ハイパーポップの特徴をWavesプラグインで再現しよう!
TikTokでよく耳にし、注目されている音楽ジャンルHyperPop(以下、ハイパーポップ)。特にCharli XCX、SOPHIE、100 Gecs、A. G. Cookなどのアーティストによって人気を集めています。今回はHyperPopの楽曲制作を制作するための4つのヒントをWavesプラグインを通じてご紹介!
2021.09.29
ハイパーポップってどんな音楽?
インディペンデント誌のウィル・プリチャード氏は、「ハイパーポップとは、自己言及的でユーモラス、そして過剰なポップミュージックであり、TikTok時代において凄まじいスピードで世界中に広まっているジャンルです」と解説しています。
そのサウンドは、つぶれたようなシンセ、ピッチシフトしたボーカル、大量のディストーションが特徴。バブルガムポップ、ユーロハウス、トランス、ヒップホップ、エモ、ニューメタルなどを縦横無尽にミックスしたカオスな魅力を持っています。
では、実際にどのような楽曲がハイパーポップと呼ばれているのでしょうか?代表的なトラックを見ていきましょう。
100 Gecsの『Money Machine』は、「ハイパーポップ」と聞いて多くの人がまず思い浮かべる金字塔的なトラックです。YouTubeのコメント欄に「やけどの傷口にレモン汁をかけたような刺激」と書かれるほど強力なインパクトがあり、聴く人によって好き嫌いがハッキリ分かれるのも納得のサウンドです。
The Atlantic誌のポール・スペラ氏は、100 Gecsの2019年デビューアルバム『1000 Gecs』について、「Skrillex、Mariah Carey、Blink 182、Nelly、Linkin Park、Kenny Loggins、ユーロダンス、スカを、遊び心たっぷりにポストモダンなコラージュに仕立て上げた作品」と評しています。
A. G. Cookは、ハイパーポップシーンの先駆者の一人。彼の楽曲『Beautiful』では先ほどの『Money Machine』と比べ、よりハウスミュージック寄りのアプローチが聴かれます。アプローチに幅はあるものの、どちらもハイパーポップという大きな枠組みを象徴するサウンドです。
1. 適切なテンポとキー(調)を選ぶ
ハイパーポップ曲の多くは、BPM 80〜100のテンポ感で制作されています。このテンポ設定にすることで、エネルギッシュな4つ打ちアレンジから、展開の読みにくいトラップ風のドラムブレイクまで自由自在に行き来できるようになります。ハイパーポップらしさは、ドラムパターンそのものよりも「どんな音を選ぶか」という音作りのセンスに大きく左右されます。
また、多くの曲がメジャーキー(長調)で書かれており、一見すると明るくハッピーで躍動感あふれる印象を受けます。しかし皮肉なことに、歌詞で歌われている内容は曲の明るい雰囲気とは正反対のことがほとんどです。
多くのハイパーポップ曲の歌詞には、憂鬱さ、冷え切った人間関係、個人的な葛藤や悩みなどが綴られています。ElyOttoの『SugarCrash!』はその典型例で、キャッチーで楽しげなサウンドの裏で、生々しい個人の苦悩が描かれています。
2. 歪んだベースとトラップドラムを組む
ハイパーポップでは、強烈に歪ませた808ベースラインが多用されます。しかし、「太くドッシリとした超低域(ローエンド)」を保ちつつ「エッジの効いた攻撃的な質感」を両立させるのはなかなか難しいポイントです。その秘訣は、Codexのような2オシレーター搭載のシンセを使い、深いサイン波の上にブザーのようなノコギリ波(Saw wave)をレイヤーすること。仕上げにローパスフィルターを選び、カットオフ周波数を約1,000Hzに設定して不要な高域を削り落としましょう。
Example 1 - Bass
ドラムには、歪んだ808、ドライなスネア、変形パーカッション、細かなハイハットロールなどを組み合わせたトラップ風のアレンジがよく使われます。もちろん、歯切れの良いキックとサステインの長いベースラインを合わせるストレートな構成も効果的です。ベースサウンドの凶暴なトーンさえしっかり作り込めていれば、ドラムのパターン自体はかなり自由に組むことができます。
Example 2 – Drums and Bass
3. アッパーな「ダンス系シンセ」を前面に
音作りのイメージは、アーケードゲーム『ダンス・ダンス・レボリューション』で流れていそうなポップでギラついたサウンド。ド派手なユーロ風プラック、耳から離れないアープ(アルペジオ)、分厚いパッド音色などがこのジャンルの必需品です。That Kidの『Mile High Club』では、そうした極上のダンスシンセサウンドを存分に聴くことができます。
一方で、WEBコミュニティの影響からハイパーポップの文脈で語られることの多いGlaiveというアーティストは、少しユニークなアプローチをとっています。下の楽曲を聴くと分かりますが、彼はあえて極端なボーカル加工を行わず、鋭いシンセサウンドの中に生楽器のリアルな質感をミックスしています。ライターのエリ・エニス氏は、「ハイパーポップのアイデンティティは音楽の型にあるのではなく、ポップスの枠組みの中で動きながらもジャンルを自由に超越していく“共通の精神(アティチュード)”にある」と分析しています。
