超シンプルかつ、即戦力の OneKnob Series
- The Art of Waves: Sonic Perfection
作・編曲家、音楽プロデューサーの田中隼人です。前回の記事から少し間が空いてしまったのですが、今回はわたくしが日々の音楽制作の中で重宝しているWAVESのプラグインの一つ、OneKnob Seriesを紹介させていただきたいと思います。
2025.03.24
制作においてやはり「時短」は正義
前回の記事でも「時短」が大事という話をしたのですが、今回ご紹介するOneKnob Seriesも究極の時短プラグインの一つです。パラメータがシンプルでその名の通り、大きいノブが一つしか付いていません。
このノブを回すだけという直感的なGUIのおかげで、操作やパラメーターに迷うことなく、直感的にやりたいことを実現してくれるシリーズです。このミニマルな設計思想が時短信者の僕にはとても刺さっております。そして何より、このシリーズの最大の魅力は悩む時間を削減できることです。
音楽制作をする上で、プラグインやエフェクトの選択肢が多すぎるがゆえに、「どのEQを使う?」「設定はどうする?」と迷子になる場面が少なくありません。時間をかけて色々いじり倒してみたものの、結果あまり変わってないみたいなことが誰でも一度はあるのではないでしょうか?その点、OneKnobシリーズは様々な選択肢をあえて排除して、「OneKnobを挿してノブを回すだけ」という超高速ワークフローが実現します。特にデモ段階などでは即戦力で、結果的にアレンジやメロディに集中できる環境や時間を作り出してくれるのです。
簡単操作がウリだけじゃないOneKnob Series
「OneKnob Series」は、WAVESの豊富なアルゴリズムを背景に、エフェクト処理をワンノブで完結させることを目指したプラグインシリーズ。ラインナップには以下の8種が揃っています。
- OneKnob Brighter(高域を持ち上げる)
- OneKnob Pressure(パラレルコンプ)
- OneKnob Driver(サチュレーション付加)
- OneKnob Phatter(低域ブースト)
- OneKnob Louder(リミッター)
- OneKnob Wetter(リバーブ)
- OneKnob Pumper(サイドチェイン、ダッキング)
- OneKnob Filter(フィルター)
どれもノブ1つを回すだけ。プリセットすら不要という究極のシンプル設計で、直感的なサウンドメイクが可能です。しかもどのプラグインも音が良い。「コンプどれにしようかな?」と考えていくつも試して時間をかけて100点に近いものを探すよりは、OneKnob Pressureで時間をかけずに80点を取りに行くほうが効率がよいと僕は思います。「このトラックちょっとリバーブを掛けたいけど、センドで送るリバーブと別にしたいなぁ」と思ったら、迷わずOneKnob Wetterをインサートにアサインしてください。プリセットを選ぶ時間も使わずにノブを回してWETの量を調整するだけで、即戦力でバッチリなトラックになります。
特にオススメしたいOneKnob Filter
シリーズの中でも特に使用頻度が高いのがこの「OneKnob Filter」。
アナログライクなフィルターサウンドが手軽に得られるOneKnob Filterは、どんな場面でも活躍してくれて、僕が制作している楽曲では使用頻度ほぼ100%の超マストプラグインです。
シンプルデザインのローパスフィルターで、ノブの左下のレゾナンスのパラメーターを変えることでフィルターの帯域幅を変化させることができます。リアルタイムでオートメーションを書き込むようなモードにした上でノブを左から右に回せば、あっという間にフィルターの開閉を使ったクールなサウンドを作成できます。
OneKnob Filterの具体的な使用例
① 今風POPS系楽曲のフィルターアップ&ダウン王道の使い方として、イントロやビルドアップ部分のフィルター処理があります。ピアノやシンセパッドなどのバッキングトラックにOneKnob Filterを挿し、オートメーションでノブを回すだけ。The Chainsmokers 「Closer」のイントロのような展開が一瞬で作れてしまいます。サビ前のビルドアップ部分にもさり気なくフィルターの開閉を使うと、同じコード進行のループでも展開のメリハリを作りやすいです。逆に、インター〜落ちサビのような落ち着いていく展開部分には、フィルターが開いた状態から徐々に閉じていくことで、スムーズに楽曲の流れを構築できると思います。フィルターのオートメーションだけで“プロっぽい”展開が作れるため、アレンジの時間を大幅に短縮できます。
② Lo-Fiヒップホップやチル系のこもりエフェクトLo-Fiやチル系トラックでは、意図的に音をこもらせることでノスタルジックな雰囲気を演出できます。OneKnob Filterをピアノ、ギターやその他楽器系のサンプル素材に挿して軽くフィルターを閉じてあげるだけで、あっという間に「それっぽい」質感になります。EQで処理するよりも簡単にかっこいいサウンドを構築できると思います。フィルターの質感がアナログライクなので、ラフミックス段階でも一発で雰囲気作りができます。レゾナンスのパラメーターを「extreme」にしているとかなりピーキーでノイズも発生しやすいので注意してください。
