EDM制作に使ってほしいプラグインバンドル
世界トップのDJ/プロデューサーがチョイスしたWAVES EMP Toolboxシリーズ
2020.01.01
スタッフHです。
WAVESプラグインは今や170近い数にのぼり、それらを目的やグレードによっていくつかまとめたものを、バンドルと言います。
例えば先日ご紹介したばかりの「マスタリングに特化した」Grand Masters Collection。これはマスタリング処理に使ってほしい12個のプラグインを収録。「ビンテージハードウェアのモデリングに特化した」Studio Classics Collectionsには、API社と共同開発のEQ/Comp、SSLと共同開発のチャンネルストリップ、EQ、バスコンプ。そしてNEVEサウンドを再現するV-Comp/V-EQを収録。
他にもGoldやPlatinumなどの(ちょっと名前から中身が推測しにくい)バンドルがありますが、これらはベーシックなチャンネル処理のEQ、コンプから、マスターチャンネルまでの処理ができる一通りのプラグインを幅広く収録。など。
もちろん収録されているプラグインがドンズバで欲しいものばかりを収録していたとしたら、バンドルの名前に左右されずに使って頂ければOKかと思います。
ところでちょっと話は脱線しますが...
上司からWAVESのEMP Toolboxというシリーズをこのブログで紹介するようにとの指令をうけました。
EMP。Electric Music Productionから付いたバンドル名で、世界トップレベルのDJ/プロデューサーが「オレの制作にこのWAVESプラグインは絶対に外せないぜ」というものを集めた(こんな言い回しかどうかはわかりませんが)もの。現在3バンドルがリリースされています。
しかし私スタッフH。毎週末はクラブで音楽三昧だよー的な生活をしているわけでもなく、金曜の夜はそそくさと自宅に帰り、番茶をすするような生活をしているので、ここはひとつ当社きっての音楽リア充、オンラインストア担当のスタッフミヤホンに解説をお願いすることにしました。
スタッフH:ミヤホンさん、ではWAVESからリリースされているEMP Toolboxの3製品に関わったそれぞれのDJと、その中身について、教えてください。
Dave Clarke EMP Toolbox
ミヤホン:テクノフリークなら誰もが、太くて密度の高い、存在感のあるサウンドを求めるものかと思います。クラブという空間は音を「聴く」だけでなく「体感」することも醍醐味の1つですからね。
テクノシーンを長い間牽引してきた、まさにテクノ界のドンともいえるデイブ・クラーク。彼が普段の制作で使用するWAVESプラグインを集めたDave Clarke EMP Toolboxには、「どんなに繰り返しても飽きることのない、ループ・ミュージックへ陶酔すること」の美学が詰まっているように感じます。
デイブ・クラークはイギリス出身のDJ/プロデューサーで、派手な展開と対極といえる極限まで音数を減らしたスタイルで、当時アシッドハウス全盛のクラブシーンに大きな衝撃と変化をもらたした人です。
StressやR&Sのほか、アシッドハウス的解釈を昇華させてビッグ・ビートの一時代を築いたSkint Recordsをはじめとした名門レーベルから作品をリリースしています。ちなみにSkint Recordsは日本でも人気の高いファットボーイ・スリムがデビューシングルをリリースしたレーベルとしても有名ですね。
極限まで削ぎ落としたアレンジを得意とするためか、Aphex Vintage Aural ExciterやAPI 560、Scheps 73、Kramer Master Tapeなど、ビンテージ機器を高いクオリティでモデリングしたプラグインの収録に個性を感じますね。
その他、クラブで再生されるための濃密なローエンドマネージメントとしてLoAir、モジュレーションエフェクトの超大定番、MetaFlanger。無闇な高音圧ミックスを避けるためのメータープラグインDorrough Stereoなども特徴的だと思います。
Morgan Page EMP Toolbox
ミヤホン:モーガン・ペイジはエレクトロニック・ダンスビートとポップスと合間を絶妙なバランス感覚で横断するDJ/プロデューサーですね。マドンナやコールドプレイなどのリミックスワークの他、自身の楽曲でグラミー賞にノミネートされるなど幅広い活躍が印象的です。日本国内においても都市型巨大ダンスフェスティバルUltra Japan 2014に出演していましたね。
