WAVES シングルプラグインピックアップ:CLA Vocals
パラメータなんか見なくていい。ボーカルは耳で判断しよう
本記事をご覧の多くの方は、きっとボーカルの音作りとミックスに時間をかけていることでしょう。ボーカルは曲の主役。全工程の中でもっとも手間暇がかかるパートです。2022.03.15
ボーカル処理に必要な2大作業
まずはEQなどを使って余計なピークとなっている部分を取ったり、不足している部分を補ったり。それからコンプレッサーなどを使って、大小の音量差をなるべく減らし、オケとうまく混ざり合うようにし、サビでの迫力をちゃんと演出する。ここまでが「馴染ませ」の作業です。
それからもう一つ、リバーブやディレイなどを使って広がりを作ったり、曲のムードを作ることも大切な処理。他にも複数のボーカルを重ねたようなダブルなども印象的なボーカルを作る上でよく用いられる手法。ここまでが「雰囲気作り」の作業です。
エンジニアはいくつものツールを使って、こういった処理を行っていることでしょう。EQやコンプを学んだり、リバーブやディレイをいろいろ試したり、覚えなきゃいけないことは山のようにあります。皆様がもしエンジニアになりたいのであれば、これは必須科目といえるでしょう。
いいボーカルトラックに仕上げたいだけなのに
私の身近な友人のボーカリスト。彼は機材やソフトにはあまり詳しくはないのですが、「歌ってみた」のオケを探してきてボーカルを重ね、YouTubeなどに公開しています。そんな彼曰く、
「EQとかコンプとか全然わからない。もっと、写真のフィルターくらい少ない調整で簡単に格好いいボーカルに仕上げられたらいいのに」
エンジニアになりたいわけではないけど、自分で録ったボーカルを良い感じに仕上げたい、という人は少なくないのではないでしょうか。こういったお話は、私たちも様々な場所でよく耳にします。
たった6つのスライダーを操るだけ。耳で判断しよう。
WAVESのCLA Vocalsは、ボーカル専用のプラグイン。ユーザーが気にするべきはたった6つのスライダーだけ。6本はまったく役割が違うスライダーなので、使い方に悩む方は少ないことでしょう。
CLA Vocalsは、数々の名作を手掛けるトップ中のトップエンジニア、クリス・ロード=アルジ(CLA)が開発に関わったプラグイン。彼がボーカルミックスをするときに使うツールをこれ1つにまとめたもの。1本のスライダーの背後では複数のパラメーターが同時に動いていますが、ユーザーは難しいことを気にすることなく簡単に魅力的なサウンドに仕上げられる仕組み。
冒頭で書いた「馴染ませ」の作業には、左2つのBass / Trebleのスライダーを使いましょう。もっと明るくしたいな、と思ったらTrebleを「良い感じになるところまで」上げる。噛みつくような高域じゃなく、空気感のような高域が欲しければ、すぐ上のボタンを数回クリックして「BITE → ROOF」にするだけ。音が細いなと思ったらBASSをちょいと上げてあげればふくよかさが出てきます。
スレッショルド?レシオ?覚えなくてもOK!
もう1つの「馴染ませ」作業はコンプレッサー。音量の大小を圧縮してオケの中に溶け込ませるような作業ですが、通常のコンプといえばスレッショルド、レシオ、アタック、リリース、ニー、最低でもこれくらいのパラメーターを操らなくてはいけません。しかしCLA Vocalsのコンプはたった1つのスライダーだけ。スライダーを上げるほど強くコンプがかかります。大丈夫、CLAがあらかじめボーカルに適した設定を背後で施してくれているので、ユーザーはスライダーを上げ下げするだけです。
キャラ変として「ジェントル系、激しく潰す系、レベル調整系」の切り替えもあります。コツはありません。「良い感じのところまでスライダーを動かす」だけでOKです。
ムード作りもスライダー1本で
残る3本のスライダーは、ディレイ、リバーブ、ピッチ。CLAが「ボーカルに使うならこれがベストセッティング」な空間系エフェクトを背後で用意していますので、ユーザーは欲しい量のスライダーを上げるだけ。
リバーブならバラードに適したLARGE、アップテンポな曲ならTIGHTを選んで、好きなところまでスライダーを上げ下げしてみましょう。 ディレイはDAWで設定したテンポに自動で合わせてくれます。山彦のように繰り返す系のディレイから、短いディレイで人工的なボーカルを作ることまで。どこにどうセッティングしても音は破綻しないので、好きなところにスライダーを合わせてみてください。
右のPITCHスライダーは、2回歌ったものを重ねたようなダブリングや左右に大きく広がるコーラスなどを最速で作ってくれるフェーダー。CLA Vocalsはメインボーカルだけじゃなく、コーラスの処理にもベストです。
初心者を卒業したら要らないヤツ?
