
ヘッドフォンでのミキシングは「センターイメージ」が重要
ミヘッドフォンでステレオイメージ中の「センター」にあるサウンドのミキシング。これが最も難しい課題の一つであり、ミックスが上手くなる鍵です。
Abbey Road StudiosのエンジニアMirekStilesに「センターイメージ」が非常に重要である理由と、Waves Abbey Road Studio3という音楽制作プラグインがどのように役立つかを説明していただきました。
2021.08.25
ミックスがうまくいかない!
様々な理由やシナリオにより、多くのプロデューサーがヘッドフォンでのミキシングを余儀なくされています。私自身も何度も経験してきました。ホームスタジオの環境(たいていの場合、理解のない同居人や隣人がいるような場所)で、締め切りの朝までヘッドフォンのみでミキシングをするということはよくありました。
このような環境で、何時間も苦労して、ヘッドフォンを使ったミックスをしたにもかかわらず、そのミックスをスピーカー環境で確認したとき、意図が反映されていない音になっている、、
愕然としてしまいます。
「ヘッドフォンでのミキシングは理想的ではない」とはよく言われますが、その原因はどこにあるのでしょうか?
ヘッドフォンのメリット・デメリット
ヘッドフォンでミックスをチェックすることにも、多くのプラス面があることを強調しておきます。例えば、歪み、クリック音、ポップ音、ヒス音など、スピーカーでは隠されてしまう細かな音を確認することができます。同様に、ヘッドフォンでは圧縮しすぎていないかどうかも見極めやすくなるでしょう。また、多くのエンジニアにとって慣れない環境や完璧とは言えない部屋で作業する際に、ヘッドホンを「聞こえ方の確認」として使用しています。また、ミックスエンジニアが曲を書き出す前に必ず行う「ヘッドフォンでのラストチェック」を何度も見てきました。
そうは言っても、ヘッドフォンでのミキシングは難しいものです。そこには様々な原因があります。まず、ヘッドフォンでローエンドを判断するのは難しいということ。よく陥りがちなのが、ヘッドフォン上での”聞こえ方”に基づいて低音を削ったり足したりすることです。これでは、同じミックスを車やサウンドバーなどの他のシステムで再生したときに、悲惨な結果を招く可能性があります。
ミックスの鍵は「センターイメージ」
本記事では、ヘッドフォンにおける『落とし穴』に注目します。それは、音楽を制作したり聴いたりする際の基本的な要素。
「センターイメージ」
考えてみると、ヘッドフォンの性質上、L・Rのスピーカーから得られるような真のセンターイメージはありません。ヘッドフォンでは、小さなスピーカーを両耳の近くに設置し、完全に分離された状態で、頭の左側と右側の両方に音を直接注入します。これにより、非常に素晴らしく、親密なサウンドスケープが生まれ、多くの人がヘッドフォンで音楽を聴くことを好む理由となっています。
ヘッドフォンはミックスの細部(小さなノイズなど)の確認には適していますが、音場全体の奥行きの判断には適していません。それは「センターイメージ」も例外ではないのです。
ヘッドフォンでの聞こえ方のイメージ図

- (1) 通常のヘッドホンでは、左右の耳に直接音が「注入」され、真のセンターイメージはありません。
- (2) 全く同じ信号が左右両方に同じレベルで入っている場合、ヘッドホンではセンターイメージのようなものがかすかに聞こえますが、左右はまだ分離しており、ステレオイメージは、センターとL・Rとの間に「空っぽの空間」があるかのようで、サウンドは断絶されておりパノラミックではありません。
- (3)後述のAbbey Road Studio 3を有効にすると、ヘッドフォンで、パノラミックなステレオ音場に連続したリアルなセンターイメージが再現されます。
クロストークの重要性
さて、音楽の中で最も重要な要素はセンターに配置されています。キックドラム、ベースライン、リードボーカル、スネアドラムなど。これらは作品のメインの要素でもあります。
もし、ヘッドフォンで何らかのサウンドをセンターに配置してバランスを取っているとしたら、間違った判断をしている可能性があります。ヘッドフォン上では完璧なボーカルバランスでも、スピーカーやサウンドバーシステムでは正確に伝わらない可能性が高い。
確かにヘッドフォンでは、センターの情報を大まかに表現していますが、それはあまり正確なものではありません。
対照的に、ペアのスピーカーの前に座ると、左右のイメージを得ることができますが、クロストークも発生します。(左のスピーカーの一部が右耳に、右のスピーカーの一部が左耳に入りること。)頭の中ではなく目の前で、ステレオイメージの中心に、真のセンターイメージが表現されます。

このようにヘッドフォンよりもスピーカーを使った方がより正確なミックスができるというのが一般的な認識です。でもヘッドフォンでミックスする選択肢しかない場合、どのような解決策があるのでしょうか?
耳を騙す-世界最高のミックスルーム
この問題を回避する唯一の方法は、頭の外から音が流れているかのように耳を騙すことです。つまり、あたかも部屋の中のスピーカーで音楽を聴いているかのように。ヘッドホンの外から音が聞こえてくるよう耳を錯覚させるのです。これで、作品の最も重要な側面であるレベルやEQのミキシングに置いて、より多くの情報に基づいて決定を下すことができるようになります。キック、スネア、ベース、ボーカルなどでの音作りが、さまざまな再生システムでより明確に反映されるでしょう。
昨今の3Dオーディオ技術は、3次元の音響環境をシミュレートし、入念に測定された部屋のインパルスレスポンスの使用など、様々な方法で実現させています。しかし、私が思うに、最も重要なのは、クロストークを精密に、リアルに設計して、ヘッドホンでより正確なセンターイメージを実現することです。
この実現こそが、Waves Nx 3DオーディオテクノロジーをベースにしたAbbey Road Studio 3を開発するための主要な目標の1つでした。
このプラグインをDAWのメインアウトプットフェーダーの上にインサートすることで、世界で最も良い音のミックスルームを使用して、あなたの曲が3つのステレオスピーカーフィールド(ニア、ミッド、ファー)のセット上でどのようにバランスをとっているかを感じることができます。
このプラグインは簡単で非常に効果的であり、ミックスの最も重要な側面に関して、「センスチェック」や「リアリティチェック」を行うための強力なツールとなります。必要に応じて、プラグインをヘッドフォンモードにバイパスして、怪しい編集ポイントを再確認できるのも魅力です。
ヘッドフォンでのミックスにAbbey Road Studio 3を使えば、ミックスのバランスを正確に表現できます。このプラグインは、あなたの作品に真の意味での革命となるでしょう。
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