彼の場合は「トラック」を作るのではなく「ソング」を作ることに重きを置いています。クラブライクなシンセサウンドと、生楽器やボーカルを融合させることにおいてはまさに世界トップレベル、繊細でエモーショナルという表現がこれほど似合う人もいないと思います。
ダンスミュージックはグルーヴとタイミングが重要ですから、L3ではなくL3-LL(Low Latency)が選ばれていることも非常に納得できます。また個性的な空間演出にぴったりの定番リバーブ、TrueVerbと、WAVES最新のディレイプラグインであるH-Delayの収録も面白いですね。
H-EQはこれまでMercuryにしか収録されていなかったEQですが、現状あるEQの中で最も強烈なイコライザーだと思います。リアルタイムのアナライザーが付いており、6つのバンドそれぞれの「キャラクター」が選べる。ローエンドは正確な処理をするデジタルタイプにして、ミッド・ハイはUSビンテージ、UKビンテージタイプを使うなんて芸当もできてしまう、面白いプラグインです。
モーガン・ペイジらしいという意味では、Masetati VX1とVocal Riderの収録が目立ちます。印象的なボーカル。歌詞までしっかりと聞き取る丁寧なミックスのために 最高の組み合わせでしょう。実存するコンソールの32chインプットをモデリングしたNLSもまた、彼のミックスの特徴的な部分に繋がっているのかもしれませんね。
SoundShifterの収録は「え?」と思いましたが、これは急なピッチ変更などが現場単位で起こりうるDJにとっては、実はマストアイテム。なるべく音色・音質変化を起こさないピッチシフト、タイミングシフトのプラグインです。
Dave Aude EMP Toolbox
ミヤホン:デイブ・オーデといえば、ビルボードのダンスチャートでなんと90回以上もナンバーワンを獲得しているという、EDM界のスーパーヒットメーカーです。自身でも「Audacious Records」というレーベルを主催しており、さらにDJとしても世界中で活躍しています。
彼がリミックスしたアーティスト名を挙げると、リアーナ、レディ・ガガ、ビヨンセ、ケイティ・ペリー、セリーヌ・ディオン、クリス・ブラウン、U2、セルジオ・メンデス...もうこれだけでも彼の幅の広さが伺えますね。幅が広いだけでなく、それを確実にヒットさせてきたのですから。
Dave Aude EMP Toolboxの特徴として、まず他のEMP Toolboxとは異なるのが、ソフトウェアシンセサイザーのElementを収録している点。WAVESが長い時間をかけて開発してきた、初のアナログ・モデリングシンセですね。
上のモーガン・ペイジと被るプラグインとして、L3とH-Delayがありますが、こちらのL3はLLではなく通常のL3(Ultramaximizer、Multimaximizer)です。これは制作スタイルの違いなのかもしれませんね。H-Delayは「使いやすくて音もいいディレイ」として新しい定番になりつつあることも伺わせますね。
C6はWAVESの中でも新しいプラグインで、6バンドのマルチバンドコンプです。これまでマルチバンドコンプとしての定番はC4(4バンド)でしたが、これからはこちらが主流になっていくのかなと思いますね。帯域の広いシンセ、図太いベースやキック、ボーカルを処理するにはもちろん、複数のサウンドをまとめたバスにも有効です。
MV2、Trans-Xが収録されているのも特徴的。いずれも素材のダイナミクスをコントロールするプラグインですね。Trans-Xはいくつもの素材を重ねて音作りをする彼ならではのチョイスだと思います。それぞれのトランジェントを微調整することで、ただ単に音を重ねただけでは得られない質感を産み出しているのでしょう。MV2は過去のスタッフブログで分かりやすい記事があったので、そちらもご覧頂ければと思います。
ということでスタッフミヤホンに解説をしてもらったWAVESのEMP Toolboxシリーズ。いずれのバンドルも面白いチョイスで作られたバンドルであることがお伝えできたでしょうか。
製品によっては、これまで高額なバンドル(例えばMercuryバンドルなど)にしか収録されていなかったものが含まれていたり、単体販売を行っていないものも含まれていたりします。EDM制作、と限定しなくても面白いチョイスになっているのではないでしょうか。
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