
全ての現場をLV-1でいきたい:出原 亮 導入インタビュー
2023.03.09
視覚と聴覚のリンク
出原さんはWaves eMotion LV1システムを使い始めてどれくらいになりますか?
導入してまだ1年と少しくらいです。
LV1システムを知ったきっかけ、また導入に至ったきっかけは何だったのでしょう?
LV1自体は前々から知っていて、展示会などでも触ってみたこともありました。導入をしたかった理由は大きく2つあって、1つはI/Oコンポーネントが豊富に揃っていて自由度が高いので、現場に応じて持ち込む規模感を変えられるというところです。以前はどこに行くにも大きな卓を持ちこんでいましたが、少ないインプットで済む現場なら最小限の荷物で、30chインプットを超えるような現場ならインプットだけ増やすとか、ディスプレイを追加すればいいとか選べるというのは魅力ですよね。
アナログなら数chのものから1ボックスで32chのものまで、そしてアナログだけでなくMADIやDante、AES/EBUなどのAoIPやデジタルまで対応製品は多いですね。
もう1つの理由はやはりWavesプラグインがライブで使えるということ。もともとWavesはDAWでも使用していましたし、PAコンソールにセンドリターンやインサートしてネイティブプラグインを使っていたこともありましたが、どうしても結線やシステムそのものが煩雑になってしまう。だったら、ストレートにプラグインが立ち上がるLV1の方がいいなと。
たまたまライブサーキットフェスの配信卓としてLV1を使用できる機会があったので試してみたところ想像以上にスムーズで、これはもう導入しようと決めたんです。
導入されてからの第一印象、変化があったところはどこですか?
これは周囲の興味ある方々にもよく話しているのですが「視覚と聴覚がリンク」するようになったことですね。鳴っている音の細部まで視覚情報として広く提供されるので、これまで使ってきたアナログ卓やデジタル卓よりも圧倒的にストレスがなくなったところです。今まで使ってきた中で最も「直感的に触れる卓」と言ってもいいくらいですね。
デジタル卓などでもディスプレイがあるもの、その中にEQやダイナミクスの情報が表示されるものも数多くあったと思いますが、LV1は何が違っていたのでしょうか?
まずはGUIの設計が素晴らしい。フェーダーとプラグインの表示を基軸に画面が作られていて、それをタッチディスプレイで直接触りにいけるので何をするにも一手早く調整ができますね。特にライブPAは調整にかけられる時間も限られているから初手の早さはとても大事です。一部のデジタル卓でもiPadなどで周波数特性を見られるものもあったりしますがどこかオプション的な扱いで、メインの操作体系ではない感じがしてしまうんですね。LV1はそこがうまくインテグレートされているように感じます。
一発解決
Wavesの豊富なプラグインが魅力とのことですが、実際に現場で「これは替えがきかない」というプラグインはありますか?
何と言ってもF6ですね。これはどんな現場でも必ず使います。

F6 Floating-Band Dynamic EQはダイナミック(動的)EQでもあり、一般的なスタティック(静的)EQも兼ねた製品です。ライブだけでなくスタジオ等でも人気のEQですが、どのようなところが「替えがきかない」ところでしょうか?
PA現場だとスタティックEQがまずは基本ですが、F6は1つのEQの中でどちらも使える所ですね。ピークのある音に対してスタティックEQで処理をすると、これ以上カットすると切りすぎになっちゃうというシーンは結構あります。スタティックEQしかなかったときは妥協点を探すしか手段がなかった。でも、F6のダイナミックEQを使えばある程度まではスタティックでカット、そこに加えて「出過ぎた時だけカット」がライブでもできる。一発解決なんです。
F6はRTA(リアルタイムアナライザー)もついていますので、瞬間的に出てしまうピークの発見も対応が楽になりますよね。エンジニアとしては音作りの中で妥協をしていた部分がより減ったということでしょうか?
そうですね。スタティックとダイナミックが1つのプラグインになっているので、起きている問題にどう対処すべきかの判断がすごく早くできるようになったし、過剰な処理も減ったと思います。反対にブースト方向でも使うことも良くありますよ。
ブースト方向にはどういったシーンで使われるのですか?
例えばキックなんかのパーカッシブな音で、アタックの瞬間だけローを足したいというとき。これを普通のEQでやってしまうと、キックの余韻まで含めてずっとローが持ち上がってしまうし、トランジェント系だとアタックの瞬間の音量全体が持ち上がってしまう。そうじゃなくて「アタックの瞬間だけロー」みたいな処理は、まさにF6の得意な処理ですね。
F6の真骨頂とも言えますね。他にも外せないプラグインはありますか?
現場ではSmaartのデータを受けて逆特性を提示してくれるTRACT Sound System Calibrationも外せません。以前はSmaartを活用していていなかったのですが、LV1を使うようになってからは頻繁に使うようになりました。測定後に素早くフラットを一発提示してくれるので時間のない現場でも気軽に使えます。逆特性処理をどの位有効にするかも指定でき、自分が思う白紙の音場を簡単に作れます。このおかげでMIXに問題が発生した際にも圧倒的に聞き取りやすくなったことは大きいです。

