「レトロ」を極めろ!ローファイビートを作る4つのTips
Waves Retro Fiプラグインを使って、よりクリエイティブで説得力のあるローファイヒップホップビートを制作するための4つのローファイ Tipsをご紹介いたします。
2023.03.01
Lofi(ローファイ)とは、一般的に望ましくないとされるオーディオの不完全性が、魅力的な形で利用されていることが特徴です。一般的に「望ましくない」ものの例としてはノイズ、ドロップアウト、テープの摩耗、ワウ、フラッターなどがあります。オーディオの不完全性を良い音になるようクリエイティビティを発揮することは、ローファイ・ビートを作る際の主な課題です。このプロセスは、醜いものを格好よく見せかけるようなものだとお考えください。
今回は、レトロなヒップホップビートを作る4つのヒントです。ドラムにノイズを埋め込む、パラレルプロセッシングでクリエイティブにする、ユニークなライザーエフェクトを作る、リスナーを驚かせる、こんな感じです。
Tips 1:ドラムにノイズを埋め込め
ドラムにノイズを埋め込むと、ドラムがミックスに馴染み、カセットテープや古いレコードからサンプリングされたようなサウンドにすることができます。Flying Lotusの "Crust" では低レベルのノイズがセンターとレフトの間にパンニングされていて、スネアを含むトラックの中にノイズが埋め込まれているように聞こえます。
問題は、注意深くノイズを埋め込まないとすぐに台無しになってしまうことです。低レベルのノイズならそれほど気にならないこともありますし、大きすぎるノイズだとドラムそのものを食い尽くしてしまうでしょう。
解決策の1つとして、ノイズトラックにゲートを適用し、ドラムのトランジェントを検出するたびにゲートが開くようにすることです。よくあるノイズジェネレータを使って手動で作ることもできますが、ドラムバスをゲートのサイドチェインに入れるなど、なかなか面倒です。この効果を最も簡単に引き出すには、Retro Fiのノイズモジュールを使うことです。
Waves Retro Fi ノイズモジュール
ドラムに重ねるノイズの種類(カセット、デジタル、エレクトリック、FX、メカニック、シンセ、レコード)を選択し、ゲートモードを有効にしてから、ドラムのヒット時にのみノイズが聞こえるようにThresholdノブを調整します。その結果、ドラムのヒット音がノイズによってバックアップされているように聞こえることでしょう。また、Pre/Postスイッチを切り替えることで、Speceモジュールの前または後に配置を変えることができるので、両方のポジションを試してどちらの設定が好みか見極めてみてください。
Waves Retro Fi
Tips 2:パラレルプロセッシングで空間を埋め尽くせ!
ローファイの曲はトラック数が少ないことが多いため、スペースを埋めるのが難しいのが一般的かもしれません。しかし、パラレル・プロセッシングのアプローチを工夫すれば、チープな音源でも魅力的なサウンドスケープを作り出せるのです。
パラレル・プロセッシングとは、オーディオ信号を複製し、片方を処理してからオリジナルの音声とミックスすることです。代表的なのはドラムバスにパラレル・コンプレッション処理を行うことでしょうか。片方をかなり強烈に潰したものをオリジナルと混ぜることで、ダイナミクスとビッグなコンプサウンドを両立することができます。つまり、音数の少ないミックスでも空間を埋めた分厚さを出すことができるのです。
リバーブ、ディレイ、ディストーション、サチュレーションなどのプロセッサは、通常パラレル処理を使うことが多いでしょう。しかし、パラレル処理を行うトラックに1つのエフェクトしか使ってはいけないなんてルールはありません。Retro Fiがあれば、1つのパラレル処理トラックでも複数のエフェクトで空間を埋め尽くすことも可能です。
Retro Fiをパラレル処理のトラックにインサートして、たくさんのプリセットをロードしてみましょう。まずは「Guitar - Exquisite Fabric of Space and Time」あたりが面白いかもしれません。Device、Space、Noise、Mechanicの各モジュールをオンにしてみましょう。これによってパラレル処理のトラックにはディストーション、ディレイ、リバーブ、ノイズ、ピッチ/ボリュームのモジュレーションが加わります。このバリエーションがあれば、ステレオフィールドを埋めることは簡単に、より充実したものになるでしょう。
注:リバーブやディレイをかけるだけなら、Retro Fiの弟分プラグインであるLofi Space(Retro Fiからリバーブとディレイモジュールだけを搭載したもの)もおすすめです。
Waves Lofi Space
一歩進んだ使い方もご紹介しておきましょう。それは、パラレル・ピッチシフトを使ったテクニック。パラレル処理のトラックにRetro Fiをインサート。その後に、SoundShifterをインサート。Semitonesの値を+/-12に設定します。この値は、パラレル信号が曲のキーの中で収まってくれるための安全値みたいなものです。これで、ユニークで面白いシングルラインのハーモニーが完成します。+12だけでなく、-12なども重ねてみるとさらに豊かなサウンドになります。
SoundShifter
パラレル処理を行ったトラックをミックスに戻しても、効果が十分に体感できない場合にはSSL EV2 Channelを使ってヘビー・コンプレッションをしてみましょう。レシオは8:1、リリースタイムは2前後に設定し、F.ATK(ファーストアタック)をFastに切り替えると、アタックタイムが1msになります。SSL EV2に搭載されているようなVCAタイプのコンプレッサーは、そのアタックの速さと反応からパラレル・コンプレッションに合いやすいと言えます。
単体で聞いたときに「潰れている」のが分かるくらいの設定にしておき、このトラックを0から徐々にドライの音に混ぜてみましょう。ミックスにパンチが無くなった、と感じたら混ぜ過ぎです。少しフェーダーを戻して、ベストな位置を見つけてください。
