リードボーカルのミキシング 12のステップ 前編
生のボーカルトラックを、洗練された光沢のあるパフォーマンスに仕上げるための12のステップをご紹介します。編集からEQやコンプレッションの追加まで、ボーカルミキシングのプロセスで何かを見落としていないか確認してみましょう。
2021.03.24
ステップ1. コンピングと編集
ボーカルミキシングの最初のステップは、ミキシングではなく、編集です。用意された複数のテイクの中から最適なボーカルパートを作り上げる作業。これをコンピングと呼びます。
この作業は、使用しているDAWによって多少異なりますが、考え方は同じです。あるパートの複数のテイクから最高のものを吟味し、まとまりのある自然なサウンドで、全体的に最高のパフォーマンスを構成するのです。コンピングの編集作業としては、ボーカリストが歌っていない部分を削ったり、突出したブレスを編集したりする作業があります。ブレスをどの程度カットするかは、音楽のスタイルにもよりますが、最終的にはミックスの中でどのように聞こえるかによります。ブレスが必要な場合もあれば、そうでない場合もあるでしょう。いずれにしても、DeBreathのようなプラグインを使えば、ブレスの編集は簡単です。
コンピングは必ず最初に行うべきですが、その他の細かいオーディオの編集作業は、後から行いましょう。クリエイティブな作業から離れたいと思ったときがベストです。ミキシング作業中の精神的なギアと頭を切り替えることは、新鮮な耳と明確な視点を保つために非常に役立ちます。
ステップ2. チューニング
ボーカルの演奏には、ピッチやチューニングに問題がある場合があります。これは本質的には悪いことではありませんが、Waves Tune Real-Timeのようなピッチ補正ソフトウェアを使って、疑問のある音程に関しては修正するとよいでしょう。
ステップ3. ゲインのステージング(音量を適切に)
ボーカルは、ミックスの中で最もダイナミックな楽器の一つです。曲の中で最も重要なパートであるため、しっかりとコントロールされている必要があります。
ダイナミックな録音を調整しようとしたときに、コンプレッションのかけすぎによるポンピング効果が聞こえるのを防ぐには、まずクリップゲインを健全な範囲にする必要があります。手動でダイナミクスを調整することもできますし、Vocal Riderを使うことで効率的にいい結果を得ることもできます。
ステップ4. 引き算のEQ
緻密に調整された基盤をもとに、ボーカルのトーンの質感に焦点を当てていきましょう。最初のステップは、問題のある周波数を取り除くことです。これには、近接効果による過剰な低音域や、録音時に発生した特定の周波数が含まれます。最も簡単に始めることができるのは、ローエンドです。人間の声は80-100Hz以下ではあまり響かないので、ハイパスフィルターを使ってその範囲以下の周波数をカットするのが一般的です。
もし、他の問題となる周波数を特定するのが難しい場合は、スイープのテクニックを使ってみてください。
- EQバンドの1つのQ値を上げて、かなり狭くします。
- そのバンドのゲインを大幅に上げる
- そのバンドの利用可能な周波数をゆっくりと「スイープ」します。
- 特に反響の大きい不快な周波数が聞こえたら、スイープを止めます。
- その周波数のゲインを上げるのではなく、下げることで減衰させます。
- 好みに応じてQ値を調整する
ここでEQのルールを1つ覚えておいてください:カットは狭く、ブーストは広く。つまり、引き算のEQを使用する場合はQ値を高くし、足し算のEQを使用する場合はQ値を低くするのが良いでしょう。
ボーカルの場合、演奏中に周波数が変化することが多いので、ダイナミックEQは非常に有効です。このスタイルのイコライザーは、設定されたスレッショルドを超えたときにのみ作動するレベル依存のバンドを使用し、必要なときにのみ特定の周波数に影響を与えることができます。
ステップ5. 足し算のEQ
ボーカルの問題となる周波数に対処した後は、キャラクターを追加していきましょう。例えば、ヒップホップ・ボーカルのミキシングでは、パワー感を出すためにローエンドを重くしたり、ロック・ボーカルのミキシングでは、密度の高いミックスを切り抜けるためにミッドレンジをブーストしたり、ポップ・ボーカルでは、存在感を出すためにハイエンドをブーストしたりするのが一般的です。ただし、2〜5kHz付近をブーストする際には、余計な粗さを出さないように注意してください。
信号処理の順番は自由
エンジニアの中には、コンプレッションをかけてからイコライザーをかける人、イコライザーをかけてからコンプレッションをかける人、両方を段階的にかける人などがいます。それぞれ異なるサウンドになりますので、自分の状況に合った方法を試してみてください。
ステップ6. ディエッシング
