アコギをオケに馴染ませる3つの方法
アコースティック・ギターは、周波数帯域が広いため、ミックスの中にうまくフィットさせるには工夫が必要なパートです。この問題を解決するための3つのヒントをご紹介します。ステレオフィールド内に効果的に配置して、ミックス内のスペースを有効に使うことが重要なポイント。このような場合、サイドチェイン・コンプレッションを使って、アコースティック・ギターのためのスペースを確保することができます。
2021.07.20
1. ミックス内のスペースを有効活用する
ミックスの中で、利用できていないスペースはありませんか。ミックスで操作できる主な次元は、幅(X軸)、高さ(Y軸)、奥行き(Z軸)の3つです。X軸はパン、Y軸は周波数、Z軸はリバーブを使って音の大きさや空間を変えることで、トラックの要素を移動させることができます。
H-Reverb Hybrid Reverbは、アコースティック・ギターをミックスのZ軸(奥行き)に沿って配置しようとするときに最適な選択肢です。ミックスの中でギターが前面に出てくるようにするには、1秒以下の短いリバーブタイムを使用し、ドライ/ウェットのノブを調整し、処理されていない信号と処理された信号のバランスを調整しましょう。
逆に、アコースティックギターをミックスの中でより後ろに追いやるには、ディケイタイムを長くし、ドライ/ウェットのウェットの値を大きくしリバーブ効果がより顕著になるようにします。ステレオフィールド内でアコースティックギターを配置するスペースを確認し、それに合わせて各サウンドをミックスしましょう。
2. アレンジに合わせたギターのEQ
アコースティックギターは、周波数帯域の多く占める傾向があります。きれいに録音されたフルボディのアコースティックギターは、持続性のある低域を持っており、大音量ではドラムを覆い隠してしまうことも。そのため、曲やアレンジの中でギターがどのような役割を果たしているかを確認し、目的に応じたEQ処理を行うことが重要です。
アコースティックなフォークソングであれば、アコースティック・ギターのフルレンジが必要になるでしょう。しかし、ポップスのミックスで、アコースティックギターがトップエンドの質感を提供しているだけなら、ローエンドは必要ないでしょう。H-EQのようなEQのハイパスフィルターを使って、200Hzまでの周波数を緩やかにロールオフし、200〜350Hzのレンジにはローシェルフカットを加えてみましょう。そうすると、アコースティックな質感がよりはっきりとミックスから浮かび上がってくるのがわかります。
3. サイドチェイン・コンプレッションを使う
緻密なミックスでは、トラックの各要素が周波数スペクトル全体に渡って配置されています。例えば、1つの音をステレオイメージのセンターに、もう1つの音をサイドに配置すると、同じ周波数帯に2つの音を収めることができます。
ユニークなミックスとは、静的なものではなく、曲の中で音が強調されることが多いものです。例えば、アコースティックギターの音をオフビートごとに入れてリズム感を出したいとします。
しかし、すでにアレンジには、ステレオイメージのセンターにはリードボーカルが。そしてサイドにはバッキングボーカルがすでに含まれているとしたらどうでしょう?
