WAVES シングルプラグインピックアップ:Electric 88
世界最大のオーディオプラグインデベロッパー、Waves。EQやコンプ、ディレイやリバーブなどのエフェクトプロセッサーを多数リリースしている同社ですが、実はここ数年でピアノやシンセ、ベースなどのバーチャル・インストゥルメントの開発にも力を入れており、現在10種類以上の製品がリリースされています。
そんな中で比較的早い時期にリリースされたのが、Electric 88。これはエレクトリックピアノの名機、RhodesのMk1 88Keysをベースに作られたもの。Rhodesを再現するバーチャル・インストゥルメントは数多くありますが、そんな中でも非常に個性的で、音楽的。まるで実際のRhodesを目の前にしているかのような、楽器感さえ与えてくれます。少し紐解いてみましょう。
2021.04.22
ミントコンディションから、使い込まれた状態まで
実際のRhodesを触ったことがある方はご存知かと思いますが、Rhodesはアンプに繋いでいない状態で演奏してもタインと呼ばれる金属棒をハンマーで叩く音が鳴り、トーンバーが微かな音程をもって鳴ります。さらに鍵盤から指を離したときに「ンフッ」と短い離鍵ノイズが鳴り、リズミックな音楽の発展に貢献してきたことでしょう。そして、鍵盤を抑えたときに「コツコツ・カタカタ」と鳴る音こそ最大の特徴で、指に振動としても伝わるこのメカニカル音を含めて、Rhodes奏者は「ローズの音」と捉えていることでしょう。
ミントコンディションのRhodesならメカニカル音は少なく、トーンバーは豊潤に鳴り響く。使い込まれたRhodesなら、サステインが少々ヘタり気味でメカニカルノイズも大きいけど、年代を感じさせる枯れた音を出す。こういったパーツの響きというものは、その楽器のコンディションをも表現します。
例えば、リードボーカルやギターソロがセンターに置かれていて、抜けが悪いとします。シンセのパッドやループ、リズムギターなど、他の要素が同じ音域で競合している可能性があります。それらを別々にバスアウトしてステレオイメージャーを挿入し、緩やかに拡げてみましょう。そうすることで、ボーカルやソロに必要なスペースが確保されます。
「タイン(金属棒)の音」と「離鍵時の音」と「メカニカル音」。Electric 88はこの音をメインサウンドと別に独立してコントロールできるようにしました。EDMにRhodesを取り込みたいときにはミントコンディションのクリーンなRhodesを。バンドサウンドやアンビエント、弾き語りにRhodesを使いたいときには各種のノイズを加えて楽器としての印象を深くだす、といった時代コントロールさえ可能です。
エフェクトの王様が音作りをサポート
ギター同様に、Rhodesも様々なエフェクトが使われる楽器の1つと言えるでしょう。フェイザー、トレモロ、コーラス、オートパン、リバーブ...等々。エフェクト込みでRhodesの音だ、という方も少なくないでしょう。Electric 88は「エフェクトの王様、Waves」がバッチリサポート。一通りのエフェクトを搭載しています。

さらに、ライン出力だけでなくアンプを通した音もスタンバイ。アンプのドライブ量も調整可能なので、強く弾いたときに僅かに歪むRhodesならではのサウンドを作ることもでき、コンデンサーマイク、ダイナミックマイクの切り替えも可能です。これだけあれば、音作りに悩むことはないでしょう。

何よりも大事なこと
ソフトウェアであれ、ハードウェアであれ、楽器や音源にとって一番大事なことは「音が良くて、弾き続けたくなる」ということでしょう。音色に触発されて新たなメロディやフレーズが浮かんだり、曲の構成を思いついたりといったインスピレーションを与えてくれるものこそ、全てのミュージシャンやクリエイターが求めていることかと思います。
卓越したプロデュースワークと高い演奏技術で知られるOvallのShingo Suzukiさんは、ご自身でもRhodesの実機を所有されていますが、Electric 88についてこうコメントされています。
"びっくりするくらいいい音で。実際のRhodesもここにはあるのですが、Electric 88は「ちゃんと木が鳴っている」音がしてて、ずっと弾き続けちゃったんですね"
- 関連記事:Production & Mix with WAVES – Shingo Suzuki – プリプロダクション編
シンプルながら非常に奥深いRhodes音源、Electric 88をぜひチェックしてみてください。
人気記事
読むだけでミックスがうまくなる?オートメーション活用 7つのヒント
今や、DAWに搭載されたオートメーション機能はとてもパワフルになりました。ご存知の通り、すべてのミキサーとプラグインのエフェクトパラメータを自動化することができ、人の手だけでは、実現不可能だったコントロ
Waves Curves EquatorとIDX Intelligent Dynamicsプラグインの違いとは?