先ほどのキック&ベースのトラックに、Codexで作ったプラックとアルペジオを足してみました。複数のプラックサウンドを重ねて音のスキマを埋め、Abletonの「Arpeggiator」を使って高速のアルペジオを生成しています。シンセ本体にアープ機能がない場合でも、DAW標準のMIDIエフェクトを活用すれば簡単に再現可能です。
Example 3 - Synths
4. ボーカルのピッチとフォルマントをコントロールする
ウィル・プリチャード氏は、「ハイパーポップシーンのキーパーソンにはトランスジェンダーが多く、クィア文化とこの音楽は切っても切れない関係にある」と述べています。これはサウンド面にも表れており、ボーカルのモジュレーション(ピッチ加工)を活用することで、声を通じてジェンダーの流動性を滑らかに表現しているのです。極端にピッチを上げたあの特徴的なボーカルエフェクトは、Waves TuneとVocal Benderを組み合わせることで簡単に作ることができます。
まずは録音したボーカルに強烈な「ハードチューン(ケロケロ加工)」をかけましょう。ピッチの中心を曲のキーへ機械的に無理やり固定することで、ロボットのような人工的な質感を作ります。Waves Tuneを開き、「Select All」をクリックして曲のルート音とスケールを指定してください。
設定後に「Apply」を押せば、すべてのピッチが正しく固定されます。ロボット感を極限まで高めるには、Speedを「0」、Note Transitionを「0」、Ratioを「100」に設定するのがコツです。より自然かつ完成度を高めたい場合は、ピッチエディター画面で飛び出たノートを手動で整えてあげましょう。
Example 4 – Hard-Tuned Vocals
次にボーカルへVocal Benderを挿入し、PitchノブとFormantノブをそれぞれ「+5半音(5 semitones)」引き上げます。ただし、このままではボーカルのキーが曲全体から5半音ズレてしまいます。これを防ぐテクニックとして、曲のオケ(インスト)を一度書き出し、別の録音用プロジェクトに読み込みます。そのプロジェクト側でオケのピッチをあらかじめ5半音下げてからボーカルを録音し、声だけを元のプロジェクトに書き戻してください。こうすれば、ボーカルのピッチを5半音上げたときに、ぴったり元のキーへ収まるようになります。
「最初から曲のキーで歌えばいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、あらかじめキーをズラして録音し、後からピッチシフト加工を施すことでしか得られない**独特のエフェクティブな質感**が生まれるのです。以下の音源例では、+5半音のピッチシフトをかけた際に原曲キー(Eメジャー)になるよう、あらかじめBメジャーのキーでボーカルを録音しています。
Example 5 – Shifted Vocals
ボーカルのワイド感を広げたいときは、Doublerを立ち上げてVoice 1と2のゲインを数dB上げてみましょう。ダブラーを強くかけすぎると人工的な響きになりますが、ハイパーポップではその不自然さこそが魅力になります。数多くのトッププロもミックス内でボーカルの存在感を出すために使っている定番の手法です。
Example 6 – Doubled Vocals
さらに質感を高めるなら、ほんのりディストーションを加えるのが効果的です。PRS SuperModelsなどのギターアンプ・プラグインをAUXトラックに挿入し、ボーカルをパラレル処理(原音と混ぜ合わせる)してみましょう。歪みの強弱を試しながら、楽曲に最も馴染む歪み具合を探してみてください。
Example 7 – Amped Vocals
ボーカルアレンジに展開を作りたいときは、ボーカルトラックを複製し、Vocal Benderで1オクターブ上下にピッチ調整してハーモニーを作るのがおすすめです。あるいは別の半音数値で調整し、仕上げにWaves Tuneを通すことで綺麗なハモリパーツを作成することも可能です。
Example 8 – Vocal Bender Vocals
最後に、ボーカルへ空間系のリバーブとディレイを軽くかけ、オケ全体へ綺麗に馴染ませた完成版のサウンドがこちらです。
Example 9 – Final Hyperpop Product
おわりに
ハイパーポップは多種多様なサウンドを包含しているため、一言で定義するのが難しいジャンルです。しかし、今回ご紹介したサウンドデザインやミックスの手法を取り入れることで、確実にハイパーポップらしいモダンで刺激的な質感を演出できるようになります。ぜひ手持ちの制作ツールを活用し、あなたの楽曲制作でクリエイティブに試してみてください!
それでは、さっそくDAWを立ち上げて制作に取りかかりましょう!
製品情報はこちら
Waves Creative Access購入はこちら
220種を超えるWavesプラグインを常に最新の状態で使用し、トップクリエイターや世界中のユーザーとAIプリセットを共有できるStudioVerseを使用できるWavesの新しいプラグインのサブスクリプション・プランです。Wavesの全プラグインを使用できるWaves Ultimate、110種のプラグインを使用できるWaves Essentialの2つのラインナップで、1ヶ月から1年まで使用したい期間に合わせたプランからご利用いただけます。
StudioVerse
「知識の壁」を破る革新的なAIサーチ機能を搭載したプラグインチェイン・プリセットコミュニティ