③ ボーカル処理での飛び道具的な使い方ボーカルにワンポイントのフィルター処理を施すと、展開に緩急が生まれます。どこか一箇所ラジオボイスにするような処理の際に、EQではなくOneKnob Filterを使うのがかなり時短かつ、良い結果になることが多いです。レゾナンスは強めの設定がおすすめです。 オートメーションを書かなくても、1フレーズ分だけOneKnob Filterを挿してノブを動かすだけの簡単操作。ボーカルの表現力アップに貢献します。
人気記事
リズム隊のミックスTips! – Vol 1イントロダクション
MixがうまくなるTipsのMIオリジナル企画。当社ウェブサイトでもたくさんのレビューをしてくださっているオフィスオーガスタの佐藤洋介さんに学ぶ、リズム隊(ドラム・ベース・リズムギター)のミックスTipsムービー
音が埋もれて前に出てこない…そんな悩みを瞬時に解決するシグネチャーシリーズ【Tony Maserati & JJP編】
スタッフEbです。「ギター、ベースがミックスの中でぼやけてしまう」「ボーカルが埋もれて音量を上げても前に出てこない」楽曲のミックスでそういう経験をされた方は多いと思います。かくいう私もボーカル、ベースな
WAVES シングルプラグインピックアップ:CLA Vocals
パラメータなんか見なくていい。ボーカルは耳で判断しよう 本記事をご覧の多くの方は、きっとボーカルの音作りとミックスに時間をかけていることでしょう。ボーカルは曲の主役。全工程の中でもっとも手間暇が
強力なプロセシングパワーとネットワークによる拡張性、あなたに最適なSoundGridのセットアップとは?
新型コロナウイルスが蔓延する世界の情勢を見ていると、観客が多く集まる音楽ライブを以前の形で開催できるのは、残念ながらまだまだ先になりそうな雰囲気です。配信ニーズの高まりとともに、ライブハウスやアリーナ
リズム隊のミックスTips! – Vol 5 ドラムバスミックス編
いよいよリズム隊のミックスTips ドラム編もラスト。今回はドラムを1つのバスにまとめたバスミックス編です。
リズム隊のミックスTips! – Vol.7 ギター後編
前回のギター前編に続き、今回はギター後編をご紹介。ムービー前半はメロディーラインのようなアルペジオの処理、後半は「歪んだギターの壁の作り方」ステップの解説となっています。
人気製品
API 550
60年代後半に誕生し、API独特のパワフルかつ滑らかなキャクターを決定づけた伝説的レシプロ・イコライザーを、プラグインで再現
CLA Guitars
Waves Artist Signature Seriesは、世界のトッププロデューサー、エンジニアとのコラボレーションにより生まれた目的別プロセッサーシリーズです。全てのSignatureシリーズプラグインは、アーティストの個性的なサウ
Clarity Vx Pro
Clarity Vx Proは声専用のリアルタイムノイズリダクションです。Waves Neural Networks®を搭載し、複数のノイズ除去タスクを1度に実行。一瞬の分析でダイアログをアンビエンスから分離し、わずかな作業時間で、ノイ
Eddie Kramer Drum Channel
ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリン...ロックが市民権を得る時代に生まれたレコードに共通しているのは、最もミックスに頭を悩ませる楽器であるドラムの音が普遍的な美しさを持っているという
CLA Vocals
Waves Artist Signature Seriesは、世界のトッププロデューサー、エンジニアとのコラボレーションにより生まれた目的別プロセッサーシリーズです。全てのSignatureシリーズプラグインは、アーティストの個性的なサウ
Element 2.0
改良されたVirtual Voltageテクノロジーによるモデリング・エンジンを搭載するElement 2.0では、より高解像度のオシレータ、エンベロープ、レイテンシーのないフィルターセクションを実現、シーケンサー機能の強化、
Dorrough Stereo
Waves Dorrough Meter Collectionは、最高の精度を誇るDorrough Electronicsのハードウェア・メーター280D/240D、380D/340D、40AES/EBUを完全にモデリングした、プロフェッショナルなメーター・プラグインです。 Dorr
Eddie Kramer Effects Channel
Eddie Kramer、Effects Channelを語る: 「Effects Channel プラグイン用に、私は音を絵の具を塗るように使う、基本的ないくつかの要素を再現することから始めたんだ。そして何年もの時間をかけ、これらの要素がウィ