結果、サウンドはより分厚く仕上がります。スペースを埋めるために新たな音を追加し続けて過剰なプロデュースにするのではなく、ミックスの中に既にあるサウンドを使ってスペースを埋めることができないのか、一度自問してみるといいでしょう。そうすれば、アレンジの観点からもクリアでフォーカスの定まったものになるはずです。
SSL EV2 Channel
Tips 3:ユニークなライザーサウンドを作ろう
ローファイな曲では、緊張感や解放感の演出にライザーサウンドを加えることがよくあります。基本的な使い方として、ヴァースやコーラスなどのセクションチェンジをつなげるために追加することが多いでしょう。EDMのドロップにつながる長めのライザーをイメージしてもらえればと思いますが、ミックスの中ではそれほど重要な要素ではありません。フックに小音量のライザーを繰り返し埋め込むと、曲の勢いをキープすることができます。
フックが4小節の長さのとき、そこに4小節分のライザーを重ねるとします。Spliceからダウンロードしたライザーサンプルを使うことは悪くありませんが、そうしたくない理由がいくつかあります。まずはサンプルの長さと小節数の長さが合わない場合。1小節のライザーを8小節にタイムストレッチしようとすると、奇妙なアーティファクトが発生してしまう可能性もあるからです。そしてもう1つの理由が、Retro Fiを使ったライザーの作成はとても簡単で、サンプルを延々と探し続けるよりも早く目的を達成できるからです。
ライザーは通常、ベーシックなトーンにノイズ、ピッチベンドエフェクト、リバーブを組み合わせて作られます。ベーシックなトーンは、シンセのオシレータでサイン波、三角波、ノコギリ波、矩形波、パルス波あたりを使えばOKでしょう。重要な処理はすべてRetro Fiだけで行えるため、シンセ内で特別な処理は必要ありません。
シンセの後にRetro Fiをインサートして、Deviceモジュールの中でスタイル、トーンなどを調整してみます。ローファイなトラックでのライザーなら、メローなトーンがいいかもしれません。Spaceモジュールの中でEchoはオフ、Reverbをオンにします。ReverbのLengthは3〜5秒あたりに設定し、Mixノブでブレンド具合を調整します。
"Noise" モジュールのドロップダウンメニューにある様々なノイズオプションの中から1つを選択します。NoiseモジュールのThresholdを-50dBまで下げ、Retro Fiに音が入ってきたら常にノイズが発生するように設定。Spaceを "Pre"(Spaceモジュールの前にNoise)の方がまとまりが出やすいでしょう。
"Device" モジュールのRingerノブを固定値に設定するとリングモジュレーターとして機能し、デジタルクリッピングディストーションが作成されます。一方、RIngerノブを時間経過と共に動かすと、非常にクールなピッチベンドエフェクトを作成することができるのです。DAWのオートメーションを使って、ライザーを発生させたい時間範囲で0%から100%まで動かしてみましょう。このとき、Mixノブが100%になっていればより強烈な効果が得られます。
このRingerによる効果がちょっとキツすぎる、クセがありすぎるという場合は、Retro Fiの前にVocal Benderを使うのもアリです。Vocal BenderをFineモードにし、ピッチを0〜12でオートメーションを作成すればきれいなピッチベンドエフェクトになります。
Tips 4:リスナーを驚かせよう!
Spotifyで音楽をアクティブにチェックしている人たちの多くは、光の速さで「次の曲」ボタンをタップして曲をスキップしていきます。曲の始まりの10〜15秒でリスナーの耳と心を掴まなければスキップ確定です。リスナーの注目を集め、飽きさせないためには不意を突くのが効果的。
Retro Fiをマスターにインサートし、「Megaphone」や「Grain Adlibs and BGVs」などのプリセットをロードし、イントロにビンテージなテイストを加えてみましょう。色褪せた雰囲気のものならどのプリセットでも構いません。この後、最初のバースが始まる瞬間にRetro Fiがバイパスされるようにオートメーションを組みます。目的はイントロの印象を強くし、最初のバースでローファイ感のベールを脱ぐことで生まれるコントラストを得ること。これでリスナーの意表を突き、続きをもっと聴きたいと思ってもらえることでしょう。
さらにRetro Fiで400Hzあたりからローカット、3kHzあたりからハイカットを掛けると、このエフェクトをさらにインパクトあるものにすることができます。Retro Fi内蔵のハイパス、ローパスでサウンドをフィルタリングできるので、他にEQを使う必要はありません。こうすることで、いざRetro Fiがバイパスになったときに全体のサウンドがよりリッチでフルなものに感じられます。コントラストをつけることは、非常に強力なアレンジのテクニックとも言えますね。
Waves F6 Floating-Band Dynamic EQのようなEQを別途使用すれば、500Hzまでのローカットと3.5kHzまでのハイカットでよりオールドスクールな電話機エフェクトを作ることもできます。上下のカットには24dB/octの鋭いフィルターを使いましょう。これに加え、1kHz、1.5kHz、2.5kHzにベルフィルター(鋭いQのフィルター)を追加し、それぞれのベルフィルターにおよそ6dBのゲインも追加。この組み合わせで、昔ながらの電話機のような効果が得られます。
まとめ
ローファイプロダクションのテクニックを駆使すれば、あなたが求めるローファイサウンドを得るのに問題はないでしょう。Retro Fi、Lofi Spaceはローファイトラックを作るプロデューサーのために特別に作られたプラグインなので、合理的にローファイサウンドを生み出すことができます。
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