ボーカルに多少の粗さがある場合は、DeEsserを使って問題を解決するのが一般的です。ディエッサーとは、特定の周波数帯域に特化したコンプレッサーのことで、一般的にはボーカルトラックの「S」や「T」などの子音、日本語では「さ行」や「た行」が鳴る際に発生するハッシュネスを除去するのに使われます。モニター機能を使って、ディエッシングする範囲を聞き、問題のある周波数を見つけます。そしてスレッショルドを設定して、音が荒くなったときにその範囲を減らしていきましょう。
いかがだったでしょうか。ここまでで、声自体の音色はかなり整ってきたと思います。
後編では、ミックスの中でどうやってボーカルパートを際立たせるか。をお送りします。
プロモーション
人気記事
読むだけでミックスがうまくなる?オートメーション活用 7つのヒント
今や、DAWに搭載されたオートメーション機能はとてもパワフルになりました。ご存知の通り、すべてのミキサーとプラグインのエフェクトパラメータを自動化することができ、人の手だけでは、実現不可能だったコントロ
リズム隊のミックスTips! – Vol.7 ギター前編
「リズム隊のミックスTips」。今回はギター前編です。
もう部屋鳴りに悩まない。AIが不要な反響音を除去〜Clarity Vx DeReverb〜
ナレーションやボーカルを録音した際に、部屋の響きで言葉が聞き取りにくかったり、「部屋鳴り感」が強く出て映像や楽曲となじまなかった…そんな経験はありませんか?レコーディングスタジオのように本格的な吸音処
MIXを始めよう!5つのステップでアプローチ
ミックスと一言で言っても、どこから手をつけたらいいのでしょうか。ローエンド、ボーカル、それともやみくもにフェーダーを触ることでしょうか?ご安心ください。ここでは曲を仕上げるための5つのステップをご紹介
リズム隊のミックスTips! – Vol 1イントロダクション
MixがうまくなるTipsのMIオリジナル企画。当社ウェブサイトでもたくさんのレビューをしてくださっているオフィスオーガスタの佐藤洋介さんに学ぶ、リズム隊(ドラム・ベース・リズムギター)のミックスTipsムービー
DiGiGridで制作の全てが変わった:OM Factoryセミナー(その5)
ここまで4回にわたってレポートしてきた、OMFactory大島氏によるDIGiGridセミナー。今回は最終回となる「その5」をお伝えする。
人気製品
Abbey Road TG Mastering Chain
70年代以降、Abbey Road Studiosにおけるすべてのマスタリングを支えてきたEMI TG12410 Transfer Consoleを、モジュラー方式のマスタリング・チェイン・プラグインとしてモデリングで再現。Abbey Road TG Mastering
Brauer Motion
いくつものグラミー賞を重ねてきたミキシング・エンジニア、マイケル・ブラウアーほど、ミックスにエモーショナルな動きを加えることに長けた人物は多くありません。コールド・プレイ、ジョンメイヤー、ジェイムス・
CLA-3A
ユニークで非常に透明感のあるコンプレッションカーブを持つことで知られる70年代初期のソリッドステートユニットをベースに開発されたCLA-3Aは、実機同様に素早いレスポンスと繊細な倍音歪みを提供します。オリジナ
Clarix LB
Clarix LB は、放送配信向けの音声に特化したAIノイズリダクションプラグインです。環境雑音をリアルタイムで除去し、屋外ロケやリポーター、ライブ配信など、ライブ音声のトリートメントに最適です。
Doubler
優れた「ダブルトラッキング」エフェクトをお望みのミュージシャンやオーディオエンジニアに、Doublerをお送りしましょう。Doublerは新しいサウンドを創り出すディレイおよびピッチモジュレーションです。他のディレ
Electric Grand 80 Piano
エルトン・ジョン、ピーター・ゲイブリエルからハービー・ハンコックといった80"sポップス、ロック、R&Bのヒット曲で、そしてヴァンゲリスから現代までつながるエレクトロニック・ミュージックの分野でも、時代を形
Eddie Kramer Guitar Channel
Eddie Kramer、Guitar Channelを語る: 「Guitar Channel plug-inはリードギター向けと2種類のリズムギター向けの設定をフィーチャーしている。 リードギターパートは、ライブ感や息をのむようなオーガニズムがあっ
H-Reverb Hybrid Reverb
音楽の世界でも、新しい技術が、新たな創作手法を生み出すことが多々あります。このH-Reverbは、有限インパルス応答(FIR)技術を応用したリバーブ・プロセッサーで、美しく存在感があり、リッチで深みのあるリバー