耳を鍛えるプラグイン?
スタッフHです。先日、友人からこのような話を聞きました。
「このあいだ発売されたばかりのWAVES Greg Wells Signatureを買った。今まで何年もかけて、いろいろなツールを使って、勉強もして、たくさんのプラグインやプロセッサーも買ってきたのに、このプラグイン1個で理想の音が短時間で作れてしまった。なんだか悔しいなぁ」
補足をすると、彼は根っからの作曲好きギタリストで、エンジニア志向の人ではありません。
2020.01.01
Greg Wells Signatureとは。
greg-wells-signature-seriesアデルやケイティ・ペリーなど、グラミーからヒットチャートまで常連のアーティストを手がけるプロデューサー、エンジニア、コンポーザー、ピアニスト(これぞまさしくマルチな才能!)である、グレッグ・ウェルズ監修・開発のWAVESプラグイン。
「ボーカル用」「ピアノ用」「マスターバス用」などのプラグインをバンドル。大きなノブ1つが印象的な、シンプルインターフェイスのプラグイン。
ほぼ、ノブ1つで音作りをするにもかかわらず、インプットボリュームやノブの位置に応じて多彩なトーンを生み出します。
グレッグ・ウェルズ氏のほかに、ブッチ・ヴィグ氏やトニー・マセラティ氏、エディ・クレイマー氏、ジャック・ジョセフ・プイグ氏、クリス・ロード・アルジ氏など、世界トップクラスのプロデューサーやエンジニア監修・開発によるプラグインがリリースされています。
話は戻って、「悔しい?」
冒頭の友人のコメントに、「悔しいなぁ」というものがありました。この言葉がなんだか、私には引っかかったのです。
今までたくさんの機材を購入してきたのに、たった1つのツマミのプラグインで音作りができたことが悔しい。そういった主旨で話していたものと思いますが、理想の音がパッと出てくれたなら、いいことじゃないか。私はそう思いました。
さらにいえばWAVES Signatureシリーズ、グラフィックこそシンプルにまとまっていますが、その出音は多彩です。凝り固まった音しかでない、なんてことはありません。
耳が鍛えられる
パッと見はシンプルですが、音は多彩。しかし、ユーザーが動かすべきツマミやスライダーはごくわずか。だからこそ、1つのツマミに集中して、楽曲のトーンに「合う・合わない」の判断にも集中できます。
目的のトラックにインサートしただけで、たしかに「一定基準以上の」音には仕上がってくれますが、そこからの微調整こそが肝心なのです。ここは、耳を使って判断をするしかありません。
ミックスに集中したいときに、複数のパラメーターを一気に気にしなくてはいけない(それはそれで、ミックスの楽しみの1つではありますが)よりも、より少ないパラメーターに集中して理想の音作りを行う、もしも本ブログをご覧の方がクリエイターやミュージシャン、あるいは作曲家志向の方であるならば、このシンプルさは結果的に「耳を鍛える」ところにも役立つのではないかと思います。
私の友人の場合、長年の経験があるからか、一般的な(パラメーターの多い)ツールを使ったミックス作業も難なく行うことができます。ミックスをすることが彼の本職ではありませんが、十分にその仕事もできるのではないかと感じるほど、仕事が丁寧です。
彼が「理想の音が短時間で作れてしまった」のは、今までの経験があるからに他ならないでしょう。鍛えられた耳だからこそ、短時間で良し悪しの判断ができたのではないかと思います。
WAVES Signatureシリーズだって、極端な設定にすれば、どんな楽曲にも合いそうもない、破綻した音にだってなるのですから。
「ズルい」プラグイン?