背後では複雑で手間のかかる処理を行なっているCLA Vocalsですが、画面はとてもシンプル。これはWAVESのポリシーでもある「シンプル操作で、絶大な効果を」の究極の形でもあります。
ところでこのCLA Vocalsは、初心者専用なのでしょうか?もちろんそんなことはありません。稀代のトラックメイカーtofubeatsさんのミックス指南記事では、ボーカル編にこのCLA Vocalsが登場しています。「仮ミックスで使ってたけど、このままでいいじゃん」というコメントは、まさに今回のテーマ、「耳で判断しよう」を裏付けるものですね。
ボーカルは楽曲の主役。主役がきっちりと立つような作品を作りたい方には、CLA Vocalsがおすすめです。
人気記事
リズム隊のミックスTips! – Vol 3 スネア処理編
好評連載中、オフィスオーガスタの佐藤洋介さんによる「リズム隊のミックスTips」。今回は3本目となるスネア処理編です。BFD3を使用したTips記事ですが、他社のドラム音源でも、実際のドラムレコーディングでも有効
リズム隊のミックスTips! – Vol 5 ドラムバスミックス編
いよいよリズム隊のミックスTips ドラム編もラスト。今回はドラムを1つのバスにまとめたバスミックス編です。
リスニングスキルを向上させる7つのヒント
プロダクション、ミキシング、マスタリングのセッションでは、正確なリスニングスキルがアマチュアとプロの差と言っても過言ではありません。音楽理論、プラグイン、ハードウェアを超えて、音楽制作には鋭く正確なリ
プロの第一歩を踏み出すチャンネルストリップ Waves AudioTrack
イコライザー(EQ)とダイナミクス系エフェクトが1つに収められた「チャンネルストリップ」。スピードが求められるプロの現場で多用されている便利ツールです。チャンネルストリップは複数の処理がまとめられた便利さ
MIXを始めよう!5つのステップでアプローチ
ミックスと一言で言っても、どこから手をつけたらいいのでしょうか。ローエンド、ボーカル、それともやみくもにフェーダーを触ることでしょうか?ご安心ください。ここでは曲を仕上げるための5つのステップをご紹介
リズム隊のミックスTips! – Vol 2 キック処理編
オフィスオーガスタ佐藤洋介さんによる「リズム隊のミックスTips」。今回はキック編のご紹介です。
人気製品
API 560
ブースト/カット量でQ幅を自動調整するAPI独自のプロポーショナルEQを搭載、精密な処理とアナログ感を兼ね備えたグラフィックEQ
BSS DPR-402
12のモードを組み合わせて多彩なダイナミクス処理が可能 BSS® DPR-402ダイナミクス・プロセッサーは、そのパンチ感と多様な用途に対応する万能さから、長きにわたりスタジオ、ライブ、ブロードキャストの現場でエン
CLA-76
CLA-76 Blacky / Bluey は、60年代半ばに発売されたクラスAラインレベルリミッターアンプの異なる2つのバージョンにインスパイアされています。"Blacky"と"Bluey"の両バージョンも、オリジナル機と同様にスタジ
Brauer Motion
いくつものグラミー賞を重ねてきたミキシング・エンジニア、マイケル・ブラウアーほど、ミックスにエモーショナルな動きを加えることに長けた人物は多くありません。コールド・プレイ、ジョンメイヤー、ジェイムス・
CLA-3A
ユニークで非常に透明感のあるコンプレッションカーブを持つことで知られる70年代初期のソリッドステートユニットをベースに開発されたCLA-3Aは、実機同様に素早いレスポンスと繊細な倍音歪みを提供します。オリジナ
CLA MixDown
Waves Artist Signature Seriesは、世界のトッププロデューサー、エンジニアとのコラボレーションにより生まれた目的別プロセッサーシリーズです。全てのSignatureシリーズプラグインは、アーティストの個性的なサウ
Clarity Vx Pro
Clarity Vx Proは声専用のリアルタイムノイズリダクションです。Waves Neural Networks®を搭載し、複数のノイズ除去タスクを1度に実行。一瞬の分析でダイアログをアンビエンスから分離し、わずかな作業時間で、ノイ
CR8
Waves CR8 Samplerは非常にパワフルで使いやすいサンプラーです。クリエイターにとって「美味しい」サウンドをすばやく生み出すことができます。 サンプラーの中には、機能は豊富でも操作が複雑で理想の音にたどり着