【導入事例】アイアン・メイデンのワールドツアーを支える音響技術
アイアン・メイデンのライブを支えるプロが明かす、Wavesを使った強固なシステムとサウンドメイク術。
2026.08.31
アイアン・メイデン(Iron Maiden)のFOH(フロント・オブ・ハウス)エンジニアを10年近く務めるケン・“プーチ”・ヴァン・ドルーテン氏。彼はツアーにおけるワークフローの要として、長年「Waves SuperRack SoundGrid」とWavesのプラグインに絶大な信頼を寄せてきました。
そして今年、彼はこの強固なシステムをさらに発展させるため、新たに「Waves SuperRack LiveBox Dante」を導入しました。これにより、世界最大規模のツアーに不可欠な「絶対的な安定性」を維持したまま、愛用するWavesのプラグインと他社製のVST3プラグインを同時に使用できる、理想的な環境を構築したのです。
プロとして最重視する「一貫性」
ヴァン・ドルーテン氏がライブサウンドにおいて何よりも重視しているのが「一貫性」です。アイアン・メイデンのワールドツアーでは、アリーナから屋外スタジアムまで、会場ごとに音響特性が大きく変わります。しかし、毎晩集まる数万人ものファンは、どの会場であろうと同じクオリティのショーを期待しています。
「エンジニアの使命とは、壁面が硬く反響の多い会場など、日々変わる過酷な条件下でも、常に均一なクオリティのライブを提供することです。いかなる状況でも観客に同じ音を届けられることこそが、世界クラスのプロフェッショナルたる所以なのです」
— ケン・“プーチ”・ヴァン・ドルーテン
こうした経験から、彼は機材選びに極めて厳格な基準を設けています。
「音源制作とは違い、ライブ中に機材が壊れると致命的なトラブルに直ちにつながります。だからこそ私たちは、故障せず、常に安定して動作し続けてくれる機材の選定に膨大な時間を費やしているのです」
— ケン・“プーチ”・ヴァン・ドルーテン
柔軟性を生み出した「独立したシステム設計」
現在、彼のアイアン・メイデン用のセットアップは「DiGiCo Quantum 7」コンソールと「Waves SuperRack SoundGrid」を核に構築されています。9年間にわたり彼のミックスを支えてきたSuperRack SoundGridに、今年は「Waves SuperRack LiveBox Dante」が追加されました。
Waves LiveBoxは既存のシステムを置き換えるのではなく、拡張するために導入されました。SuperRack SoundGridは、ボーカルのダイナミクスやトーンの調整、ベースの音色調整、グループバス、そしてショー全体にわたる重要なチャンネルに至るまで、彼のミックス手法の根幹を支えるWavesプラグインのホストアプリケーションとして機能しています。一方、Waves LiveBoxは他社メーカーのVST3プラグインを同じSoundGrid環境内に組み込むことを可能にし、SuperRack SoundGridのホストPCやSoundGrid⇆Dante変換として機能しています。
「SuperRack SoundGridは、アウトボード・プラグインやバス、個々のインプットなど、私のプラグイン処理のほぼすべてを担っています。」
「そしてWaves LiveBox Danteは完全に独立したネットワーク上で稼働しています。Waves LiveBox Danteはすべてのネットワーク処理が内部で完了するオールインワンユニットですが、出力はDanteです。そのため、コンソール本体裏面にあるDanteI/O拡張カードにDante接続しています。つまり、二つの独立したネットワークが走り、完全に異なるタスクを実行しているのです。」
— ケン・“プーチ”・ヴァン・ドルーテン
この柔軟なシステム構成を求めた最大の理由は、Alpha Labs社の『DeFeedback』という他社製プラグインを使うためでした。アイアン・メイデンのステージには左右に張り出した花道があり、ボーカルのブルース・ディッキンソンがPAスピーカーのほぼ真ん前に立つ場面が多々あります。ここは非常にハウリングが起きやすい危険なポイントですが、LiveBoxとDeFeedbackの組み合わせにより、この問題が劇的に改善されました。
「まさにゲームチェンジャーでした。Waves LiveBoxの処理能力がなければ、これほど多くのDeFeedbackを立ち上げることはできません。このシステム構築は、私にとって極めて重要だったのです」
— ケン・“プーチ”・ヴァン・ドルーテン
ブルース・ディッキンソンのボーカル・サウンドメイク
ブルース・ディッキンソンのボーカルは、ヴァン・ドルーテン氏が長年かけて緻密に作り上げたWavesプラグインのチェーンによって処理されています。
ボーカル全体のコンプレッションのみを専任で担当しています。
F6はピンポイントなコンプレッションや極めて狭い帯域のフィルター処理に使用。ブルースが腹式発声から胸声へ移行する際の声質変化を的確にコントロールします。
これがベースとなるメインEQです。
メインのハウリング対策はDeFeedbackに任せていますが、ブルースがスピーカーの至近距離に立った際の突発的なハウリングを瞬時に抑え込むための「最終兵器」として待機させています。
チェーンの最後に配置し、全体を2dBほど軽くコンプレッションして緩やかにまとめます。
スティーヴ・ハリスの強烈なベース・サウンドメイク
アイアン・メイデンの代名詞とも言えるスティーヴ・ハリスの存在感あるベースサウンドも、Wavesによって形作られています。ベースのDI回線には、以下のようなアプローチをとっています。
全体的なコンプレッションを担当。ベースのアタック感を活かすため、アタックタイムは遅めに設定しています。
DI信号自体に不足している超低域の成分を疑似的に創出し、豊かなローエンドを補強します。
倍音を付加します。「倍音歪みを使うと、他の方法では得られない形でミックスを前面に押し出すことができます」と彼はその効果を強調します。
個別チャンネルの最終段で、全体のバランスを整えるコンプレッションを行います。
さらにベースのグループバスでも、音場の広がりとEQ効果をもたらすWaves Vitamin Sonic Enhancerを筆頭に、CLA-2A、そして2つのF6を用いた別チェーンが組まれています。これにより、彼が激しく弾いた時も優しく弾いた時も、アンサンブルの中でベースの音量が常に安定するようにコントロールしているのです。
エンジニアとしてのやりがいと情熱
今年1月に導入されてから約6ヶ月間、Waves LiveBoxはその過酷なツアー環境で高い安定性を証明し続けています。「一貫性の高さは本当に素晴らしく、私にとって最も重要なポイントをクリアしてくれています」と彼は高く評価しています。
ヴァン・ドルーテン氏は、自身の仕事への情熱をこう締めくくりました。
「私は自分の仕事が大好きです。ギターソロに合わせて音量を押し上げた瞬間、8万人もの観客が私のミックスに反応して熱狂する。あの感覚に勝るものはありません。ミュージシャンがステージで味わう高揚感とまったく同じものを、私もエンジニア席で感じているのです。鳥肌が立つほどの感動があるからこそ、私はこの過酷な現場を愛し、情熱を注ぎ続けているのです」
— ケン・“プーチ”・ヴァン・ドルーテン
関連製品・システム

