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ロッド・ウェイブ、ジャスティン・ビーバーのボーカルサウンドを作る7つのテクニック

ロッド・ウェイブ、ジャスティン・ビーバーのボーカルサウンドを作る7つのテクニック

エンジニアでもあり、プロデューサーでもあるトラヴィス・ハリントン(ロッド・ウェイブ、ドレイク、ジャスティン・ビーバー)は、ロッド・ウェイブのツアー中にホテルの部屋でトップチャートに入るレコードを制作したと話します。今すぐ使えるミックスと制作のための珠玉の7テクニックをご紹介。

2023.03.25

こちらからトラヴィス・ハリントンの実際のプリセットをダウンロード


トラヴィス・ハリントンは、普通のエンジニアとは一線を画す存在です。彼は「Heart on Ice」「Street Runner」「By Your Side」「Cold December」など、ラッパー/シンガーのロッド・ウェイブによるトップチャート曲の多くを支えるクリエイティブな仕事をしています。ボーカルレコーディング、ミックス、プロデュースなどどんな役割もこなし、プロセスのどの段階でも曲をうけとめ、いつでもどこでも最後まで仕上げてしまうことができます。

トラヴィス・ハリントンの場合、それはスタジオにいるときだけでなく、ロッド・ウェイブのツアー中のホテルの部屋やAirbnbを借りて行うこともあるのだそうです。

「どこで音楽を作るかではなく、自分の居心地のいい場所にいて、その場の雰囲気やノリをつかむことがいい曲のプロダクションに繋がるのです」

ロッド・ウェイブのツアーの合間にトラヴィス・ハリントンと話す機会があり、スタジオ以外でヒット作を生み出す方法、ロッド・ウェイブのプロデュース方法についての考え方、そしてリードボーカル、アドリブ、ボーカルサンプルなどをミックスする際のテクニックについていくつか話してもらいました。

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トラヴィスはホテルでロッド・ウェイブのレコーディングを行うとき、Clarity Vxを使ってノイズ除去を行う

Tips 1:ミックスの前に不要なノイズをクリーンアップする

私の仕事で一番重要なのは、ロッドのボーカルを正しく表現することです。私たちは移動が多いので、クリエイティブな作業やレコーディングのほとんどをホテルやAirbnbで借りた家で行います。当然、ハムノイズやヒス、グランドノイズなどは常に発生しています。Clarity Vxはこうしたあらゆる種類のノイズをコントロールするのに特に役立ちますね。

ホテルの部屋の場合、部屋の外や廊下、隣の部屋からノイズが入ることもあります。通常ならマイクプリアンプのゲインを下げざるを得ない状況ですが、それだと彼のボーカルの魅力を最大限に引き出すためにベストとはいえません。Clarityが登場してからは、ロッドの声からバックグランドノイズだけを分離し、ボーカルトラックをクリーンにすることができました。画期的といえますね。

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ホテルのスイートルームでロッドのボーカルをミックスするトラヴィス。写真提供 @shotbyebye4

Tips 2:ダイナミクスとEQでボーカルをシャキッとさせる

こちらからトラヴィス・ハリントンの実際のプリセットをダウンロード

ノイズが除去できたら、次はロッドのボーカルをシャキッとさせるためのプラグインを使っていきます。まずはSibilanceで「サ行」や「フッ」といった音を取り除き、高い周波数のところにあるピークを抑えます。次にR-Compで抑揚のコントロール。大きなピークを受け止めさせ抑えさせるだけで、派手なコンプなんか使わない。スレッショルドを下げるだけで、ボーカルの立ち上がりがしっかり聞こえたらもうそれでOK。

次に、H-EQでEQをします。このプラグインは、周波数の値だけじゃなくて鍵盤キーが同時に表示されるのがお気に入り。ロッドのボーカルなら2kHzを少し足して存在感とパンチを加えることが多いかな。このあとに、2つ目のディエッサーを使うこともあります。トップエンドをもっと細かくコントロールしたいときならR-DeEsserを使いますね。そしてCLA-2Aを通して持ち上げて、全体をまとめるようなイメージ。

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ロッドの"Street Runner"で実際に使用されたR-Verbのセッティング

Tips 3:リバーブのフィルターをいかせ!