TRACT Sound System Calibrationは「PAエンジニアに、短時間で理想的なキャンバスを提供する」というテーマをもった製品です。チューニングももちろん大事なことですが、音作りのほうにより多くの時間を使えるようになるのではないでしょうか。
本当にその通りですし、音作りとしてのチューニングもやりやすくなります。
全ての現場をeMotion LV1で行きたい
先日LV1がV14へとアップデートされ、多くの方に望まれていたマルチサーバー対応と2台のFITコントローラーが使用可能になり、計34フェーダーまで拡張できるようになりました。
すごく大きなアップデートですね。以前はサーバーが1台までだったのでSoundGrid Extreme Server-Cを使っていたのですが、96kHzでいつも通りのプラグイン数を使おうとするとちょっとギリギリの感が否めなかった。やむなく48kHzで動かした現場もあったけど、今回のアップデートでTitan Serverを追加してあげたら問題なく回せることも確認できました。会場の大小はもう気にしなくてもいいし、僕は全ての現場をこのeMotion LV1で行きたいと思いますね。
出原さんご自身が感じる「LV1を導入して可能になったこと」といったものはありますか?
なんと言ってもWavesはプラグインの数が豊富で、200種類くらいあるわけです。もちろんF6のようにPA現場でも定番なものはあるけど、選び方はそれぞれのエンジニア次第ともいえます。1チャンネルあたり8個のプラグインスロットがあるので、組み合わせも順番も自由です。チャンネルストリップの考え方が変わりました。
EQはこれ、ダイナミクスはこれってツールが決まっているよりも、多数の選択肢の中から音にあったものが選べて、順番も個数も気にしなくていい。LV1ではチャンネルストリップとインサートの考え方が、そもそも自由度が高いのが魅力ですね。
EQだけでも20種類以上、コンプだけでも40種類以上。ヴィンテージのモデリングはもちろん、正確精細なデジタルものまで幅広く揃っており、アップデートで今後も増え続けます。
そうですね。僕もソースによって使い分けているのですが、こういった話題になると多くの方が「どうやらNEVEとかAbbey Roadとかのヴィンテージ系がライブでも使えるらしい」っていう話題に終始しがちなんですよね。もちろんそれもすごい事ですが、Wavesがライブ用に作ったダイナミクスプラグインのeMo D5、これの完成度の高さがものすごい。これも実は僕の外せないプラグインの1つだし、LV1でぜひ使って欲しいものの1つです。

コンプだけでなく、ゲート、レベラー、ディエッサー、リミッターを備え、ハイパス/ローパスのサイドチェインまで備えたマルチダイナミクスプラグインです。
さっき「8つもプラグインスロットがあるから自由自在」とは話しましたが、実際の現場では手順をなるべく増やさないことも大事です。プリフィルターをしなくてもダイナミクスの処理ができるのは強いし、冒頭でも話した通り「目と耳」がすごくリンクした出音で仕上がってくれます。こういったPAの基本プラグインが揃っていてその完成度が非常に高いこともWaves、それからLV1を導入すべき最大の理由といえますね。
ありがとうございます。今後もLV1のアップデートにご期待ください。
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