eMo IEM

eMotion LV1 Classic
eMotion LV1 Classicは業界で実証済みのWaves LV1 ミキサーのエンジンのクオリティーを受け継ぎ、その優位性を世界中のライブサウンド・エンジニアに好まれるコンソールの形状とワークフローで提供します。

eMotion LV1 80-Channel Expansion
オプションのソフトウェア拡張「eMotion LV1 80-Channel Expansion」を追加することで、お使いのLV1コンソール(LV1 ClassicまたはLV1 64-channel software license)を、最大80ステレオチャンネル/160インプット、

eMotion LV1 Control
LV1 Controlは、eMotion LV1 Classicデジタル・ミキシングコンソール用のフェーダー拡張ユニットとして設計されたプレミアムなコントロールサーフェスです。モジュラー式のeMotion LV1システムのフェーダーバンクと

IONIC 16
IONIC 16は、パンチがありかつ明瞭度に優れ、卓越したサウンドクオリティーを提供するステー ジ・ボックスです。Waves製の16系統の完全ディスクリート・プリアンプ、12系統のラインアウ ト、eMotion LV1ミキサ

IONIC 24
IONIC 24は、パンチがありかつ明瞭度に優れ、卓越したサウンドクオリティーを提供するステージ・ボックスです。Waves製の24系統の完全ディスクリート・プリアンプ、18系統のラインアウ ト、eMotion LV1ミキサーに

