【導入事例】スタジアムを熱狂させるサウンドの裏側:ライアン・カストロを支えるFOHエンジニアとWaves「LV1 Classic」
Ryan Castroのスタジアム公演を支えた音響システム「Waves LV1 Classic」の導入事例。FOHエンジニアのミキシング哲学や、4台体制による大規模ライブ運用の全貌を解説します。
2026.08.21
米国テネシー州ノックスビル、2026年6月29日 — Ryan Castro(ライアン・カストロ)のアルバム『Sendé』ツアーチームが、彼の地元であるコロンビア・メデジンのアタナシオ・ヒラルド・スタジアム公演に臨んだ際、音響チームの選択は「単にミキシングコンソールを用意する」という枠に留まるものではありませんでした。彼らが持ち込んだのは、計4台ものWaves LV1 Classic。FOH(会場音響)、メインモニター、ゲスト用モニター、さらには別会場へのライブ配信フィード用にそれぞれ1台ずつ配備する緻密なシステムです。さらにライアン本人をはじめ、バンド、バックボーカル、ダンサー、プレイバック用のインイヤーモニター(IEM)ミックスには、Waves eMo IEMが全面的に導入されました。
圧巻だったのはモニター環境です。LV1 Classicの最大構成である80-Channel Expansion(最大160インプット)を稼働させ、バンドやダンサー、ゲスト出演者、さらにはワイヤレスマイク、アンビエントマイク、インカムに至るまで、巨大スタジアムライブの全入力をわずか1台のサーフェス上で完璧にコントロール。通常のツアーではFOHとモニターで各1台・計2台の体制ですが、今回は豪華なゲスト出演や他会場への同時配信など、故郷での大規模スタジアム公演ならではの高い要求に応えるべく、一挙にシステムをスケールアップさせました。
メデジンの音響システム設計から、ラテンアーバンの頂点を支えるFOHエンジニアへ
この壮大なプロダクションの中心、FOHデスクで腕を振るったのが、Awoo Team音響部の責任者であり、2021年からRyan CastroのFOHエンジニアを務めるRobinson Barrera(ロビンソン・バレラ)です。バレラとWaves LV1プラットフォームの付き合いは10年以上に及びます。Karol G(キャロルG)のツアーに参画していた2016年、LV1の登場と同時に初代モジュール型を導入。そして一体型のLV1 Classicがリリースされると、すぐさまその最新システムへと乗り換えました。
「素晴らしいラテンアーバンミックスとは、ただ音がデカいミックスのことではありません。まずはボーカルを一番に据え、そこを軸に全体の絶妙なサウンドバランスを作り上げていくのです。」
— Robinson Barrera
バレラのエンジニア人生は、地元コロンビア・メデジンのオーディオ会社から始まりました。数々の大型国際公演を手掛けながら、当初はシステム設計やPAチューニングを担当していましたが、現場を重ねるうちに自ずとFOHエンジニアの魅力へ引き込まれていきます。彼が手掛けたローカルバンドが世界へと羽ばたくと同時に彼自身も進化を遂げ、2011年にはReykon(レイコン)の現場へ、同年末にはMaluma(マルーマ)のFOHエンジニアに抜擢され、3年間にわたり世界中を巡りました。
2014年にはPiso 21(ピソ 21)でFOHとモニターを兼任、同年後半からはKarol Gのチームへ加入します。2016年、Karol GのPAシステムにLV1が採用されたことで、彼とLV1の長い歴史が始まりました。1台のLV1でFOHとモニターを同時に兼任した3年間、専任FOHとしての2年間を経て、2019年末からはモニターエンジニアへと役割を変え(2026年5月まで兼任)、その実績を買われて2021年12月にRyan Castroのクルーへと招聘されたのです。
以来、彼はRyan Castroの音を第一線で支え続けています。長年使い倒してきた初代モジュール型LV1から、一体型LV1 Classicへの移行にも迷いはありませんでした。
「このポジションは非常に大きな責任を伴います。しかし、こうしてコロンビアから世界へ飛び立つ素晴らしいシンガーたちの挑戦に再び伴走できることに、心からワクワクしています。現代的なジャンルが求めるサウンドの『ツボ』を知り尽くしているからこそ、ライアンが毎晩観客に届けたい想いを、ダイレクトに音として形にできるのです。」
