可能になりました。 よりクリエイティブな作品を求められる昨今、非常に重宝されています。 オートメーションを活用することで、リスナーの興味を惹きつけるダイナミックなミックスを制作することができるでしょう。
そのための7つのヒントをご紹介します。
2020.01.01
1. 曲の変化を描く
モジュレーションやサチュレーションなどのエフェクトのスピードや強さの変化を自動化することで、曲のセクションや、曲中での変化をより強調できます。Kaleidoscopesは、モジュレーションFXのバラエティに富んでおり、曲に変化を加える上で、プロセッサーとして最適な役割を担うでしょう。
エレクトリックピアノのパートがモジュレーションされたコーラスに移行する際の例をお聴きください。4小節目でモジュレーションが始まると、コーラスのデプス(Effect 1)とフランジャー(Effect 2)、フランジャーのワイズ、オーバードライブなど、いくつかの異なるパラメータが、モジュレーションされたセクションに入るにつれて徐々に高く、より強い設定に変化していきます。
鍵盤パートのソロではオートメーションの効果をより明確に聴くことができます。
2. シンセのパラメータを自動化
シンセパートにオートメーションを書き加えることで、音に動きと変化という「スパイス」を加えることができます。MIDIコントローラーのノブを使ってオートメーションを記録したり、DAWの中で直接、リアルタイムにオートメーションを書いたりも可能です。この場合、後者の方が精度が高くなります。DAWがシェイプを使ったドローイング・オートメーションに対応していれば、ノブを回しても作れないようなオートメーションのパターンを作成できるでしょう。
ソフトシンセ上で設定可能なパラメータのオートメーション化には、あらゆる可能性が見出せます。
例えば、好きなシンセパッチのサウンドを、曲中の特定のポイントでフィルターをスイープさせたいとき、シンセ内でのパッチングを考える必要はありません。曲中でスイープさせたい部分でフィルターやレゾナンスのパラメーターをある方向や別の方向に移動させるよう自動化します。ラッチモードを使用し、ノブを離したときに値が最後の位置に残るようにするとよりナチュラルな質感になります。
次の例では、Element 2.0のシンセサウンドを聴いてみましょう。5小節目からPro Toolsの矩形波を使ってフィルターのレゾナンスを自動化しました。7小節目では、13小節目までにレゾナンスを最高値にするラインを描きました。
さらに、カットオフ周波数にもオートメーションを設定しました。6小節目で変化し始め、8分音符にクオンタイズされた非常にタイトな三角形のパターンが始まります。そして、7小節目には、その値が大幅に下がり、16分音符で刻まれたスクエア波のパターンを設定、オートメーション化しています。
例2 VCFレゾナンスパラメータの自動化。
3. ディレイのコントロール
曲やセクションで適宜ディレイを発生させたいとき、プラグインを自動化してバイパス状態とON状態を適切なタイミングで切り替えるエフェクトを設定することができます。
お望みの時間とフィードバックの設定ができたら、ディレイがバイパスされた状態で、残響音が発生するセクションを演奏します。オートメーションをタッチまたはラッチモードにした状態で、ディレイをお好みのタイミングでオンにします。
ちょうど良いポイントを見つけるためには、何度も実験する必要があるでしょう。ON/OFFのタイミングが早すぎると、(例えば音声データの場合)ディレイが前のワードや単語の一部を捕捉してしまいます。逆に長く待ちすぎると、ターゲットとなる単語の一部しか取得できません。必要に応じてオートメーションを編集して、ちょうど良い状態にしましょう。
H-Delay
この例では、"Screen Time "という曲の最後に、H-Delayを使ってギターのリフとハーモニーにディレイをかけてみました。ハーモニーパートの出力を少し下げた以外は、同じ設定で両方のトラックにディレイを挿入しました。両方のディレイはバイパスで開始し、曲が最後のビートに到達したときにオンになります。このエフェクトをAUXのディレイを使って設定し、センドのミュートボタンを自動化する方法もあります。
コメント
例3 オートメーションがマスターバイパスをオフにすると、最後のビートでディレイがオンになります。
4. ドラムフィルを強調する
ダイナミックスを付加するため必要なオートメーションは、ソングセクションではなく、ドラムのフィルを中心としたものです。フィルは曲にキレとエネルギーを加えるのに役立ちますが、シンプルなボリュームオートメーションを使ってそれらをさらに際立たせれば、ミックスにさらなる生命を吹き込むことができます。
前のヒントと同様に、ブーストは1~3dB程度と繊細にしないと、リアルなサウンドにはなりません。
ここでは、ボリュームオートメーションなしでドラムフィルをいくつか入れた例をお聴きください。ドラムのレベルは問題ないのですが、フィルの存在感が少なく感じるでしょう。
そして、こちらはフィルを2.5dB~3dBほどブーストしたもので、曲にメリハリをつけています。
