印象的なボーカルの作り方 Reel ADT
「どうしてもボーカルがイメージ通りにミックスできない」
ボーカルを印象的に仕上げる技、ダブリング。まずは世界的にも有名なこの曲、The Beatlesの「Tomorrow Never Knows」をお聴きください。
2022.01.11
ボーカルのジョン・レノンがセンターと右側に立って、2人で歌っているような処理が印象的ですね。プロの音楽制作の場でよく使われる手法で、同じフレーズを数回歌ったりして、こういった印象的なボーカルを作る方法をダブリングといいます。
The Beatlesの他の曲でもたびたび登場するこの印象的なダブリング。独特のうねり感と有機的で自然なコーラス感が特徴的ですが、実はこの曲では、ボーカルのジョン・レノンは1回しかこのフレーズを歌っていないんです。
ダブリングの原理
もともとは「実際に数回同じフレーズを歌う」方法で行われていたボーカルのダブリング。 現在ではそのダブリング効果を簡単に作り出すことができるエフェクトが多数リリースされています。
ただプラグイン・エフェクトを実際に使ってみると、ピッチやタイミングのズレが一定で、どうしてもニュアンスが機械的で表情に変化が出にくい、といった印象になってしまうことも。
一般的なダブリングプラグインはどうして機械的な印象を受けるのでしょうか。例えば一般的なコーラスと言われるエフェクトの場合、
元の音に対して少しだけピッチやタイミングをずらした音を作り出すと、その音のずれに応じた「揺らぎ」が発生します。基本的にダブリング系のプラグインはこの原理を応用して、プラス左右のパンなどを調整して音に広がりを加えていく、というような仕組みです。
こういった理由もあり、自然なダブリング感が欲しい場合には同じフレーズを何度も歌ったほうが適してはいるのですが、何度も全く同じように歌うには技術も必要ですし、体力や時間の問題もあってレコーディング自体も難しいと思います。そこで「印象的で自然なダブリングを手軽に手に入れたい!」という方にオススメなのが、Waves Abbey Road シリーズの Reel ADTです。
人間の声は不規則
でも人間の声は本来不規則で、このように「綺麗に」ピッチがずれているわけでありません。通常のダブリングプラグインは音のズレが一定になるため、どうしても機械的な印象を受けることがあります。
でもはじめに聞いていただいたThe BeatlesのTomorrow Never Knows、こちらは同じようにエフェクト処理されたボーカルにも関わらず、自然に「もうひとりが歌っている」ように聞こえませんか?実はこれがReel ADTのすごいところで「人間らしいダブリング」を再現するためによく考えられた仕組みが採用されています。
Reel ADTはひとつのテープに対して2つの音声読み取りのヘッドがずらして配置してあり、さらにそのうちのひとつが前後に揺らぐ仕組みになっています(元になった機材は実はちょっと構造は違います)。
ひとつ目のヘッドが拾う音に対して、もうひとつのヘッドの音はどんな音を拾ってるでしょうか。
- 1つめのヘッドに対して少し後ろなので、音が遅延(ディレイ)する
- ヘッドが前後に揺らいでいるので、ディレイ量やピッチが上下する
この構造のおかげで通常のダブリングエフェクトのように機械的ではない、あたかも「人間が2回歌った」ような有機的なサウンドをつくることができます。
広がりのあるコーラスサウンドを作ってみよう
では実際にReel ADTでコーラスサウンドを作ってみましょう。まずは左右に広がりのあるコーラスサウンドを作ってみます。まさにThe Beatlesサウンド!といったような音なら、例えばセッティングはこんな感じ。
SRCとADTの音量を揃えて、SRCとADTのPANつまみ左右の広がりを作り込めます。もうひとつ重要なポイントとしてはLFOのSHAPE。ここをSineやTriangleにすると周期的な揺れとなり、少し機械的なニュアンスになります。
反対にRandomに設定するとディレイ値やピッチのズレが不規則になるため、まさに「人が歌った」ようなコーラス効果を得られます。音がうまく決まらない、不自然な感じを消したい、というときにはまずこのSHAPE=Randomを試してください。
裏技的?1テイクっぽく聞こえるダブリングサウンド
メジャーアーティストの楽曲で、生々しいサウンドであたかも「1発で録った」ようなボーカルのものがあります。もちろん本当に1テイクで仕上げているものもあるのですが、よほどボーカルの技量があって処理も適切に行われない限り、どうしてもバックトラックから浮いてしまうのが「声」の難しいところ。
こんなとき実は多用されているのが「フレーズを数回歌って、気づかない程度に薄く重ねる」という技法です。不思議ですが、この技法を使うとあたかも1テイクで録っているように聞こえるにも関わらず、トラックに馴染みやすいボーカルが得られます。