Doublerのようなプラグインを使用し、弾いたギターを複製してサイドに配置すると、バッキング・ボーカルと衝突してしまいます。そこで、C6 Multiband Compressorのようなマルチバンド・サイドチェイン・コンプレッサーをバッキング・ボーカルに適用して、ギターが演奏されるたびに競合するボーカルの周波数帯のサウンドを減衰させることができます。
バッキング・ボーカルのトラックまたはバスにC6 Multiband Compressorを挿入します。適度なバンド幅のベル・フィルターを作動させ、バンドの中心周波数をギターの聴かせたい周波数に設定します。アタックタイムとリリースタイムを短く設定し、バッキングボーカルとアコースティックギターの弾き語りが混ざらなくなるまでバンドのスレッショルドのレベルを下げていきます。ギターとバッキングボーカルがうまく混ざってくれたと思います。
いかがだったでしょうか。
楽曲によっては、スペースをうまく取るのがとても難しいパートであるアコースティックギター。
豊かな倍音や空気感を持つが故に、アレンジによって適切な処理をしてあげることが、ミックスにフィットさせるコツですね。
さあ、デスクに向かって制作を始めましょう。
人気記事
リズム隊のミックスTips! – Vol 2 キック処理編
オフィスオーガスタ佐藤洋介さんによる「リズム隊のミックスTips」。今回はキック編のご紹介です。
CLA-2A vs. CLA-3A クラシックコンプレッサーの違い
LA-2AとLA-3Aは、最も有名なコンプレッサーと言っても過言ではないでしょう。これまでボーカルやベースなどの楽器に長く愛されてきました。今回は「真空管モデル」と「ソリッドステートモデル」の比較。あなたのトラ
DiGiGridで制作の全てが変わった:OM Factoryセミナー(その5)
ここまで4回にわたってレポートしてきた、OMFactory大島氏によるDIGiGridセミナー。今回は最終回となる「その5」をお伝えする。
自宅でドラムを録音する方法#1: 部屋の選択と処理
プロ品質のドラム録音を実現するためには、録音スペースが最も重要な要素になります。レコーディングルームを選ぶ際のポイントや、最高の結果を得るための音響処理についてご紹介します。
MIXを次のレベルへ! サチュレーション、オーバードライブ、ディストーションの違いって何?歪み系エフェクトの活用
サチュレーション、オーバードライブ、ディストーション。これらの違いはどこにあるのでしょうか?楽曲に温かさを加え、際立たせることで、ミックス全体をブラッシュアップする方法を学んでいきましょう。
リズム隊のミックスTips! – Vol.7 ギター後編
前回のギター前編に続き、今回はギター後編をご紹介。ムービー前半はメロディーラインのようなアルペジオの処理、後半は「歪んだギターの壁の作り方」ステップの解説となっています。
人気製品
Abbey Road Saturator
アビー・ロード・スタジオ公認サチュレーション 伝説的なアビー・ロード・スタジオ公認の音楽的なサチュレーション&ディストーション。クラシックなチューブとトランジスタの音、僅かな歪みから極端な歪みまで。ア
AudioTrack
4バンドの完全パラメトリックEQ、コンプレッサー、ゲートを搭載、省スペースのオールインワンウィンドウを備えたオリジナルのチャンネルインサート・プラグインです。 AudioTrackのパラメトリック4バンドEQは、ベル
Bass Fingers
ベースの奏法の中でも最も微細なニュアンスを表現するフィンガーピッキング(指弾き)を再現。リアルなサウンドのベースラインや経験豊富なベースプレーヤーの個性的なサウンドを、キーボードで直感的に演奏すること
BB Tubes
さまざまなボーカルや楽器の音が、いまだかつて聴いたことのない「スピーカーから飛び出してくる存在感あふれるサウンド」に生まれ変わります。繊細な音から攻撃的なアナログの倍音まで、BB Tubes はあなたのミック
Center
ファイナルミックスやマスタリングに最適なWaves Centerは、サイドコンテンツ(L/R)からファントムセンターコンテンツを分離させる革新的な新プロセッサーです。Centerを使えば、ファントムセンターをゼロにでき、
CLA Effects
Waves Artist Signature Seriesは、世界のトッププロデューサー、エンジニアとのコラボレーションにより生まれた目的別プロセッサーシリーズです。全てのSignatureシリーズプラグインは、アーティストの個性的なサウ
dbx 160 compressor / limiter
オリジナルのdbx® 160は、1970年代の他のコンプレッサーと比べ、非常に歪みが少なくクリーンなサウンドで、特にドラムのコンプレッサーとして評価されてきました。入力信号に素早く反応するdbx 160コンプレッサーは
H-Delay Hybrid Delay
古き良き、クラシックな音色とキャラクター。Wavesのテクノロジーが実現する機能とフレキシビリティ。Waves Hybrid Lineは、アナログとデジタル、両者のその優れた点を一つのプラグインに結実したラインナップです。