WAVES Lシリーズ8モデルを完全解説!用途で選ぶ理想的な音作り
1992年に創業したWAVESが最初期に開発したマキシマイザー「WAVES L1」。その登場は、デジタルオーディオにおける革命的な出来事のひとつと言っても過言ではありません。音楽をはじめ、ゲーム、放送、映画など、さまざまな分野で爆発的にヒットしました。
2025.01.31
L1の特長は、スレッショルドを下げるだけというシンプルな操作で、デジタルオーディオで避けなければならないクリッピングを回避しながら音圧を増加させ、さらにデジタルクオンタイズ(ビット解像度の最適化)を行ってくれる点です。この手軽で強力な性能が、音圧戦争の火付け役となったとも言われています。L1はその後も進化を続け、現在では8種類ものLシリーズがラインナップされており、プロの現場でも広く使われています。
- L1 Ultramaximizer
- L1 Ultramaximizer+
- L2 Ultramaximizer
- L3 Multimaximizer
- L3 Ultramaximizer
- L3-LL Multimaximizer
- L3-LL Ultramaximizer
- L3-16 Multimaximizer
これだけLシリーズが存在すると、どれを選べば良いのか迷ってしまう方も多いかと思います。そこで、各プラグインの特徴をまとめましたのでぜひご参考にしてください。Lシリーズをすでにお持ちの方であれば、それぞれのプラグインの特徴を理解することによって、制作効率やミックスのクオリティを大きく向上させることができるでしょう。
L1 Ultramaximizer、L1 Ultramaximizer+ - 独特の歪み感が現代でも人気
L1は、後継のL2やL3と比べるとわずかに歪みが感じられます。そのためハイビット・ハイサンプリングレートが主流となった現在では、マスターチャンネルで使用される機会は減少しました。しかし、その独特の歪み感を気に入っているユーザーは多く、特にドラムやベースのバスミックス、または荒々しさを加えたいシーンでは今でも広く愛用されています。
L1 Ultramaximizer+は、L1 Ultramaximizerにいくつかの新機能が追加されたバージョンです。インプットレベル調整、QUANTIZE、DITHER、SHAPING、DOMAIN設定が含まれており、L1 Ultramaximizerを購入するとこちらもセットで手に入れることができます。
L2 Ultramaximizer - Lシリーズの中で最も自然でスムーズなリミッティング
L1とL2はともに「ワイドバンドリミッター」と呼ばれ、音楽の全周波数帯域を均等に処理するため、原音の周波数バランスが崩れにくいのが特徴です。L2 は L1 よりも進化したアルゴリズムを採用しており、音の歪みを最小限に抑え、ミックスのバランスを損なわない透明でクリアな処理を実現しています。
L2の心臓部には、WAVES独自開発のブリックウォールタイプの先読みピークリミッターアルゴリズムが搭載されています。さらに、9段階のノイズシェイプWaves IDR (Increased Digital Resolution) ディザリングテクノロジーも内蔵されており、音質の向上を図っています。これにより、マスタリングやミキシング、レコーディングに最適な処理が可能である一方で、極端なリミッティングや、ビンテージなダイナミクス処理としても非常に高い能力を誇ります。L2は、Lシリーズの中でも最も自然でスムーズなリミッティングを提供し、低レイテンシーで動作するため、L1と同様に個別トラックやグループの処理にもお勧めです。
L3 - 5バンド・マルチバンドマキシマイザー
L3 Multimaximizer
L1 や L2 のように全周波数帯域を一括で処理するのではなく、最大5つの周波数帯域を個別に処理するマルチバンド・マキシマイザーです。
シンプルな操作体系はそのままに、WAVESの最新技術であるリニア・フェーズ・クロスオーバー技術とピーク・リミッティング・ミキサー技術を統合することで、サウンドのキャラクターまでコントロールできるようになりました。特に、プライオリティコントロール機能により、リミッターをかける対象となるオーディオの部分を細かく設定でき、重要な帯域を維持したままリミッティングを行うことができます。
各周波数帯域には、ゲインやブーストコントロールが備わっており、実質的に5バンドEQとしても機能します。また、リリースコントロールは各バンドごとに個別に設定可能です。さらに、プロファイル機能が搭載されており、多彩なサウンドキャラクターをマスターに付与できるだけでなく、クリアなサウンドから極限まで追い込むリミッティングにも対応できる柔軟性を持っています。
L3 Ultramaximizer
一見シングルバンドのように見えますが、内部ではL3 Multimaximizerと同じく5バンド処理を採用しており、L2と同様にシンプルな操作性を実現しています。プリセットを選ぶ時短アプローチがお好みの方にお勧めです。
L3-LL Multimaximizer、L3-LL Ultramaximizer - L3のローレイテンシー(LL)モデル
L3モデルのリニアフェイズクロスオーバーは、かなりのレイテンシーを伴うため、L3 MultimaximizerとL3 Ultramaximizerには、ローレイテンシー(LL)モデルが用意されています。L3-LLモデルはCPU負荷が軽いという特長があり、トラックごとのマキシマイズに最適です。
通常のL3では、ルックアヘッドやリニアフェイズ技術が使用されており(LLモデルにはその簡易版が搭載されています)、そのためレイテンシーは非常に大きいものの、スイートな高域やパンチのある低域を得ることができます。そのため、L3 と L3-LLを同じ設定で使用しても、処理後のサウンドに違いが生まれるのです。
L3-16 Multimaximizer - 脅威の16バンドピークリミッター