Codex Wavetable Synth
Waves Codexは、グラニュラー・ウェーブテーブル・シンセシス・エンジンを基本とする最先端のポリフォニック・シンセサイザーで、Wavesのバーチャル・ボルテージ・テクノロジーを採用、VCF、VCA などを搭載する実際

Tune
透明感のある自然なサウンドと柔軟性、正確なリアルタイム・ピッチ補正とフォルマント処理を可能にするボーカルプロセッサ 。フレージング、エモーション、デリバリーをすべて搭載し、素晴らしいボーカル・テイクを

Vocal Bender
ヒップホップ、R&B、エレクトロニック、現代のポップ・ミュージックに不可欠となった「フォルマント-ピッチ・ボーカルサウンド」。数々のヒット曲で聞けるあのボーカルをリアルタイムにレコーディング、ミックスでき

Doubler
優れた「ダブルトラッキング」エフェクトをお望みのミュージシャンやオーディオエンジニアに、Doublerをお送りしましょう。Doublerは新しいサウンドを創り出すディレイおよびピッチモジュレーションです。他のディレ

PRS SuperModels
ギタリスト、ポール・リード・スミスとのコラボレーションにより誕生したWaves PRS SuperModels プラグインは、PRS Archon, 伝説的銘機と名高いPRS Dallas、そして最も稀少なPRS Blue Sierra/V9という3つのハイエン
最新記事

Waves LV1 導入事例:小澤 健一 氏(株式会社Sound PAPA / PAエンジニア)
Waves eMotion LV1 / LV1 Classic を導入されたユーザーの、ライブサウンド現場での活用事例をご紹介します。

Waves LV1 Classic 導入事例:真鍋 大暉 氏(PAエンジニア)
Waves eMotion LV1 / LV1 Classic を導入されたユーザーの、ライブサウンド現場での活用事例をご紹介します。

Waves LV1 Classic 導入事例:戸田 大樹 氏(個人事業主 / 音響エンジニア)
Waves eMotion LV1 / LV1 Classic を導入されたユーザーの、ライブサウンド現場での活用事例をご紹介します。

Waves V17 登場
2026年6月23日(火)、Waves V17のバージョン・アップデートがリリースされました。アップデートの内容は以下の通りです。

Waves LV1 Classic ユーザー必見!全国のライブ現場で活躍するエンジニアの声を募集します
Waves eMotion LV1 / LV1 Classic を導入されたユーザーの皆様を対象に、ライブサウンドの現場での活用事例アンケートを実施します。

Waves LV1 導入事例:出原 亮 氏(福山Cable / イマーシブエンジニア)
Waves eMotion LV1 / LV1 Classic を導入されたユーザーの、ライブサウンド現場での活用事例をご紹介します。
人気製品

ATLAS REVERB
Atlas Reverbは、Wavesが新たに開発したプレミアム・アルゴリズミック・リバーブです。

StudioVerse Mix Unlock
StudioVerseは、オーディオ&インストゥルメントチェーン用のオンライン・プリセット・ライブラリです。StudioVerse Mix UnlockはDAW内でリアルタイムに動作し、完成済みのミックス、サンプル、ループ素材を瞬時に解

Curves Resolve
選んだサウンドは間違いない。アレンジも決まり、トラック同士の勢いもある。なのに、ミックスが濁る... それは、複数のトラックが同じ周波数帯を奪い合っているからです。これが音のマスキングと言われる現象です。

Magma StressBox
ミックスを停滞させる“平坦な”音源に悩んでいませんか?EQ、コンプレッション、サチュレーションを試しても、心踊るサウンドが出てこない…そんな時に活躍するのが StressBoxです。

L4 Ultramaximizer
1990〜2000年代、L1やL2は音圧を稼ぐプラグインの代名詞でした。Red Hot Chili Peppers、Metallica、Timbalandなど、数え切れない名盤に使われ、そのサウンドは世界を席巻しました。しかし今、音楽は単なる音圧では

Clarix LB
Clarix LB は、放送配信向けの音声に特化したAIノイズリダクションプラグインです。環境雑音をリアルタイムで除去し、屋外ロケやリポーター、ライブ配信など、ライブ音声のトリートメントに最適です。

InTrigger Drum Replacer
InTrigger Drum Replacer は、Wavesが提供するインテリジェントなドラムリプレイスメント・プラグインです。単なるトリガー検出を超え、ゴーストノート・ダイナミクス・ブリードを高精度に解析し、プロフェッショナ

Curves AQ
Wavesは常に革新を追求しています。Clarity Vx、DeReverb、Silk Vocal、IDX、Curves Equator、Sync Vxなどの開発を通じて、新たなサウンド技術の限界を押し広げてきました。そして、ついにEQにも革命が起こります。