Waves Curves EquatorとIDX Intelligent Dynamicsは、どちらも音のインパクトやクオリティを向上させる設計になっています。この記事では、それぞれのプラグインがどのように機能するのか、どんな場面で、なぜ両方を
LV1&SuperRack専用iPadアプリ「MixMirror」リリース
Waves eMotion LV1ライブミキサーとSuperRackをコントロールするタブレット用リモートアプリ「MixMirror」が2024年1月22日に発表いたしました。iPadにインストールすることで会場のどこからでもプラグインをコントロ
ベーシックなボーカル処理を再確認しよう
今回ご紹介するのは、人気のMixがうまくなるTipsより、「ベーシックなボーカル処理を再確認しよう」です。
リズム隊のミックスTips! – Vol 3.1 番外ハイハット編
おかげさまで好評を頂いている「リズム隊のミックスTips」。イントロダクション、キック、スネアとここまで来ましたので、本日はハイハット編。番外編なので、Vol.4ではなく「Vol-3.1」としています。
リズム隊のミックスTips! – Vol.8 トラックダウン編
おかげさまで好評連載中の「リズム隊のミックスTips」。ここまでドラム、ベース、ギターと各楽器を処理する手順をご紹介して参りましたが、今回はいよいよファイナルとなる「ミックスダウン編」です。
人気製品
Abbey Road Studio 3
数え切れないほどの傑作と伝説を生み出してきた英国アビーロード・スタジオの『Studio 3』 コントロール・ルーム。Waves Abbey Road Studio 3は、Studio 3の音響環境そのものをヘッドフォンに再現するプラグインです
CLA EchoSphere
Slap Delay & Plate Reverb CLA EchoSphereは、伝説的なミックス・エンジニアであるクリス・ロード・アルジ(グリーンデイ、ミューズ、ブルーススプリングスティーン等)とWAVESが共同しデザインしたプラグイン。ク
CLA Drums
Waves Artist Signature Seriesは、世界のトッププロデューサー、エンジニアとのコラボレーションにより生まれた目的別プロセッサーシリーズです。全てのSignatureシリーズプラグインは、アーティストの個性的なサウ
DeBreath
シンガーは、たとえテイクが台無しになってしまおうともブレス(息継ぎ)で主張をするものです。DeBreathを使えば、そんなブレスをエンジニア好みに軽減、あるいは除去することができます。つまり、シンガーはエンジ
Clarity Vx DeReverb Pro
より高速なダイアログ編集ワークフローへようこそ - これまで以上に強力に、正確に、コントロールしながら、音声からリバーブを除去します。Clarityの先駆的なAIテクノロジーは、録音を瞬時に、そしてリアルタイムで
dbx 160 compressor / limiter
オリジナルのdbx® 160は、1970年代の他のコンプレッサーと比べ、非常に歪みが少なくクリーンなサウンドで、特にドラムのコンプレッサーとして評価されてきました。入力信号に素早く反応するdbx 160コンプレッサーは
Eddie Kramer Effects Channel
Eddie Kramer、Effects Channelを語る: 「Effects Channel プラグイン用に、私は音を絵の具を塗るように使う、基本的ないくつかの要素を再現することから始めたんだ。そして何年もの時間をかけ、これらの要素がウィ
Eddie Kramer Guitar Channel
Eddie Kramer、Guitar Channelを語る: 「Guitar Channel plug-inはリードギター向けと2種類のリズムギター向けの設定をフィーチャーしている。 リードギターパートは、ライブ感や息をのむようなオーガニズムがあっ