私は、大きくて空気感のある声や、モニュメンタルな「畏怖」の念を感じさせるボーカルが好きなんです。コールドプレイやイマジン・ドラゴンズのようなアーティストのファンで、あの感じを自分なりに解釈して広げたものをロッドの声に合うようにしようと常々考えている。そういうサウンドを得るために使っているリバーブの1つがR-Verb。一般的にはNGとされていることは承知の上で、彼のリードボーカルに「インサート」で使っている。でも、私の考えでは伝統的なミックスの観点から絶対に外れてはいけないなんてことはなく、ただいい音であればいい。

私の使い方は、まずドライ/ウェットのコントロールで50%程度まで下げる。それから内蔵のEQでハイパスとローパスフィルターを使って「Uの字」を描くように設定。そしてリードボーカルのフィーリングと深さがちょうどいいと感じるところまでフィルターポイントをスウィープさせます。多くの場合で、センドにもう1つロングリバーブを立ち上げておき、これらを組み合わせて使います。ある部分だけトラックとして録音しておくと、その部分だけを使って他の部分はクリーンなまま濁らないようにすることができます。

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トラヴィス長年のアドリブボーカル用シークレット・ウェポン、CLA Vocals

Tips 4:アドリブやバックボーカルを分散させよう

アドリブやバックボーカルの場合、私は分散させて広げるのが好きです。ずっと使っている私のシークレット・ウェポンはCLA Vocalsです。みなさんがこのプラグインをどう思ってるか知りませんが、私はごちゃごちゃとたくさんのプラグインを使って仕事を「難しく見せる」ことが必ずしもいい結果に繋がるとは思っていません。

ミックスをステージに見立てて考える必要がありますね。ステージにはリードシンガーの他にバックシンガーもいる。そして後ろにはバンドもいます。ステージの真ん中に全員を配置させるわけにはいかないでしょう。だから、これはミックスも同じなのです。ステレオフィールドのさまざまなスペースにアドリブやバックボーカルを分散させたい。オートメーションを使って動きをつけ、特定の単語を浮き上がらせるように使うこともあります。

Tips 5:ミックスの中で、ボーカルサンプルを楽器のように使う

ボーカルサンプルは主に2通りの方法で使うことができます。それは、サンプルの意図によって変わってきます。例えば、"Street Runner" ではルース・Bの"Mixed Signals" のサンプルがロッドのメインボーカルと共にミックスの前面に出てきています。もう1つの方法は、サンプルをテクスチャーとして使用することです。

"Cold December"では、ハンク・ウィリアムスJr.の"O.D.'d In Denver"をサンプリングしています。このトラックでのサンプルの扱い方は、楽器ようなものでした。One knob Filterを使って言葉の響きや感触が伝わるようなベストセッティングでミックスに戻して使っており、リードボーカルと一緒に前面に出すことはありません。曲が進むにつれてフィルターを開けたり閉じたりして、ミックスそのものに動きも出しています。

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スタジオセッションでミックスを聞き返すロッドとトラヴィス。写真提供 @shotbyebye4

Tips 6:他のジャンルから影響を受けよう

ロッドと私が意気投合した大きな理由の1つは、私たちがヒップホップだけでなくあらゆるタイプの音楽が好きで、大ファンであることです。エド・シーラン、イマジン・ドラゴンズ、コールドプレイなども大好きだし、彼らがミックスの中でやっていることも好き。ツアー中はオルタナティブ・ロックからカントリー、90年代のR&Bからオールドスクールなヒップホップまで、あらゆるジャンルの音楽を聴いています。

あるとき、ロッドと私はライブの合間に長距離ドライブをして帰ってきました。運転手が60年代のプレイリストをずっとかけていて、ロッドと僕はサイケデリックな音楽やソウルミュージックを聴きながらそのヴァイブスを楽しんでいたんだ。その夜、帰ってきてからスタジオに入って "Brace Face" を作ったんだけど、60年代の影響が随所に感じられた。

Tips 7:テンプレートを作れ!

アーティストと仕事をする場合、あるいは他のプロデューサーやソングライターがいる場合は、スピードが最も重要。アイディアが逃げてしまう前に、それらを書き留める準備をしたいもの。この場にいる誰かが、セッションの流れを変えるようなアイディアを急に出すかもしれないから、準備が必要なんです。

アーティストはEQやリバーブについて考えているわけではない。「ちょっと待ってください、いまプラグインをインサートするので....」なんて言うわけにいかない。そんな無駄なことをしても、誰も待ちたくないでしょう。時間を無駄にしたら、負けです。

DAW用のテンプレート集をつくって、テクニカルなことはさっさと済ませ、クリエイティビティとインスピレーションを維持できる環境を作るようにしておきましょう。インスピレーションを得るために私がよく言っているのは、

「インスピレーションはお金のように浮かんでは消えるが、それを得たときに正しい使い方をすれば、人生を変えることができる」

ということ。私のTipsで大切なのは、新しいことに挑戦するよう導いてあげることです。もしあなたが今まで学んできた方法をこれからもずっと続ける「だけ」だったら、どうやって新しいことにたどり着くのでしょうか?

デイブ・ペンサード(マイケル・ジャクソン、マライア・キャリー、メアリー・J・ブライジほか多数のヒット作を手掛けるグラミー受賞エンジニア)は、「新しいビートは常に良きものである」という最高の言葉を言っていました。

プリセット、コンプレッサー、EQ、リバーブなどの設定は、単なるスパイスに過ぎません。それを使ってどう料理するかは、あなた次第です。

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