L3をさらに進化させた、Lシリーズの最高峰の製品です。6バンドEQのようなシンプルな操作性でありながら、16バンドという複雑な処理を可能にした、最も強力で最新のモデルです。
マルチバンド・リミッティングを活用することで、全体のダイナミクスやバランスを崩すことなく音量を増加させることができます。例えば、スネアドラムのピークだけが多い曲の場合、マルチバンドリミッターを使用すれば、スネアの周波数帯だけをリミッティングすることが可能です。楽曲のミックスバランスを崩さずに、クリアーに音圧を上げるのには最も適したプラグインです。
※「L3-16 Multimaximizer」を購入するとL3シリーズ5製品が全て手に入ります。
まとめ
WAVESマキシマイザー8製品の特徴をまとめます。
- L1 Ultramaximizer、L1 Ultramaximizer+ → 荒々しさを出したい音源におすすめ
- L2 Ultramaximizer → シングルバンドの自然でスムーズなリミッティングを実現
- L3 Multimaximizer、Ultramaximizer → マルチバンド・リミッティングでオールマイティな音作りが可能
- L3-LL Multimaximizer、L3-LL Ultramaximizer → L3アルゴリズムの、簡易版ローレイテンシー(LL)モデル
- L3-16 Multimaximizer → ミックスバランスを崩さずに音圧を上げられる、Lシリーズの最高峰
- L1 Ultramaximizer(L1 Ultramaximizer を購入すると、L1 Ultramaximizer+が付属します)
- L1 Ultramaximizer
- L1 Ultramaximizer+
- L3-16 Multimaximizer(L3-16 Multimaximizerを購入すると、L3シリーズ5製品が全て付属します)
- L3 Multimaximizer
- L3 Ultramaximizer
- L3-LL Multimaximizer
- L3-LL Ultramaximizer
- L3-16 Multimaximizer
Lシリーズは8製品ありますが、L1とL3はそれぞれバンドルされてお買い得になっています。
あなたの用途に合わせて、お好みのLシリーズをぜひご活用ください!
プロモーション
人気記事
リズム隊のミックスTips! – Vol 4 タム&トップマイク編
ここまでキック、スネア、ハイハットと来ました「リズム隊のミックスTips」。本日はタム編とトップマイク編。いずれもドラム音源にBFD3を使用していますが、他のドラム音源や実際のドラムレコーディングでも参考にな
クリエイティブなエフェクトって?
スタッフHです。少し前、とあるエンジニアさんにインタビュー用でスタジオを訪問させていただいた時に、大変興味深いお話を聞かせていただくことができました。
これさえあればボーカルは完璧、なツールボックス「Vocal Production」
ボーカル処理は多くの方の悩みのタネ WAVESは現在220種以上のプラグインを取り揃えていますが、その中で最も人気があるのはボーカル処理に関わるツール。お問い合わせでも「ボーカル処理に使いたいのですが、
CLA-2A vs. CLA-3A クラシックコンプレッサーの違い
LA-2AとLA-3Aは、最も有名なコンプレッサーと言っても過言ではないでしょう。これまでボーカルやベースなどの楽器に長く愛されてきました。今回は「真空管モデル」と「ソリッドステートモデル」の比較。あなたのトラ
リズム隊のミックスTips! – Vol.6 ベース編
続々更新中のリズム隊のミックスTips!。前回までの更新でドラム編が終わり、今回はドラムの相棒・ベース編となります。
Compressor vs Transient Shaper - 使い分けを極めるTips
コンプレッサーとトランジェントシェイパーは、ともにトランジェント素材を制御し、音響的なインパクトを与えるために使用されます。それぞれのプロセッサーの違いを学び、どのタイミングでどちらを使用すべきかをみ
人気製品
Abbey Road RS124 Compressor
まさにアビー・ロード・スタジオで行われた、ビートルズの全てのレコーディングで聴けるトーンを。2つの異なる「フレーバー」を選択できるこのクラシックな真空管コンプレッサープラグインは、アビー・ロード・スタ
API 560
ブースト/カット量でQ幅を自動調整するAPI独自のプロポーショナルEQを搭載、精密な処理とアナログ感を兼ね備えたグラフィックEQ
Berzerk Distortion
ワイルド、クレイジー、クリエイティブなディストーションのための強力なプラグイン。全10種類オリジナルのディストーション波形、アドバンスドフィードバック、ピッチ、ダイナミクス、サイドチェイン、M/Sプロセッ
CLA-76
CLA-76 Blacky / Bluey は、60年代半ばに発売されたクラスAラインレベルリミッターアンプの異なる2つのバージョンにインスパイアされています。"Blacky"と"Bluey"の両バージョンも、オリジナル機と同様にスタジ
CLA Drums
Waves Artist Signature Seriesは、世界のトッププロデューサー、エンジニアとのコラボレーションにより生まれた目的別プロセッサーシリーズです。全てのSignatureシリーズプラグインは、アーティストの個性的なサウ
Codex Wavetable Synth
Waves Codexは、グラニュラー・ウェーブテーブル・シンセシス・エンジンを基本とする最先端のポリフォニック・シンセサイザーで、Wavesのバーチャル・ボルテージ・テクノロジーを採用、VCF、VCA などを搭載する実際
Doppler
ドップラー効果だけでなく周波数、速度、音源からの距離をピンポイントの正確さでコントロール。
DeBreath
シンガーは、たとえテイクが台無しになってしまおうともブレス(息継ぎ)で主張をするものです。DeBreathを使えば、そんなブレスをエンジニア好みに軽減、あるいは除去することができます。つまり、シンガーはエンジ