— Robinson Barrera
ボーカルは前面に、低音の輪郭は明確に、そして聴き疲れしない中高域
Ryan Castroの楽曲を象徴するのは、一度聴いたら忘れられない存在感のあるボーカルと、ラテンアーバンに欠かせないディープで躍動感あふれる低音域です。バレラのミキシング哲学もまた、この2つの要素をいかに際立たせるかを中心に構築されています。
「ボーカルは耳障りにならない絶妙なラインを見極めつつ、力強く前面に押し出すこと。低音域はただ鳴らすだけでなく、質が高くくっきりと鮮明な輪郭を持たせること。そして2時間以上の長丁場でも、中高域で観客の耳を疲れさせないこと。何より大切なのは、アーティストが音に込めた想いを正確に汲み取り、観客がアーティストとの最高の一体感を胸に会場を後にできるようにすることです。」
— Robinson Barrera
「ライブサウンド」に対する彼のスタンスには、プロとしての強いこだわりが宿ります。
「最近の音響業界では、音源(CD)と寸分狂わぬ音を再現することに心血を注ぐエンジニアもいます。それも一つの考え方ですが、私はライブ音響を通じて観客にその日限りの『物語』を伝えたい。完璧であること以上に、音が『生きている(alive)』と感じられることの方が重要なのです。観客はレコードの追体験ではなく、ライブでしか味わえない生の感動を求めて会場へ足を運んでいるのですから。」
— Robinson Barrera
次のステージで最高のパフォーマンスを発揮するため、バレラはツアーの合間でも自宅でLV1 Classicを立ち上げ、週に最低4回は本番さながらのシミュレーションを重ねています。
Photo by Daniel Diaz
FOH構成の裏側と、圧倒的なセットアップスピード・信頼性
標準的な『Sendé』ツアーのPAシステムは、メインL/R、サブウーファー、フロントフィルで構成され、すべてLV1 Classicのマトリックス機能を経由してルーティングとタイムアライメントが行われます。ツアー先でどんなブランドのPAシステムと対峙しようとも、バレラは慣れ親しんだWaves TRACT System Calibrationを用いて瞬時にチューニングを完了させます。
「LV1に備わっている多彩なツールのおかげで、会場ごとに全く異なる音響環境であっても、常にブレない一貫性と力強さを維持できます。」
— Robinson Barrera
一貫性と並んで、過酷なツアー現場で命取りとなるのが「スピード」です。LV1 Classicをシステムの心臓部に据えることで、バレラは現場に到着してからわずか30分ほどで本番可能な状態を作り上げます。
「LV1 Classicの抜群の扱いやすさとセッティング速度のおかげで、20〜30分のセットアップと簡単なラインチェックだけで自信を持って本番に臨めます。そして何より、このシステムの信頼性は折り紙付きです。この3年間、システムトラブルなどの不具合には一度も遭遇したことがありません。」
— Robinson Barrera
システム拡張:アタナシオ・ヒラルド・スタジアムを支えたLV1 Classic 4台体制
通常ツアーの基本構成はFOH用とモニター用の2台ですが、コロンビア・メデジンのアタナシオ・ヒラルド・スタジアムで行われた地元公演のような大規模ショーではシステムを4台へと拡張。各コンソールに明確な役割を担わせました。
- FOH(会場音響):バレラ自身が操作し、アリーナ全体を包み込むメインミックスを構築。
- モニター:メインアーティストのIEMミックスをはじめ、バンド、ダンサー、インカム系統をコントロール。
- ゲスト用モニター:深夜帯に次々と登場するゲストアーティストおよびゲストバンド専用のデスク。
- ブロードキャスト(配信):市内別会場(Feria de Ganado)へのライブ配信、ストリーミング、多系統録音用の個別ミックスを担当。
4台のコンソールはスター型トポロジーで強固に接続され、各デスクには内部サーバーに加えてバックアップ用のWaves SoundGrid Extreme Server-Cを配備。この設計により各コンソールが独立して電源投入や処理を行えるため、万が一ネットワークの一部に障害が発生しても、システム全体が停止することのない極めて高い堅牢性を実現しました。