WAVES Signatureシリーズは、「ズル」をするためのプラグインではないと感じます。インサートするだけで最高の音には、きっとなりません。そこからの微調整が必要だからです。
でも、動かすツマミ(スライダー)は少なめです。だから、目をつぶって最後の1ツマミを調整してみてもいいと思います。耳だけをつかって。
自分がイメージする音が短時間で、かつシンプルなプラグイン1個でできてしまった、ということは、何もズルがないじゃないか、と思います。
現在リリースされているWAVES Signatureシリーズは以下の通り。好きな音楽ジャンルやアーティスト、あるいは狙いたいサウンドなどを基に選んでも面白いと思います。
Tony Maserati Signature
maserati-signature-series_1600流行の最先端、ニューヨークで生まれるR&Bやヒップホップ、グルービーなサウンドといえば、どこかしらにこのトニー・マセラティ氏が関連しているのではないでしょうか。ビヨンセ、デスチャ、Jay-Zなど、どこかセクシーさを感じるミックスが彼のサウンドそのものと言っていいでしょう。ボーカル、アコースティックギター、エレクトリックギター、ベース、ドラム、バストラック用のプラグインがあります。
Jack Joseph Puig Signature
U2からジョン・メイヤー、レディ・ガガからブラック・アイド・ピーズまで。ジャンルを問わないばかりか、常に新しい試みを感じるミックスこそ、JJPさんの特徴でしょう。パラメーターの名前も「Attitude(主張)」や「Magic」など、きっとミックス作業の中で使っているのだろうな、という言葉が特徴的。ボーカル、ギター、ドラム、パーカッション、キーボード、ベース用のプラグインがあります。
Chris Load-Alge Signature
今に至るアメリカンロックの「王道」サウンドを作り上げたエンジニアといえば、まさしくクリス・ロード・アルジさんでしょう。グリーン・デイ、ナイン・インチ・ネイルス、リンキンパーク、国内ではB'zやOne OK Rockなども手がけられています。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、そしてアンプラグド(アコースティック楽器)やFXなど、攻めたカテゴリがあることも特徴です。
Eddie Kramer Signature
ビートルズ、ジミ・ヘンドリクス、レッド・ツェッペリン。エディー・クレイマーさんが手がけた作品は、ロック・ミュージックの歴史そのものと言っていいでしょう。当時のリスナーも、現代のリスナーも同様に同じレコードに熱中できるのは、楽曲やアレンジの良さに加えて、エンジニアリングの良さもあったと言えるかもしれません。ボーカル用、ギター用、ベース用、ギター用、エフェクト用のプラグインがあります。
Butch Vig Vocals
ニルヴァーナがNevermindで衝撃のデビューを飾った時、3人のメンバーとともにこの歴史的なレコードを作ったのは、ブッチ・ヴィグさんでした。彼自身もガービッチというロックの歴史に残るバンドのドラマーであり、プロデューサーでもあります。ブッチ・ヴィグ作品に共通する、歪んだボーカルの切ない響き。僅かな歪みから破滅寸前の歪みまで、あらゆる印象的なボーカルサウンドを作ります。と、いうことで、ブッチ・ヴィグさんのプラグインはボーカルプロセッサーのみがありますが、実はボーカル以外にも使って楽しいことも特徴。
Manny Marroquin Signature
ブルーノ・マーズ、リアーナ、ラナ・デル・レイなど、温故知新と現代ポップスのひねくれ具合を見事に融合させているエンジニアといえば、マニー・マロクウィンさんでしょう。彼が監修・開発したプラグインは、これまで紹介してきた方とは別ライン。彼自身がミックス中で欲しいリバーブトーン、ディレイのトーン、EQやコンプ、ボーカルトーン、歪みトーンまで、あらゆる「トーン」を追求した製品群が揃っています。心持ちとしては「カスタムエフェクター」を手に入れたような気分になるプラグインばかり。従来のプラグインの延長線上にありつつ、圧倒的に使いやすいことが特徴でしょう。
WAVESのSignatureシリーズ。もしもご覧のみなさまがクリエイターやミュージシャンであるならば。そしてもちろん、エンジニア志向であったとしても、煩雑な操作体系を排除して最高のサウンドを提供するというWAVESならではのポリシーに違いはありません。
もしもSignatureシリーズで少しでも時間が節約できるなら、アレンジやレコーディング、メロディラインの再考などに時間を使っていただけたら、製品としてこれほど嬉しい使われ方はありません。
いずれの製品もバンドル単位(エンジニア単位)で購入可能なほか、プラグイン単体でも購入可能となっています。
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