「全く同じように何度も歌う」という技術が求められるので、実際歌う場合には難易度は決して低くはないのですが、Reed ADTがあれば簡単にこの方法を再現することができます。
メインのボーカルトラックをコーラス用に2トラックコピーしておきます。そしてそれぞれにReel ADTを立ち上げて、SRCの音量をゼロ、ADTのPANをCenterに設定しておきます。LFOは両方ともRamdomを選択しておきます。
基本セッティングはこれでOK。あとはVARISPEEDや音量を調整して、2つのコーラストラックがメインボーカルの後ろにうまく隠れるようなセッティングを探してみてください。トラックに合わせたときに馴染みがよくなったり、ボーカルの存在感が出ればOKです。
この方法は例えば「歌い手の人から1テイクしかデータが送られてこなかった。でももう少し厚みが欲しい…」というようなときにも使えます。単なるボーカルダブリングエフェクトではないReel ADT。ぜひ皆さんも手にとって、いろいろな可能性を試してみてください。
人気記事
リズム隊のミックスTips! – Vol.8 トラックダウン編
おかげさまで好評連載中の「リズム隊のミックスTips」。ここまでドラム、ベース、ギターと各楽器を処理する手順をご紹介して参りましたが、今回はいよいよファイナルとなる「ミックスダウン編」です。
Waves CA導入事例:ラスベガスの高級ラウンジのサウンドをブラッシュアップ
AVインテグレーション、デザイン、エンジニアリングのリーディングカンパニーとして知られているNational Technology Associates(以下NTA)が米国ネバダ州ラスベガスの新しいダイニング「Todd English's Olives」の
CLA-2A vs. CLA-3A クラシックコンプレッサーの違い
LA-2AとLA-3Aは、最も有名なコンプレッサーと言っても過言ではないでしょう。これまでボーカルやベースなどの楽器に長く愛されてきました。今回は「真空管モデル」と「ソリッドステートモデル」の比較。あなたのトラ
Curves Resolve 2026年1月19日発売!期間限定で無償提供
Wavesから、インテリジェンスなマスキング除去処理を可能にする新製品 Curves Resolve が2026年1月19日(月)に発売されます。
DiGiGridで制作の全てが変わった:OM Factoryセミナー(その2)
前回に引き続き、OMFACTORY大島su-kei氏によるプレミアムなDiGiGridセミナーを映像化したものをお届け。いよいよDiGiGrid導入に関する話題に突入。
EDM制作に使ってほしいプラグインバンドル
世界トップのDJ/プロデューサーがチョイスしたWAVES EMP Toolboxシリーズ
人気製品
Abbey Road RS124 Compressor
まさにアビー・ロード・スタジオで行われた、ビートルズの全てのレコーディングで聴けるトーンを。2つの異なる「フレーバー」を選択できるこのクラシックな真空管コンプレッサープラグインは、アビー・ロード・スタ
API 560
ブースト/カット量でQ幅を自動調整するAPI独自のプロポーショナルEQを搭載、精密な処理とアナログ感を兼ね備えたグラフィックEQ
Brauer Motion
いくつものグラミー賞を重ねてきたミキシング・エンジニア、マイケル・ブラウアーほど、ミックスにエモーショナルな動きを加えることに長けた人物は多くありません。コールド・プレイ、ジョンメイヤー、ジェイムス・
CLA Effects
Waves Artist Signature Seriesは、世界のトッププロデューサー、エンジニアとのコラボレーションにより生まれた目的別プロセッサーシリーズです。全てのSignatureシリーズプラグインは、アーティストの個性的なサウ
CLA Vocals
Waves Artist Signature Seriesは、世界のトッププロデューサー、エンジニアとのコラボレーションにより生まれた目的別プロセッサーシリーズです。全てのSignatureシリーズプラグインは、アーティストの個性的なサウ
Clarity Vx Pro
Clarity Vx Proは声専用のリアルタイムノイズリダクションです。Waves Neural Networks®を搭載し、複数のノイズ除去タスクを1度に実行。一瞬の分析でダイアログをアンビエンスから分離し、わずかな作業時間で、ノイ
Eddie Kramer Bass Channel
Eddie Kramer、ベースチャンネルを語る: 「Eddie Kramer Bass Channelの背後にあるアイデアは、威圧的にならず切り裂くような、プレゼンスたっぷりのファットベースを作り上げるということ。一般的に中低域に特徴を
H-EQ
H-EQは、とてもパワフルなハイブリッドEQです。優れた英国・米国製のコンソールを彷彿とさせる、ヴィンテージ、モダン、そしてデジタルEQ7種類を惜しみなく投入。新たに開発された、左右非対称カーブ設定の可能なベ