モニター環境は、80-Channel Expansion(160インプット)で動作する1台のLV1 Classicを軸に、3台のShure AD4Qワイヤレス受信機(12チャンネル)、IEM送信用のShure ADTQ、シーケンス再生用のDirectOut Technologies EXBOX.MD、そしてDante用のHear Technologies WSG Bridge(SoundGrid↔︎Dante変換装置)を中心に構築されています。
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さらにアタナシオ・ヒラルド公演では、ゲスト用ワイヤレスマイク(Shure製)と、2台のDSPro StageGrid 4000(ステージボックス)を追加投入。1台はゲストバンド(パーカッション、ギター、ベース、キーボード)のモニター用としてステージ上に、もう1台はインカムの入出力やプロダクションへのSMPTE分配用としてFOH側に配置されました。
ライアン本人、バックボーカル、キーボード、ダンサー、プレイバックを含むプロダクション全体のIEMミックスには、SoundGridベースのミキシングエンジンWaves eMo IEMを採用。SoundGridネットワーク上で稼働するLV1 Classicから直接、音響チームが演者一人ひとりに合わせた臨場感溢れる立体的なモニターミックスを提供しました。
「eMo IEMのおかげで、すべての演目に対して素晴らしい立体感と圧倒的な明瞭度を再現することができました。」
— Robinson Barrera
強固なチームワークが支える最高のステージ
バレラは、共にこの巨大なステージを創り上げたエンジニア仲間への感謝と敬意も忘れません。メインモニターを担当したのは、Felipe Peláez、Karol G、Don Toliverなどを手掛けてきたメデジン出身のFelipe Montoya(フェリペ・モントーヤ)。彼は複雑を極めるワイヤレス周波数の調整からネットワーク管理、モニターミキシング、インカム運用までを統括しました。
さらに今回のスペシャル公演において、ゲスト用モニターは「新世代を代表する才能」David Parra(ダビド・パラ)が担当。配信ミックスは、バレラが「親友であり、まさにレジェンド」と信頼を置くRoberto Almodóvar(ロベルト・アルモドバル)が完璧に仕上げました。

Photo by Daniel Diaz
なぜ LV1 Classic なのか
バレラにとって、LV1 Classicを選ぶ理由は非常にシンプルです。毎晩のツアーの成功そのものが、その正しさを証明しているからです。会場も都市も変わる環境の中で、ボーカルの存在感と力強い低音が勝負となるステージを、常に最高レベルで成立させてきた実績があるからにほかなりません。
「パンチの効いたサウンドと、誰もが羨むようなミックスを作るうえで、これほど実用的でメリットの多いコンソールは他にありません。驚くべき設営の早さと柔軟性をもたらし、エンジニア自身の独自の音作りや個性を存分に反映させてくれます。」
— Robinson Barrera
他エンジニアにLV1 Classicを強く薦める理由として、彼は「思考を妨げない直感的なワークフロー」「コンソール内部に統合されたプラグイン処理サーバー」、そして「一発勝負のツアー環境で3年間ノントラブルで動き続けている絶対的な安定性」を挙げています。
未来のステージへ向かって
熱狂の『Sendé』ツアーは、このあとも中米、そして全米へと続いていきます。10月には、ボゴタのEl Campín Stadium(エル・カンピン・スタジアム)で開催される特別な360度ステージ公演のため、Ryan Castroは再びコロンビアへ帰還する予定であり、バレラとAwoo Teamもすでにその大舞台に向けた準備を進めています。
どれほどスケールが大きくなろうとも、軸にあるのは2016年に彼がLV1と出会った時から変わらないミキシング原則「ボーカルは前面に、低音の輪郭は明確に、聴き疲れしない中高域」です。エル・カンピン・スタジアムをはじめ、どんな会場であれ最高のライブサウンドが求められる瞬間、LV1 Classicはいつでもその要求に応え、フレキシブルに拡張する準備ができています。

Photo by Daniel Diaz
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