小音量を自動でドラムフィルの音量を大きくして、よりポップにしています。
5. ボーカルのレベルコントロール
ボーカルトラックは多くの曲で中心となり、そのレベルを楽器との音量バランスをとることが常に重要です。オートメーションを使うことにより、これらの作業を更に正確に行うことができます。
ミックス全体の大まかなレベルをまとめ、必要なコンプレッションを追加したら、リードボーカルチャンネルのオートメーションをタッチモードに設定して、ボーカルが大きすぎたり、柔らかすぎたりする部分を均等にするためにフェーダーを操作してください。
すべての DAW に搭載されているタッチモードでは、フェーダーを離すとすぐに元のレベルに戻ります。理想の音に近づけるためにはブレークポイントの編集をしたり、数回のセッションが必要でしょう。
Vocal Riderをお持ちの場合、ボーカルレベルをコントロールするための最適なワークフローを得ることができます。ボリューム範囲を設定し、その範囲内に収まるように自動的にゲインを調整します。
Vocal Rider
ミックスのボーカル以外の信号をサイドチェインで送ると、ボーカルレベルをオケと同じ相対的なレベルに保ちます。さらにコントロールしたい場合は別のオプションも。
Vocal Riderには、オートメーション・ライト機能があり、これをオンにすると、すべての動きをボーカル・トラックにライダー・フェーダーと呼ばれるパラメータに書き込んでくれます。一度ライトモードで曲を実行すると、プラグインをリードモードに切り替えることで、書き込まれたオートメーションに従って再生することができます。
Vocal Riderが書いたオートメーションを見ることができます。
これにより、迅速かつ正確なオートメーションの設定が可能になり、必要に応じて編集で微調整することができます。ボーカルライダーのワークフローを使用すると、ボーカルレベルのオートメーションを手書きよりもはるかに速く正確に作成することができます。さらに、ボーカルを圧縮していないので、色をつけることもありません。単にゲインを上げたり下げたりしているだけなのです。
6. 曲の終わりを美しく
トラック上では素晴らしいサウンドを奏でているのに、曲が停止するとディレイが繰り返されてしまう、ということはありませんか?これはクールに聞こえることもありますが、多くの場合は少し素人っぽく聞こえてしまいます。このような状況にオートメーションを組み込むことで、エンディングをよりプロフェッショナルなサウンドに磨き上げることができるでしょう。
最も簡単な方法は、最後のビートでバイパスモードに入るようにプラグインを自動化することです。あるいは、最後のビートの後にコントロールされたタップ数が必要な場合は、それを生み出すフィードバックの設定を把握して、それをオートメーション化しましょう。
7. リバーブの設定を変化させる
曲全体に同じリバーブ設定を使用する必要はありません。音楽のタイプやアレンジにもよりますが、曲のセクション間でリバーブを微妙に変化させることはとても有効な手段であるです。
オートメーションを使わずに、ボーカルトラックの中で変更したい部分を別のトラックに移動させて、独自の設定をすることで、実現することもできますが、オートメーションを活用することによって、とても簡単に設定することができます。
これにより、コーラスのスペースが広がり、曲がより大きく、よりエキサイティングに感じさせることができます。また、曲の後半でボーカルのリバーブにコンプレッションやディストーションを導入して、テイストを強化することもできます。状況や目的に応じて、微妙な変化を加えたり、より強調したりすることができるのです。H-Reverbにはコンプレッション、ディストーション、モジュレーションが内蔵されているので、音楽的に非常に柔軟性が高く、曲の途中でキャラクターを変えるのに最適です。
H-Reverbには、リバーブ・サウンドを形作るための様々な機能が搭載され、その全てをオートメーション化することができます。
リバーブの変化は、どのような音源でも効果的に機能します。この例では、ドラムトラックでH-Reverbを使用しています。5小節目で追加となるドラムパートが入ってくると、ドライ/ウェットの割合がよりウェットになり、オーディオにリバーブが追加されてます。プリディレイは180msで設定されエコーの効果を作り出しています。
この例では、リバーブのオートメーションは、新しいセクションへの展開時に行われます。
ドラムパートの一部をソロで演奏してみました。リバーブ変化の前に2小節、後に2小節。
7つのオートメーションに関するヒント、どうだったでしょうか。 知っている事も、知らなかった事もあったと思います。プロデューサー、ミックスエンジニア、楽曲制作の初心者の方であろうと、これらのヒントは、躍動感のあるダイナミックなミックスを作成するのにとても役立つことは間違いありません。
さあ、デスクに向かってミックスを始めましょう。
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