
調整されたスタジオの音響空間をヘッドフォンの中に再現する。Nx Virtual Mix Room
「WAVES NXはミックスに新しい視点を与えてくれました。さまざまな環境でどのように音が聞こえるのかが分かり、今まで気がつかなかったことに気づくことができます」
そう語るのはサウンドデザイナーのGraham Reznick。彼がヘッドフォンを使ってどのようにミックスを行なっているか、学び取りましょう。
2020.01.01
NX Virtual Mix Roomとヘッドフォンを用いたサウンドデザイン
ロサンゼルスにある自身のスタジオでサウンドデザイナー、レコーディング&ミキシングエンジニア、作曲家、ライターやディレクターなど多岐に渡る活動をしているGraham Reznickは、The The House of the Devil、The Innkeepers、In a Valley of Violenceなど多数の映画で活躍しているだけでなく、自身のテレビシリーズDeadwaxの作曲家兼脚本家としても活動し、2018年にはGlass Angelsというエレクトロニックミュージックのアルバムをリリースしています。
また日本でも人気のゲーム「アンティル・ドーン」や「GONEシリーズ」など、数多くのビデオゲームのサウンドデザインやミックスなども手がけています。
長きに渡るクリエイティブな創作活動の中で、彼は常に「新しい視点」を得る方法を模索してきました。「ヘッドフォン用のWAVES Nx Head TrackerとNx Virtual Mix Roomプラグインは、発売とともに使い始めました」とのこと。
「進行中のミックスを別の角度からチェックできるので気に入っています。スピーカーだけの環境では気がつけなかったものや、手に負えない問題を見つけ出すときにはうってつけです。様々なサイズの部屋とリスニングポジションをシミュレートできるので、いくつものリスニング環境で全ての周波数と楽器がどのようにゲル化する(しない)かも判別できます。
Nx Virtual Mix Roomは、WavesのNxテクノロジーにより没入感のある3Dオーディオ空間をヘッドフォン環境に再現する仮想モニタリングプラグインです。部屋の中で鳴らされたスピーカーと同じ3次元の奥行きとパノラマステレオ(またはサラウンド)環境をヘッドフォンの中で再現します。
ヘッドフォンでのミックスは難しいと言われます。パン、ミックスの奥行き、リバーブの深さ、ローエンドの情報量などは、スピーカーで聞くものと明らかに違いがあり、判断にとまどうことでしょう。
Nxプラグインは「ハイエンドスタジオの音響をヘッドフォン上で再現する」製品で、ミキシングエンジニア、プロデューサー、サウンドデザイナー、ミュージシャンがどこにいてもヘッドフォンで間違いのない判断ができるような環境を提供します。また、よく調整されたスタジオを持っている方であっても「異なるリファレンスの1つ」となることでしょう。
Graham ReznickはWaves Nxを導入したきっかけをこう語ります。
最初にNxを手に入れたとき、妻はちょうど赤ん坊を産んだばかりで、僕たちはロサンゼルスの小さなアパートに住んでいました。幸い仕事はたくさんあったのですが、薄い壁の隣で眠っている赤ん坊がいるため、大きな音を出してスピーカーを鳴らすことができなかったのです。
そういった環境で、Nxは僕にとって完璧なソリューションでした。サウンドデザイン、エディット、ミックスを快適に行うことができ、まるで大きなモニタースピーカーを鳴らしているかのようにヘッドフォンで作業ができる、と感じたのです。
また私は仕事で移動をすることが多く、そんな中でもミックスを調整をしなくてはいけないときや、新しい素材で作業をしたいとき、狭苦しい飛行機の中やホテルの部屋ということを意識させない環境が得られます。
Nxがリアルな3次元空間をヘッドフォンにもたらしてくれるのは、コンピュータのウェブカメラやNx Head Trackerを使って頭の微細な揺れや角度をトラッキングしているから。実際に目の前でスピーカーが鳴っているのではないか、と幻覚するかのようです。ヘッドフォンから音がでているのに、脳みその理解が追いつかないほどでした。実際にヘッドフォンとスピーカーを用意して20分くらい聴き比べたのに、全然違いがなかった。また、Pro Toolsで360度のVRオーディオセッションをミックスするとき、ディスプレイから目を離すことができない状況でもリアルタイムで頭の周りのオーディオフィールドの動きをシミュレートしてくれるのです。
Waves Nxは、ヘッドフォン環境で通常のステレオソース、サラウンドコンテンツのミックスができるだけでなく、VRオーディオのミックスも可能です。
Waves NXを使ってサウンドデザイン、ミックスを行なった最初のプロジェクトは、JT Pettyが脚本・ディレクターを務めたGONEという初期のVRシリーズでした。当時、VR/360度のプログラムは市場にほとんどなかったころです。Nxは、頭の動きによってどのように音空間が変化するかを確認する最適な方法だったと言えます。シリーズの最終バージョンを確認しましたが、私があらかじめNxを使って編集・ミックスしたときに聞いていた音と違いがありませんでした。Shudder(ホラー、スリラー、超常現象などの小説タイトルを扱うアメリカの動画配信サービス)のDeadwaxの音楽や、自分の楽曲の多くもNxを使ってミックスを仕上げています。
「Nxは、耳の疲労対策にもいいんだ」とReznickは語ります。
「1つのモニタースピーカーを使って1日中ミックスするときに起こりがちな問題は、徐々に音量を大きくしていきがちだということです。同じ音を何度も何度も、数時間に渡って聞いているわけですからね。耳が疲れて、その結果良くないミックスがチョイスされてしまう恐れもあります。だからこそ、ヘッドフォンでミックスする必要がない環境を持っている方であってもNxをオプションの1つとして導入してみてほしい。スピーカーを聞いている体感はそのままに、でもミックスに新しい視点も得ることができますからね」
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