SoundGrid Extreme Server-C(X9):生産終了
第10世代 Intel® Core™ CPU、洗練されたデザイン、新機能を備えたこのパワフルかつコンパクトなDSPユニットは、ライブやスタジオで数百のSoundGrid対応プラグインをリアルタイムに処理することが可能です。

Titan Server (X14)
Waves史上最もパワフルなサーバーであるTitanは、何百ものWavesプラグインを低レイテンシーで処理し、あなたのミックスをスーパーチャージします。

Titan-R Server (X14)
Waves最強のサーバー、Titan-Rは大規模なプラグイン処理タスクのための最もパワフルな選択肢です。新しいGen 14 CPUを搭載したTitanの最新モデルは、以前のGen 10 CPUバージョン(x10)と比べると、リアルタイムのプ
最新記事

シンプル、そして実用的なプラグイン
ミックスは、難しい専門知識がなくても大丈夫です。この記事では、あれこれ悩まなくても、ミックスにすぐ「クリアさ・パワー・面白さ」を足してくれる7つのプラグインを紹介します。

FMシンセシス:リチャード・ディヴァインの音作り・サウンドデザイン手法
エレクトロニック・アーティストでありサウンドデザイナーでもあるリチャード・ディヴァイン(Richard Devine)氏が、音楽制作やサウンドデザインにおけるシンセサイザーの音作り(サウンドデザイン)手法について語

ローエンドのミキシングについて
ローエンド(低音域)のミックスは、少し特殊な作業です。低音は耳で「聴く」というよりも体で「感じる」要素が強いため、適切にコントロールするには特別なスキルが求められます。また、低音域はミックス全体の土台

マスタリングってなに?そして何が必要?
音楽制作の最終段階であるマスタリングを理解し、正しい手順を踏むことが、プロフェッショナルでリリース可能なクオリティを追求する上でどのような違いを生み出すのかを学びましょう。

【導入事例】Bruno MarsのFOHエンジニア Sean “Sully” Sullivan、Waves LiveBoxをツアーで運用
Bruno Mars「The Romantic Tour」を支えるFOHエンジニア Sean “Sully” Sullivan。Avid S6LとWaves LiveBoxを組み合わせ、Waves以外のサードパーティ製プラグインもライブ環境で安定運用。

【導入事例】Garbage(ガービッジ)とFOHエンジニア David GauméがWaves LV1 Classicとともに2026年ヨーロッパツアーを敢行
長年Wavesプロセッシングを中心にライブミックスを構築してきたFOHエンジニア David Gaumé(デイヴィッド・ゴーメ)。そのワークフローをWaves LV1 Classicへ集約し、コンパクトかつ一貫したライブミックス環境を実
人気製品

Waves Free Plugin Pack
Wavesから、サウンドをワンランク引き上げる強力な無料プラグインパックが登場!アナログサチュレーション、ビンテージEQ&コンプ、IRリバーブからFMシンセまで、ハイエンドな即戦力ツールを収録。

Tracks Live 2.0

TRACT SPL Meter

Axis Scope (X15)
Axis Scopeはライブサウンド、放送、スタジオのための信頼できるソリューションです。eMotion LV1やSuperRackといったSoundGridホストアプリケーションを動かすために最適化されています。

Extreme-C SoundGrid Server (x15)
第10世代 Intel® Core™ CPU、洗練されたデザイン、新機能を備えたこのパワフルかつコンパクトなDSPユニットは、ライブやスタジオで数百のSoundGrid対応プラグインをリアルタイムに処理することが可能です。

TRACT System Calibration
バランスの良いミックスには、まずそのベースとなる適切にチューニングされたPAシステムが必要です。TRACT System Calibrationは、あらゆるPAシステムを、素早く簡単にチューニングするためのプラグインです。Ration

ATLAS REVERB
Atlas Reverbは、Wavesが新たに開発したプレミアム・アルゴリズミック・リバーブです。

StudioVerse Mix Unlock
StudioVerseは、オーディオ&インストゥルメントチェーン用のオンライン・プリセット・ライブラリです。StudioVerse Mix UnlockはDAW内でリアルタイムに動作し、完成済みのミックス、サンプル、ループ素材を瞬時に解





